ホリエモンの北ミサイル発射「こんなんで一々出すシステムを入れるクソ政府」から考えるJアラートの効果

2017-09-01 11:11:44 | 政治

 2017年8月29日早朝、北朝鮮が弾道ミサイルを発射、作動したJアラート(全国瞬時警報システム)がスマホか携帯電話の呼び出し音を自動的に鳴らしたのか、電源を切っていたが、同じくJアラートが自動起動させた各地域の防災行政無線(屋外スピーカー)を通じて慌ただしい声で警報を伝えられたのか、自身の私的な用事でもないのに朝の目覚めを邪魔されたのでたちまちご機嫌斜めになったらしいホリエモンこと実業家の堀江貴文(44)がJアラートの配信を伝えるニュース記事をツイッターで引用して6時30分、「マジでこんなんで起こすなクソ。こんなんで一々出すシステムを入れるクソ政府」と投稿したところ、「賛否の声があがっている」と、「J-CAST」記事が伝えていた。    

 「残念ながら必要だと思ってる人間もいるのです」
 「こんなこと?本当にミサイルが落ちたらそんなふうに言えませんよ。システムは国民の命を守るためでしょう?」
 「命を守るためのシステムです それをクソ扱いですか?」
 「なんでこんなに叩かれてんのかね?」

 記事は批判の声ばかりで、賛同の声は伝えていないが、批判者はJアラートを国民の命を守るのに役立つシステムだと信じている。言ってみれば、「Jアラート」性善説に立っている。

 果たして国民の命を守るのに役立つばかりのシステムだと簡単に決めていいのだろうか。

 安倍晋三は8月29日の北朝鮮のミサイル発射を受けて首相官邸で同日、3度記者会見を開いている。その一つで次のように発言している。

 安倍晋三「政府としては、ミサイル発射直後からミサイルの動きを完全に把握しており、国民の生命を守るために万全の態勢を取ってまいりました」(首相官邸)     

 この発言を見ると、 Jアラートに全幅の信頼を置くことができるようにみえる。

 次に弾道ミサイル発射に対する政府(総務省消防庁)の対応を見てみる。

 「北朝鮮による弾道ミサイルとみられる飛翔体発射に伴う消防庁の対応について」

(最終報)平成29年8月31日(木)16:00現在

消防庁第1次情報連絡室

1 事案の概要
エムネットによる情報によると、8月29日5時58分頃、北朝鮮からミサイルが 東北地方に向けて発射されたとのこと。

2 消防庁の対応等

8月29日
6:00 消防庁長官を長とする消防庁緊急事態調整本部を設置
6:02 発射情報をJアラートで伝達(北海道等 12道県)
6:14 通過情報をJアラートで伝達(北海道等 12道県)

 発射情報が伝えられた地域は北海道以下、青森県、岩手県、宮城県、秋田県、山形県、福島県、茨城県、栃木県、群馬県、新潟県、長野県となっている。

 纏めてみる。

 8月29日5時58分頃:北朝鮮弾道ミサイル発射
 8月29日6時02分: 発射情報をJアラートで伝達
 8月29日6時14分: 通過情報をJアラートで伝達 

 次に「NHK NEWS WEB」記事から借用した画像で北朝鮮の今回の弾道ミサイル発射時間、襟裳岬に到達時した時間、そして東北沖に着弾した時間、各地点までの要した時間、それぞれの飛行距離を見てみる。

 弾道ミサイルが北海道に達した地点は松前郡辺り。松前郡から襟裳岬のあるえりも町までの距離は約270キロ前後。襟裳岬から着水地点まで1180キロ。松前郡から着水地点まで1450キロ。

 弾道ミサイル発射地点から松前郡までは2700キロ-1450キロ=1250キロ

 飛行距離2700キロを発射の5時58分頃から着水の6時12分頃までの14分間飛行した。

 分速を計算すると、2700キロ÷14分≒193キロ/分

 発射地点は北朝鮮首都平壌中心部から北に約24km地点の平壌国際空港滑走路だそうだ。

 発射地点から松前郡までの到達時間は、1250キロ÷193キロ/分≒6分30秒

 松前郡から襟裳岬までの到達時間は270キロ÷193キロ/分≒1分24秒

 いわば1分24秒間、北海道上空を画像にある軌道を描いて飛行したことになる。

 Jアラートはミサイル発射の5時58分頃から4分後の6時02分に発射情報を伝達。その2分30秒後の6時4分30秒に松前郡に到達。そして6時4分30秒から襟裳岬に到達する6時5分54秒までの1分24秒の間に、Jアラート情報伝達から4分近い間に安全な場所に避難しなければならない。

 北海道西岸の住民は今回の弾道ミサイル発射の場合は万が一の北海道落下に備えて、Jアラート警告後の2分30秒の間に避難を完了していなければならないことになる。

 それ以外の住民は2分30秒から4分までの間に避難完了ということになる。

 「内閣官房 国民保護ポータルサイト」はJアラートの避難の呼びかけに関わるメッセージの内容を伝えている。

 弾道ミサイルが日本に飛来する可能性があると判断した場合

 〈屋外にいる場合は、近くの頑丈な建物や地下(地下街や地下駅舎などの地下施設)に避難して下さい。〉

 弾道ミサイルが日本の領土・領海に落下する可能性があると判断した場合の続報

 〈屋外にいる場合には、直ちに近くの頑丈な建物や地下に避難してください。また、近くに適当な建物等がない場合は、物陰に身を隠すか地面に伏せ頭部を守って下さい。 なお、屋内にいる場合には、できるだけ窓から離れ、できれば窓のない部屋へ移動して下さい。〉

 前者は予想外の落下、後者は予想内の落下への備えとなっている。 

 いずれの場合であっても、Jアラート警報後の2分30秒から4分までという時間は避難を完了させるには十分な時間のように思える。

 但し頑丈な建物や地下(地下街や地下駅舎などの地下施設)以外の避難に対してはミサイルが直撃しない場合の保障としかなっていない。頑丈な建物や地下以外の物陰に身を隠す、あるいは地面に伏せて頭部を守ることで身の安全が保障されるのはミサイルが直撃せずに上空を通過する場合のみであろう。

 あるいは屋内にいる場合は窓から離れて、できれば窓のない部屋へ移動することによって身の安全が保障されるのは、同じくミサイルが直撃せずに上空を通過する場合のみであろう。

 日本の迎撃ミサイルが飛来してくる弾道ミサイルを撃墜したとしても、破壊したミサイルの破片が直撃しない場合のみの身の安全の保障ということになる。

 いわば北朝鮮が日本を攻撃する意図で特定の場所を狙ってミサイルを発射し、直撃を受けたとしても、身の安全を保障されるのは頑丈な建物や地下を避難場所とすることができた住民ぐらいに限定されることになり、そういった住民に限ってJアラートは国民の生命を守るシステムと言うことができることになる。

 政府は今回のミサイル発射に対して「我が国の安全、安心を総合的に考えて破壊措置命令を出さなかった」としているが、例え破壊措置命令を出しても、迎撃ミサイルで完全に撃墜できる保証はない。100発100中のミサイルなど存在しないからだ。

 2017年8月29日付「NHK NEWS WEB」記事はアメリカの早期警戒衛星が最初に発射をキャッチしておおまかな発射場所や発射の方向などを割り出して、この情報を元に日本近海に展開する海上自衛隊のイージス艦が追尾、日本国内落下の予測の場合は迎撃ミサイル「SM3」で撃墜、迎撃が失敗した場合は航空自衛隊の地上配備型の迎撃ミサイル「PAC3」が地上近くで迎撃すると、二段構えの備えでをあることを解説している。

 だが、この二段構えそのものが100発100中のミサイルなど存在しないことの証明そのものとなっている。「PAC3」にしても、100発100中ではないということである。

 撃墜できなければ問題外だが、撃墜できたとしても、破壊されたミサイルの破片が直撃しない保証はない。直撃から生命の安全を守ることができるのは頑丈な建物や地下に避難できた住民にほぼ限られることになる。

 100発100中のミサイルなど存在しないと同じようにJアラートとて、完璧ではないということになる。

 と言うことは、安倍晋三が言っているように政府が「ミサイル発射直後からミサイルの動きを完全に把握し」、Jアラートを適切に駆使して避難を呼びかけようとも、そのことが「国民の生命を守るため」の最善の方法であったとしても、全ての生命を守ることができる「万全の態勢」とまでは言えないことになる。

 「万全」とは「全く完全で、少しも手落ちがないこと」を言う。

 安倍晋三は保障にもならないことをさも保障できるかのようにカッコーのいいとこを見せたに過ぎない。

 ホリエモンがツイッターで「マジでこんなんで起こすなクソ。こんなんで一々出すシステムを入れるクソ政府」と悪態をついたのは北朝鮮が現段階では日本を攻撃する意図で特定の場所を狙ってミサイルを発射する緊迫した状況にはなっていないと見ているからだろう。

 現実問題として実際に北朝鮮が日本に向けてミサイルを発射した場合、Jアラートの情報伝達によってその恩恵を受ける形で助かる住民も、恩恵という形にならずに助からない住民も出てくる。

 過大評価もいけないし、過小評価もいけない。結果が全てを判定することになる。


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