安倍晋三がプーチンの懸念の根拠を逆手に取って辺野古移設断念を差し出せば、少なくとも歯舞・色丹返還の可能性は生じる

2019-03-21 11:22:50 | 政治


   2019年7月28日任期満了実施参院選で

   安倍自民党を大敗に追いつめれば

   政権運営が行き詰まり 

   2019年10月1日の消費税10%への増税を

   断念させる可能性が生じる


 プーチンが2019年3月14日、モスクワで開催のロシア経済界との非公開会合で議論した世界情勢の中に日ロ平和条約交渉に関しても言及、「テンポが失われた」と述べて交渉が停滞しているとの見方をしめしたと、ロシアの有力紙であるコメルサントが2019年3月15日付で伝えたと2019年3月16日付「asahi.com」記事が伝えていた。

 停滞の理由は日本に米軍基地の設置を認めている日米安保条約等に触れて、「日米同盟を解消する必要がある」との考えをも示したとしているが、返還後の島々に日米安保条約に基づいてアメリカが米軍を配置することへの懸念をプーチンは前々から示していた。

 その〈一方でプーチンは今後の交渉について「打ち切ってはならないが、落ち着く必要がある」と指摘。結論を急がず対話を継続する姿勢を示した〉と、日本との経済協力まで投げ捨ててしまう訳にはいかないからだろう、交渉継続の思惑を紹介している。

 記事は末尾で、〈ロシアの世論調査では、北方領土の引き渡しに反対する国民は約8割にのぼり、北方領土の島民に限れば9割を超える。北方領土を管轄するサハリン州議会などからは、日本への島の引き渡しを明確に否定しないプーチン氏を批判する声も上がっている。〉と紹介して、国内世論もプーチンの判断に影響を与えている可能性に触れている。

 この〈北方領土の非軍事化は、日本と旧ソ連、ロシアとの領土交渉で度々取り上げられ、90年代初めにはロシアのエリツィン大統領(当時)が言及したこともあった。〉と2018年11月17日付「毎日新聞」記事が伝えている。そして複数の日露関係筋からの情報として、2016年11月19日にペルー・リマで開かれた日ロ首脳会談で安倍晋三が「北方領土は非軍事化するというのが日本の考え方だ」とプーチンに伝えていると報じている。

 要するに1990年代初めから返還した場合の北方領土に米軍が基地を設置し、軍を展開することへの懸念を旧ソ連にしても、後継のロシアにしても有していて、このことを日本側に度々伝えていた。このような懸念に最終的に応える形で安倍晋三は2016年ペルーの首脳会談での非軍事化の表明となったということになる。

 記事は、〈両首脳は2018年11月14日の(シンガポールでの)会談で、「平和条約締結後の歯舞群島と色丹島の引き渡し」を規定した日ソ共同宣言を基礎に平和条約交渉を加速させることで合意した。〉と紹介しているが、2019年1月26日付「共同通信47NEWS 」記事は、プーチンが2000年に「1956年宣言の履行は義務」と表明し、2島決着を提案したのに対して日本側が4島返還に固執して拒否したことを報じている。となると、シンガポール会談での1956年日ソ共同宣言基礎の歯舞・色丹二島返還交渉の合意は安倍晋三の方からの提案という形を取っているが、実際は安倍晋三の譲歩ということになって、2日後の11月16日にオーストラリア・ダーウインで行なった内外記者会見での発言、「従来から政府が説明してきているとおり、日本側は、ここにいう平和条約交渉の対象は、四島の帰属の問題であるとの立場であります。従って、今回の1956年宣言を基礎として平和条約交渉を加速させるとの合意は、領土問題を解決して平和条約を締結するという従来の我が国の方針と何ら矛盾するものではありません」はマヤカシそのものとなる。

 ロシア側の返還した場合の北方四島のいずれかの島に於いて現実化するかも知れない米軍基地の展開に対する懸念にしても、安倍晋三のプーチンに伝えたとする北方領土非軍事化の考え方にしても、いずれの首脳会談後であっても、どちらの政府の公式見解にも現われなかったと記憶している。もし公式見解で触れていたなら、プーチンが非公式の場でこのことに触れる意味がなくなる。

 安倍晋三がプーチンに「北方領土は非軍事化するというのが日本の考え方だ」と伝えたペルー・リマ開催の日ロ首脳会談の2016年11月19日から半年と約10日程あとの2017年6月1日にプーチンはロシア西部サンクトペテルブルクで行われた各国の通信社代表らとの会見で北方領土問題について言及し、島を日本に引き渡した場合、現地に米軍が展開する可能性があると述べ、返還は事実上困難との見方を示したと2017年6月1日付「産経ニュース」が伝えている。

 要するにこの会見の半年と約10日程前にペルー・リマの日ロ首脳会談で安倍晋三がプーチンに与えた返還された場合の北方四島非軍事化は確かな保証とはならずに眉唾として受け止められていた。

 記事はプーチンがロシアの北方四島での軍備拡張は韓国への最新鋭迎撃システム「高高度防衛ミサイル(THAAD)」配備などの北東アジアでの米国のミサイル防衛(MD)網拡大への対抗措置だと正当化し、北方四島はそのような「脅威」に対抗するのに「極めて便利な場所」だとして、ロシアにとっての北方領土の軍事的重要性を強調したと伝えている。つまり軍事的安全保障上からも北方四島はなかなか手放せませんよの意思表示となる。

 但し北東アジア全体の軍事的緊張緩和が実現した場合はロシアによる北方四島の非軍事化は「可能だ」とも述べたとしているが、北東アジア全体での軍事的緊張は逆に高まっているし、日本はそのような状況に加担さえしている。

 2018年2月14日の衆院予算委員会で国民民主党の後藤祐一がロシアの懸念を取り上げている。

 後藤祐一「プーチン大統領が、おととしの12月、山口県に来られました。その後の日ロの首脳の共同記者会見のときに、北方領土問題についてこのように述べておられます。米国と日本との間の安全保障条約の枠内における条約上の義務が念頭にありますが云々とあって、全ての微妙さとロシア側の懸念を考慮することを望みますと。

 米安保条約の6条というので、アメリカは、陸軍、空軍及び海軍が日本国において施設及び区域を使用することが許される、つまり、日本のどこにでも米軍は基地なりを置いていいという安保条約6条というのがあって、北方領土がもし日本の帰属になった場合には米軍の基地が置かれてしまうのではないか、だとすると、なかなかどうぞというわけにはいかないですよねということをプーチン大統領はおっしゃっていると思うんですが、これは明確にこう言っているわけですね」

 安倍晋三「6条においては、当然これは日本の同意が必要となるわけであります」

 後藤祐一「いえいえ、プーチン大統領が、北方領土の問題についてなかなかいいよという話にまでいかないのは、6条に基づいて米軍が基地を置いてしまうかもしれない、だからなかなか返せないよねということをちゃんと考えてほしいと。これはある意味合理的だと思うんですよ。なかなか領土問題が解決しない理由は、プーチン大統領ははっきり言っているんですよ。総理も同じ認識ですか」

 安倍晋三「私とプーチン大統領とのやりとりの中身については、これはまさに交渉中でございますから、ここで発言することは控えさせていただきたいと思います。

 これは横に置いておいて、他方、安保条約の6条において、米軍が望めばどこにでも置けるということでは全くないわけでございまして、先ほど私が申し上げましたとおり、日本の同意が必要であります」

 要するに日本はアメリカが返還された場合の北方四島に米軍基地を置くことを望んだとしても同意しないと保証していることになる。

 安倍晋三とプーチンは2018年の首脳会談をこの2018年2月14日の衆院予算委員会後の2018年5月26日のモスクを皮切りに2018年9月10日にウラジオストクで、2018年11月14日にシンガポールで、そして2018年12月1日にアルゼンチンのブエノスアイレスでと、4回も開催している。

 公式見解上は現われなくても、北方四島返還交渉と平和条約締結交渉を前へ進めるためにロシア側の懸念についても話し合われたはずで、安倍晋三は2016年11月19日のペルー日ロ首脳会談で表明した「北方領土非軍事化」の保証の有効化に務めたはずだ。

 そして2018年最後のアルゼンチンはブエノスアイレス日ロ首脳会談開催の12月1日から19日後の2018年12月20日、プーチンは年末恒例の記者会見で非公式の場であるものの、再び北方四島に於けるロシアの懸念を取り上げている。「asahi.com」(2018年12月21日02時00分)

 プーチン「(返還した島々に米軍基地設置の可能性について)日本の決定権に疑問がある。日本が決められるのか、日本がこの問題でどの程度主権を持っているのか分からない。

 平和条約の締結後に何が起こるのか。この質問への答えがないと、最終的な解決を受け入れることは難しい。(日本の決定権を疑う例として沖縄の米軍基地問題を挙げ)知事が基地拡大に反対しているが、何もできない。人々が撤去を求めているのに基地は強化される。みなが反対しているのに計画が進んでいる」

 2018年2月14日の衆院予算委員会で、「安保条約の6条において、米軍が望めばどこにでも置けるということでは全くないわけでございまして、先ほど私が申し上げましたとおり、日本の同意が必要であります」と安保条約に於ける基地設置に関わる日本の主体的同意へのアメリカ軍の従属性を言いながら、そして4回も首脳会談を行なっていながら、ロシアの懸念払拭の有効化を実現させることができなかった。

 そして2019年に入って早々の1月22日にモスクワで安倍晋三とプーチンは通算25回目の首脳会談を開催しながら、同年3月15日になって、既に触れているようにロシアの有力紙コメルサントが前日3月14日モスクワで開催したロシア経済界との非公開会合の席でプーチンが表明した北方領土交渉に関わる懸念を報じることになった。しかもプーチンはこれまでと違って、米軍基地を置かない保証を「日米同盟解消」に求めた。

 これは安倍政権にとってクリアできない条件だと承知の上で突きつけた、当然、実現可能性を何ら期待していない要求であろう。だとしても、プーチンが「日米同盟解消」を掲げた以上、2018年2月14日の衆院予算委員会で後藤祐一に対して安保条約6条を根拠として言及した米軍基地設置に於ける「日本の同意の必要性」だけではなく、2019年3月18日の参院予算委員会で国民民主党新緑風会派の山本太郎がロシア側の懸念を取り上げたのに対して安倍晋三が同じく米軍基地設置に関して「事前協議が必要であります。事前協議に於いて日本側が了承しなければならない」と答弁した事前協議の必要性にしても、ロシア側の懸念を払拭する何らの材料にも、保証にもなっていないことになる。

 安倍晋三がこの事前協議の必要性を答弁したのに対して山本太郎は、1960年の「安保改定交渉に先立ち、その前年、1957年6月21日に出された岸首相とアイゼンハワー大統領の共同声明には合衆国によるその軍隊の日本に於ける配備及び使用について実行可能なときは、実行可能なときはいつでも協議することを含めて、安全保障条約に関して生じる問題を検討するために政府間の委員会を設置すると書かれています」と述べて、事前協議制度が「実行可能なとき」という条件づきで機能する、いわば実行不可能なときは機能しないことになる抜け道を暴き出しているが、こういったことをプーチンが承知していて、安倍晋三にはできもしない「日米同盟解消」を持ち出した可能性は排除できない。

 但し例えプーチンが「日米同盟解消」を求めたとしても、沖縄の米軍基地問題を取り上げて、「知事が基地拡大に反対しているが、何もできない。人々が撤去を求めているのに基地は強化される。みなが反対しているのに計画が進んでいる」ことを米軍基地に関わる日本の決定権を疑う根拠として挙げている以上、その根拠を逆手に取って辺野古移設断念をプーチンに差し出した場合、沖縄の県民投票に現われた辺野古ノーの民意に添うことになるばかりか、「日米同盟解消」とまでいかなくても、返還された場合の北方領土を米軍の好きなようにさせない意思表示となるはずで、少なくとも歯舞・色丹返還の可能性は生じることになる。

 安倍晋三がそこまでしなければ、プーチンの「日米同盟解消」は北方四島のいずれの島も返還しないための無理難題として生き続けることになるだろう。


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