安倍晋三の1/26参院代表質問答弁:GDPベースのプラス統計はアベノミクス=格差ミクスの間接証明

2018-01-29 11:42:36 | 政治

 1月26日(2018年)、参院本会議で安倍晋三の施政方針に対する代表質問が行われて、民進党議員藤田幸久がアベノミクスは失敗しているのではないかと問い質した。対して安倍晋三はGDPベースの消費動向がプラスに推移していることを根拠にアベノミクスの経済の好循環は着実に回り始めていると答弁。

 果たしてどちらがアベノミクス経済の実態を言い当てているのだろうか。アベノミクス経済運営の当事者たる安倍晋三が実態に反することを言うはずはないと思うが、都合の良い統計だけを持ち出して自己宣伝に努める虚偽答弁をオハコ(十八番)としている安倍晋三のことだから、オハコに右へ倣えの虚偽答弁という可能性は否定できない。藤田幸久のアベノミクスに関する質問のみを民進党サイトから引用した。読みやすいように段落を適宜変えた。

 「参院代表質問 民進党・藤田幸久議員 1月26日」   

 藤田幸久(アベノミクスの失敗)「最近の読売新聞の世論調査では、景気回復を実感していない人は73%です。これは、実感がないというより実体がないからです。第二次安倍政権誕生以来膨大な金融緩和と財政出勤を行ったにもかかわらず、消費も収入も減りました。

 第二次安倍内閣発足の2012年と2016年を比較した数字では、総世帯の消費支出が一世帯当たり一か月平均で24万7651円から24万2425円に、総世帯の年間収入は515万円から512万円に、一人当たりGDPは世界第15位から20位に下落。

 他方非正規雇用労働者は1816万人から2023万人に、年収200万円以下の雇用者は1090万人から1132万人へと増加しました。総理、これらの事実をどう受け止めるか答弁を求めます。

 株価の上昇の主因は、日銀によるETF購入や、GPIF(年金運用基金)など、80兆円以上ともいわれる官製相場によるものです。この実態に関する認識を伺います。

 逆に公的資金投入をやめると暴落の危険があるのではないですか、答弁を求めます。

 このようにデフし脱却に失敗し、実体成果のないアベノミクスの失敗を認めるときではないですか。総理の真摯なな答弁を求めます。

 安倍晋三「経済認識等についてお尋ねがありました。5年間のアベノミクスにより経済は足元で28年ぶりとなる7四半期プラス成長となり、4年連続の賃上げにより経済の好循環は着に回り始めており、民需主導の力強い経済成長が実現し、デフレ脱却への道筋うを確実に進んでおります。

 消費支出については世帯当たりの消費を捉える家計消費では世帯人員の減少などが長期的に減少傾向となっているいますが、国全体の消費を捉えるGDPベースでは実質で2016年以降、全四半期プラス傾向で推移するなど持ち直しております。

 家庭の世帯当たり年間収入については高齢化の進む中、2012年以降、横這い圏内で推移していますが、一国全体で見たGDPベースの家庭の可処分所得は3年連続で増加しています。

 また1人当りの名目GDPは円ベースで、円ベースで見れば、過去最高の水準です。

 非正規や年収200万円以下の方々が増加しているとのご指摘がありますが、正規雇用創出は2015年に8年ぶりにプラスに転じ、2016年合わせた2年間で79万人増加。この増加幅は非正規を上回っています。

 年収200万円以下の給与所得者の数はご指摘の通り増加していますが、これは景気が緩やかに回復する中でパートで働く方が増加したことによるものと考えられます。

 また給与所得者数は全ての所属階層で増加しており、200万円以下では23.9%から23.3%に減少していることも申し上げたいと思います。

 今後のあらゆる政策を動員して、デフレ脱却、力強い経済政策を目指してまいります」

 藤田幸久が挙げた景気悪化状況、あるいは統計値。

 世論調査で景気回復を実感していない73%。
 総世帯の消費支出2012年1世帯当たり1カ月平均で24万7651円から2016年24万2425円に減少。
 総世帯年間収入2012年1世帯当たり515万円から2016年512万円に減少。
 1人当たりGDP2012年世界第15位から2016年20位に下落。
 非正規雇用労働者は2012年1816万人から2016年2023万人に増加。
 年収200万円以下の雇用者は2012年1090万人から2016年1132万人へと増加。
 株価の上昇の主因は日銀80兆円投入のETF購入・GPIF(年金運用基金)によるもので、アベノミクス効果作用ではない。

 安倍晋三が挙げたアベノミクスによる経済回復状況、あるいは統計値。

 GDPは28年ぶりとなる7四半期プラス成長。
 家計消費では世帯人員の減少等で長期的に減少傾向だが、GDPベースでは実質で2016年以降、全四半期プラス傾向で推移。
 1人当りの名目GDPは円ベースで過去最高の水準。
 正規雇用創出は2015年に8年ぶりにプラス。2016年合わせた2年間で非正規を上回る79万人の増加。
 年収200万円以下給与所得者数の増加は景気回復局面で特徴的なパート従業者増加が原因。
 給与所得者数は全所属階層で増加、200万円以下では23.9%から23.3%に減少。

 以上となる。

 1月25日(2018年)の当「ブログ」で野村総研記事2015年の全階層の純金融資産総額1402兆円が、マスコミ記事2017年6月末時点で過去最高更新の1832兆円と一般生活者の給与の僅かな改善と比較して富裕層の純金融資産独占の状況を浮かび上がらせて、アベノミクスによって格差が大きく拡大していることを書いた。         

 この格差拡大の主因は円安と株高に基づいていることは断るまでもない。一般生活者は株の儲けに縁がなく、円安を受けた輸入生活物資の値上がりによって逆に生活が苦しくなっていて、それが世論調査の「景気回復を実感していない73%」と言うことなのだろう。

 安倍晋三は「GDPは28年ぶりとなる7四半期プラス成長」とアベノミクスを誇っているが、約70%を占めるとされているGDP構成の民需は「家計消費」と「企業投資」で成り立っている。そしてGDPに占める家計が支出する消費額(「家計消費」)の総額は約6割とされている。

 そしてこの6割の大部分を富裕層・準富裕層が大きく貢献していると見なければならない。

 株の儲けに縁のある上に高額給与を受けている富裕層・準富裕層の消費と特に大企業の投資が「プラス成長」のうちの大きな部分を担っていることを考慮すると、「景気回復を実感している50%以上」の世論調査にならなければ、「GDPは28年ぶりとなる7四半期プラス成長」は格差の証明としかならない発言となる。

 安倍晋三はまた、「家計消費では世帯人員の減少等で長期的に減少傾向だが、GDPベースでは実質で2016年以降、全四半期プラス傾向で推移」と発言している。確かに世帯当たりの人員減少に対応して家計消費も減少するが、人員減少に関わらず家計消費が増加する程の力強い景気回復・賃金上昇をアベノミクスが生み出すことができていない力不足という見方もできる。

 世帯の収入・支出に基づく「家計調査」は持家の帰属家賃とインバウンド消費を含まないが、GDPベースではこの両方を含む統計となっている。

 住宅や土地の購入は以後残る財産としての取得であり、消費支出ではないと見て家計調査等には含まないが、持家を借家だと見立ててそれ相応の家賃を計算、それを帰属家賃と看做して、その家賃を支払っていると見て、GDPベースで計算する場合は家計調査等に入れている。

 インバウンド消費とは日本を訪れる外国人観光客の国内での消費活動を言う。

 要するに消費支出としてのその帰属家賃は富裕層・準富裕層等、高額所得者になる程GDPに貢献していて、GDPに占めるその数値は土地・住宅を持たない生活者、あるいは持っていても30年ローンで高齢になるまで支払い続けなければならない生活者には実感なく映ることになるばかりか、逆に格差を反映させたGDPベースということになる。

 さらに円安効果で増加している訪日外国人のインバウンド消費まで計算に入れて、家計消費は「GDPベースでは実質で2016年以降、全四半期プラス傾向で推移するなど持ち直しております」と日々切り詰めた生活を強いられている一般生活者の消費の実態には関係しない統計まで持ち出してアベノミクス効果を証明しようとする。

 裏返すと、これもアベノミクスの力不足の証明としかならない。

 「1人当りの名目GDPは円ベースで過去最高の水準」――

 名目GDPは物価の変動を反映した統計である。円安で外需産業程、為替差益を上げているのに対して一般生活者は輸入物価の高騰で苦しい生活を強いられる特大の格差が生じている。しかもインバウンド消費額や帰属家賃まで含んだプラスとなると、これまた格差の証明としかならない。

 以上の格差拡大の実態を考慮すると、「正規雇用創出は2015年に8年ぶりにプラス。2016年合わせた2年間で非正規を上回る79万人の増加」と言っていることも、「年収200万円以下給与所得者数の増加は景気回復局面で特徴的なパート従業者増加が原因」と言っていることも、格差拡大の前に意味を失うことになるだけではなく、円安で生活物価が高騰している以上、「年収200万円以下給与所得者数の増加」の状態自体を格差拡大阻止にアベノミクスが何ら役に立たず、逆に格差拡大の一方向のみに機能している、力を発揮していると見なければならないはずだ。

 だが、そのように見る目を持っていない。

 格差が急激に拡大している状況下で、「給与所得者数は全所属階層で増加、200万円以下では23.9%から23.3%に減少」がアベノミクスの効果をどのくらい示すオマジナイになると言うのだろうか。


 安倍晋三自身が気づいていないだけのことで、民進党議員藤田幸久の代表質問に対する以上挙げた答弁はアベノミクスは格差ミクスの間接証明としかならない内容で練り上げられていたに過ぎない。

 当然、安倍晋三と藤田幸久のどちらがアベノミクス経済の実態を言い当てていたか軍配を上げるとしたら、藤田幸久に上げて、安倍晋三の発言に対しては虚偽答弁の判決を下さざるざるを得ない。


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