安倍晋三は集団的自衛権行使は憲法解釈見直しよりも9条改正こそが王道であり、国民承認の言葉を持つべき

2013-08-27 07:51:28 | 政治


 
 安倍晋三とその一派が考えている集団的自衛権行使を憲法解釈見直しで可能とする策謀に最高裁判所の新しい判事に任命された山本庸幸前内閣法制局長官が異議を唱えた。

 と言うことは、集団的自衛権行使は憲法解釈の見直しでは如何なものかと牽制したことになる。

 ご存知のように内閣法制局は政府に対する憲法やその他法律の解釈を役目の一つとしていて、そこの長官が内閣法制局長官であり、内閣法制局は政府の憲法解釈の番人を自任しているそうだ。

 集団的自衛権行使に関する解釈は内閣法制局は国連憲章で認められているが、「日本国憲法解釈上は権利はあるが、行使できない」との見解をこれまで保持、歴代政府はこの見解を踏襲してきた。

 安倍晋三はこれでは我慢できないということで、憲法改正ではなく、憲法解釈の近道で集団的自衛権行使を手に入れようということなのだろう。

 《最高裁判事 集団的自衛権巡る憲法解釈に言及》NHK NEWS WEB/2013年8月20日 17時17分)

 新判事任命の最高裁で行われた会見での異議申立てである。

 山本庸幸最高裁判所新判事「今の憲法の下で半世紀以上議論され、維持されてきた憲法解釈であり、私自身としては見直すことは難しいと思っている。

 見直すのであれば、憲法9条を改正することがより適切だが、最終的には国会や国民が判断することだ」――

 正々堂々と憲法を改正して、国民や国会の承認のもと、集団的自衛権行使を獲得せよと言っている。

 この発言に菅官房長官が不快感を示した。安倍晋三と集団的自衛権憲法解釈見直し容認の衝動に一心同体で衝き動かされている関係からしても、また憲法解釈見直しで集団的自衛権行使に道筋をつける条件としての見直しに慎重な砦たる内閣法制局籠絡のために山本庸幸氏の後任に見直しに前向きな外務省出身の小松一郎駐仏大使をトップに起用した安倍人事に添うためにも、不快感は当然の感情発露と言える。

 《山本最高裁判事発言を批判=菅長官「違和感ある」》時事ドットコム/2013/08/21-16:43)

 8月21日午後の記者会見――

 菅官房長官「公の場で憲法改正の必要性まで言及したことについては非常に違和感がある。

 最高裁が最終的な憲法判断を下す権限を有することは認めるが、(最高裁判断の)確定までに政府として憲法解釈を行う必要がある場合は、内閣法制局の法律上の専門的知見などを活用しながら第一義的には内閣が行う」下線個所は解説文を会話体に直した。)――

 「(最高裁判断の)確定までに政府として憲法解釈を行う必要がある場合は、内閣法制局の法律上の専門的知見などを活用しながら第一義的には内閣が行う」と言っていることは、内閣法制局のトップに憲法解釈見直しに前向きな人物を据えて、その人物の見解を法律上の専門的知見とし、それを活用しながら、これまた見直しに前向きな内閣が判断すると言っているのに等しく、質問と回答を自分で作って自分で受けるテスト同然の自作自演に等しい。

 「最高裁が最終的な憲法判断を下す権限を有することは認めるが」と言っているが、日本国憲法「第6章 司法」「第81条 法令審査権」は、「最高裁判所は、一切の法律、命令、規則又は処分が法律に適合するかしないかを決定する権限を有する終審裁判所である」と謳っている。

 最高裁が憲法を含めた「法の番人」と言われる所以である。

 その新判事が集団的自衛権の憲法解釈見直しに異議を唱えたということは、国民から憲法違反の訴えがあり、最高裁まで争うこととなった場合、最低一人は憲法違反の判断を下すことは確定したと言える。

 菅官房長官は不快にならざるを得なかったというわけである。

 安倍政権の連立与党の公明党山口代表が山本前内閣法制局長官の異議について8月22日の記者会見で発言している。《山口代表“前長官の発言ぎりぎり許される”》NHK NEWS WEB/2013年8月22日 15時21分)

 山口公明党代表「山本氏の発言は、直前まで法制局長官として、歴代の答弁の積み重ねなどを引き継いできた範囲内で言ったことだ。これまでの立場の集大成という意味で、最後の発言の場になるという思いもあったのかなと推測しており、ぎりぎり、立場上許される発言だと思っている。

 (憲法解釈の見直しについて)従来の見解を変更する必要があると考えるのであれば、どういう影響が及ぶのかなどを幅広く、深く、慎重に検討していく必要がある」――

 発言の趣旨は山本前内閣法制局長官の見解への同調に重点が置かれている。

 憲法解釈の見直しによって憲法そのものをなし崩し的に変更していったのでは、憲法の蚕食さえ可能となり、憲法の国家の最高法規としての権威を失墜させることになる。

 憲法の最高法規としての権威を守るためには国民の承認のもと、憲法が定めた憲法改正の手続きに則って、改正手続きそのものを変更するか、変更したい条文そのものを望む条文とするか、正々堂々とした王道を進むべきだろう。

 国民の承認は偏に国民を説得する政治家の言葉にかかっている。

 それをしないのは政治家の怠慢であり、試してみたが、できなかったというのは言葉の貧困の証明でしかない。

 言葉によって支持獲得・同調獲得を宿命としている政治家の言葉が貧困だということは倒錯そのものである。

 安倍晋三は自らの言葉に自信を持っている。達者な、気の利いた言葉を自由自在にこなす。その言葉が集団的自衛権の見直しに関しては力を発揮できないということでは、逆説そのものを示すことになる。

 倒錯と逆説に侵されているからこそ、内閣法制局長官に見直しに前向きな人物を据え、内閣法制局の見解を変えて集団的自衛権の行使に持っていく、王道に反した狡猾な手段に出たということなのか。

 安倍晋三らしいと言えば、安倍晋三らしいと言うことができる。


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