安倍晋三の「受験生の都合」に合わせたのではない「政治の都合」に合わせた公平性欠如云々の英語民間試験中止

2019-11-04 12:32:09 | 政治
 現行の大学入試センター試験の後継、2020年度からの大学入学共通テストでの導入が決まっていた英語民間試験について安倍晋三の子分中の子分、教育行政を与る、当然、教育問題に精通しているはずの、いわば教育について一家言を有しているはずの文科相萩生田光一センセイが一躍脚光を浴びた。2019年10月24日民放BS番組での発言が原因で、翌日のマスコミが一斉に取り上げた。

 その発言を詳しく伝えている2019年10月25日付「J-CASニュース」から纏めてみる。

 キャスター反町理(そりまちさとし)「『お金や場所、地理的な条件などで恵まれている人が受ける回数が増えるのか、それによる不公平、公平性ってどうなんだ』との声があるが、どのような見解をお持ちか」(解説文を会話体に直す)

 萩生田光一センセイ「そういう議論もね、正直あります。(でも、)それ言ったら、『あいつ予備校通っていてズルいよな』と言うのと同じだと思うんですよね。だから、裕福な家庭の子が回数受けて、ウォーミングアップができるみたいなことは、もしかしたらあるかもしれないけれど、そこは、自分の身の丈に合わせて、2回をきちんと選んで勝負して頑張ってもらえば。

 人生のうち、自分の志で1回や2回は、故郷から出てね、試験を受ける、そういう緊張感も大事かなと思う。
できるだけ近くに会場を作れるように今、業者や団体の皆さんにはお願いしています。できるだけ負担がないように、色々知恵出していきたい。実施団体に受験料軽減もお願いしている」――

 英語民間試験は2020年度から開始予定の大学入学共通テストで活用することを決めていた。萩生田光一センセイの発言は全て2020年度開始に間に合う内容となっている。

 英語民間試験について「コトバンク」が次のように解説している。〈2020年度の受験生から対象となる大学入学共通テストでは「読む・聞く・話す・書く」という英語の4技能を測る。グローバル化を意識した取り組みだが、特に「話す」のテストを一斉に実施することは困難なため、文部科学省は民間試験の活用を決めた。初年度は英検やGTEC、TOEICなど8種類が利用され、原則として高校3年の4~12月に受けた最大2回の成績が出願先の大学に提供される。大きな転換に配慮し、23年度までは入試センターが「読む・聞く」の2技能を測る試験を続ける予定だ。〉

 要するに英語の入試に関しては2020年度から2023年度までは「読む・聞く」は入試センターが担当、「話す・書く」を民間が担当、2024年度からは「読む・聞く・話す・書く」全ての試験に民間試験を導入する予定を立てていた。
受験生は共通IDを取得した上で、そのIDを使ってケンブリッジ大学英語検定機構や日本英語検定協会、ベネッセコーポレーション、その他の民間団体が実施する希望する英語試験を最大2回受験が可能で、その2回分のスコアを大学入試センターを通じて受験する大学に提供、各大学の判断で出願資格や合否判定に使われる仕組みだという。

 例え3回受験したとしても、自動的に試験日程が早かった順に2回分の成績のみが採用される仕掛けになっていると言う。

 となると、萩生田光一センセイが「裕福な家庭の子が回数受けて、ウォーミングアップができるみたいなことは、もしかしたらあるかもしれないけれど」と言っていることは、英語の成績を上げる有利な状況を手に入れるために入学目標の大学に成績が提供される共通IDを使った2回の英語試験のあとに何回受けても意味はないから、2回受験する前に共通IDを使わずに何回か受けて、問題の傾向を探り、対策を練った上で共通ID使用の正式な試験を2度受けるという手を使うことも可能となる。

 各事業者の受験料は低所得世帯の受験生は2割引といったところもあるようだが、マスコミ報道を見ると、5800円から2万5000円までの差があり、2割引を前程とすると、5800円の2割引は4640円。2回で9280円。、2万5000円の2割引は2万円。2回で4万円の受験料の計算になるだけではなく、英語以外の大学入試センター試験の1次の受験料が、ネットで調べてみると、3教科以上が1万8000円、2教科以下が1万2000円で、成績通知を希望する場合はプラス800円。国公立大の2次試験が1校につき平均で1万7000円、私立大が1校につき平均で約3万5000円、4万円から6万円もかかる場合もあると言うから、英語民間試験に限ったとしても、正規の2回の試験で手一杯という低所得世帯の受験生も出てくることになり、萩生田光一センセイが宣っているように「裕福な家庭の子」だけが回数受けることができるメリットを独占できる可能性は否定できない。
この状況は日本国憲法第3条が「すべて国民は、ひとしく、その能力に応ずる教育を受ける機会を与えられなければならないものであって、人種、信条、性別、社会的身分、経済的地位又は門地によって、教育上差別されない」と保障している「教育の機会均等」を弱める役割を政府自らが果たしていることになる。

 そしてその先頭に教育行政を与る文科相として萩生田光一センセイ自身が立って、「自分の身の丈に合わせて」云々と「教育の機会均等」何のそのの旗振り役を担った。

 萩生田光一はこの発言の批判を受けると、10月28日のぶら下がり会見で、「どのような環境下にいる受験生も自分の力を最大限発揮できるよう、自分の都合に合わせて適切な機会をとらえて、2回の試験を全力で頑張ってもらいたいとの思いで発言したものだった」と釈明。翌10月29日の記者会見でも、「昨日、ぶら下がりの会見の中でも説明させて頂きましたけれども、私はどのような環境下にいる受験生においても、自分の力を最大限発揮できるよう、自分の都合に合わせて、適切な機会を捉えて、英語試験ですけれども、2回の試験を全力で頑張ってもらいたいとの思いで発言をしたものです。しかしながら、結果として国民の皆様、特に受験生の皆さんに対して不安や不快感を与えることになってしまったと考えており、改めてお詫びを申し上げるところでございます」と釈明している。

 さらに10月30日の衆院文教委員会冒頭に発言を求めて、同じような釈明と謝罪のコメントを発している。

 委員長「この際、萩生田文部科学大臣から発言を求められておりますので、これを許します。萩生田文部科学大臣」

 萩生田光一「委員会の冒頭発言の機会を頂き、御礼を申し上げます。

 先週10月24日の私のテレビ番組に於ける大学入試英語成績提供システムに関する発言について、その発言の真意はどのような環境下にいる受験生に於いても自分
の力を最大限発揮できるよう、自分の都合に合わせて適切な機会を捉えて、次回の試験を全力で頑張ってもらいたいという思いで発言をしたものです。

 しかしながら、結果として国民の皆様、特に受験生の皆様に対して不安や誤解を与えることになってしまったと考えており、一昨日発言を撤回しました。改めて。この場をお借りして、国民の皆様に、特に受験生の皆様にお詫びを申し上げる次第であります。
私としては英語試験実施団体に対して需要に応じた実施会場の確保などを求めると共に離島に居住する高校生等が離島外で検定試験を受験する際の費用の補助経費を概算要求するなど、今後とも受験生や高校関係者の不安の解消に向けて全力で取り組んで参りたいと思います。

 引き続き委員長、理事、または議員各位のご指導、ご鞭撻を賜りますようによろしくお願い申し上げます」

 かくかように「自分の身の丈に合わせて」を「自分の都合に合わせて」に言い換えている。

 「自分の身の丈に合わせて」が萩生田光一という政府の人間が受験生に対して口にした要望である以上、上からの指示に対する従属性を要求するニュアンスを自ずと持つことになる。当然、「自分の都合に合わせて」に言い換えたとしても、従属性の要求であることに変わりはない。

 自分の将来を決める重大な進路をただでさえ経済的に「自分の身の丈」に合わせなければならない、あるいは「自分の都合」に合わせなければならない境遇は悲しい。政
治がそれを救済するのではなく、「合わせて」と要望して、憲法が保障している「教育の機会均等」を弱める役割を気づかないままに果たしている。

 「自分の身の丈に合わせて」を「自分の都合に合わせて」に言い換えたとしても、萩生田光一の責任は大きい。

 この10月30日の文教委員会で国民民主党の城井崇(きいたかし)が、「新聞報道によると英語民間試験延期論が政府内あると言うが」と質問している。

 城井崇「国民民主党の城井崇(きいたかし)です。共同会派『立国社』。本日1番バッターとして質問の機会頂きました。ありがとうございます。

 誰もが望めば、学ぶチャンスを掴める。スタートラインに立てる日本にしていくべく、今日も質問をさせて頂きたいと思います。今日は文部科学大臣、そして文部科学副大臣、そしてオリパラ担当大臣とそれぞれ政務三役に質問を申し上げますので、宜しくお願い致したいと思います。

 先ず冒頭、本日の報道で確認をすべき内容が出てまいりましたので、この段階(?)での通告を申し上げて、お答え頂くようにお願いを致しました。

 大臣にお伺い致します。本日2019年10月30日読売新聞朝刊一面に『英語民間試験延期論、政府内』、こうした内容の記事が出ました。事実でしょうか、フェイクニュースでしょうか。事実関係について大臣、お答えください」

 萩生田光一「お答えします。文部科学省としてはご指摘の議論については承知はしておりません。いずれにせよ、文科省としては英語成績提供システムについては高等学校、大学関係者の合意に基づいた方針によるものであり、受験生がこの実習を念頭に既に準備を進めていきてることから受験生等の不安や懸念を一つ一つ解消し、2020年度からの円滑な実施に向けて全力で取り組んでいきたいというふうに考えております」

 城井崇「承知をしていないとお答えでしたが、政府内での議論との報道でした。事実確認を頂けますでしょうか」

 萩生田光一「あの、文科省としては全く、その議論には組みしていないのですが、まあ、総理のどっかでそういう話があるとすれば、確認をきちっとしたいと思います」

 城井崇「当委員会に報告を頂きたいと思いますが、委員長、如何でしょうか」

 委員長「後刻理事会で協議致します」

 城井崇の質問に対して萩生田光一は「(延期の)議論には組みしていないのですが、まあ、総理のどっかでそういう話があるとすれば、確認をきちっとしたいと思います」と答弁している。「組みしていない」という発言ははっきりと聞き取れなくて、何回も聞き直したが、あとの「総理のどっかでそういう話があるとすれば」と言っていることから、その延期の議論に文科省は加わってはいないという意味で「組みしていない」と答弁したはずである。

要するに総理周辺で延期論があるとしても、文科省にしても萩生田光一自身にしても与り知らない(関与していない)という意味を取る。

 ところが、2日後の11月1日の記者会見で萩生田光一は英語民間試験の延期を告げることになった。

 萩生田光一「お早うございます。続いて私から大学入試英語成績提供システムにかかる今後の方針について報告をさせて頂きます。

 私は就任以来、試験を受ける高校生のことを一番に思いながら、英語民間試験活用のための大学入試英語成績提供システムのあり方について、これまでの進捗状況を冷静に分析しつつ、多くの方々の意見を聞きながら慎重に検討を行ってまいりました。

 そうした中、先日私の不用意な発言で高校生をはじめとする皆様に大変なご迷惑をおかけしたが、この間もさらに多くの方々からご意見を頂くこととなり、より一層現状の課題を浮き彫りにすることができましたた。

 文部科学省としては大学入試センターを通じてということもあり、民間試験団体との連携・調整が十分でなく、各大学の活用内容、民間試験の詳細事項等の情報提供不足等、準備の遅れに繋がることとなりました。ここまで準備を進めて頂いた試験団体の皆様にもご迷惑をおかけをすることになりした。

 大学入試英語成績提供システムは現時点に於いて経済的な状況や居住している地域に関わらず等しく安心して試験を受けられる配慮など、文部科学大臣として自信を持って受験生の皆さんにお勧めできるシステムにはなっていないと判断せざるを得ません。

 これ以上、決断の時期を遅らせることは混乱を一層大きくしかねないため、ここに来年度からの導入を見送り、延期することを決断を致しました。私の耳にはこれまで頑張って英語の勉強をしてきた高校生の声も届いていますし、皆様にはご迷惑をおかけしてしまい、申し訳ない気持です。

 最後に私から言わなければならないことがあります。それは今後の話です。子どもたちに英語の4技能を身につけさせることはこれからのグローバル社会に必ず必要です。それを入試でどのようにして評価していくのか。できるだけ公平で、アクセスしやすい仕組みはどのようなものなのか。新しい学習指導要領で初めて実施をする、令和6年度に実施される大学入試に向けて私のもとに検討会議をつくって、今後1年を目途に検討をし、結論を出したいと思います。

 また、多面的・総合的に学力を評価しようとする高大接続改革を引き続き着実に進めてまいります。

 令和2年度から開始する大学入学共通テストの記述式問題の導入など大学入試改革については円滑な実施に向けて万全を期してまいりたいと思います。

 今回の件について受験生を始めとした高校生、多くの皆様に対する私の気持ちをメッセージとしてお伝えをしたいと思いますので、協力をお許しください。

 『文部科学大臣の萩生田光一です。皆様の令和4年度(令和3年度実施)の大学入試に於ける民間英語試験活用のため、大学入試英語成績提供システムは導入を見送ることをお伝えします。

 大学入試に於ける英語民間試験に向けて今日まで熱心に取り組んでいる高校生も多いと思います。今回の決定でそうした皆様との約束を果たせなくなってしまったことを大変申し訳なく思っております。

 英語民間試験を予定通り実施するかどうかに関しては高校生を始め、多くの皆様から賛成、反対、様々な意見を頂いてきました。私としては目標の大学に向けて英語試験の勉強を重ねている高校生の姿を思い浮かべながら、当初の予定通りのスケジュールで試験を実施するために連日取り組んでまいりました。

 しかし大変残念ですが、英語教育充実のために導入を予定してきた英語民間試験を経済的な状況や居住している地域に関わらず等しく安心して受けられるようにするためにはさらなる時間が必要だと判断するに至りました。

 大学試験における新たな英語試験については新学習指導要領が適用される令和6年度に実施する試験から導入することとし、今後1年を目途に検討し、結論を出すこととします。皆様が安心して受験に臨むことができる仕組みを構築していくことを改めてお約束を申し上げます。

 今回文部科学省としてシステムの導入の見送りを決めましたが、高校生にとって『読む・聞く・話す・書く』といった英語4技能をバランスよく身につけ、目指すことは大切なことは変わりはありません。

 グローバル化が進展する中で英語によるコミュニケーション能力を身につけることは大変重要なことです。皆様にもこれからの日々の授業を大切にすることにそれぞれの目標に向かって努力を積み重ねて頂きたいと思います』。私からは以上です」

 萩生田光一の以上の発言を纏めると、「大学入試英語成績提供システムは現時点に於いて経済的な状況や居住している地域に関わらず等しく安心して試験を受けられる配慮など、文部科学大臣として自信を持って受験生の皆さんにお勧めできるシステムにはなっていないと判断せざるを得ない」から、延期を決めたとなる。

 要するに経済的な状況や居住している地域に関係しない公平性を獲得する点に於いて準備不足だった。

 だが、萩生田光一はこの公平性欠如を一旦は「自分の身の丈に合わせて」と、そう要望することでたいした問題ではないとした。だから、城井崇の「政府内に延期論があると報道にあるが」の問に対して「文科省としては英語成績提供システムについては高等学校、大学関係者の合意に基づいた方針によるものであり、受験生がこの実習を念頭に既に準備を進めていきてることから受験生等の不安や懸念を一つ一つ解消し、2020年度からの円滑な実施に向けて全力で取り組んでいきたいというふうに考えております」、あるいは「文科省としては全く、その議論(延期論)には組みしていない」と答弁することができた。

 萩生田光一は、自身では気づかないままに憲法が保障している教育の機会均等に触れることになる受験料が高額となることの経済的な状況から受ける公平性の欠如や試験会場の遠近によって生じる居住している地域から受ける公平性の欠如を重点的に挙げているが、一番大事な公平性の欠如は異なる事業者の英語民間試験を受けることによって一つの大学で英語の試験問題が違ってくることにあるはずだ。

 同じ大学を受験するのに英語の試験に限って違う問題を解かなければならない。そしてそれぞれの民間団体が採点したスコアの提供を受けて、異なる試験問題を解いた回答に対するスコアであるにも関わらず、全てのスコアを同じ水平上に置いて大学は合否を決定する公平性の欠如である。

 公平性の確保を言うなら、少なくとも1つの大学につき1つの同じ英語の問題となる同一大学・同一英語試験問題でなければならないはずだ。いくらでも受験料を出す余裕のある親の経済状況に恵まれている受験生は全ての英語民間試験を試しに受験してみて、難しいか易しいか、あるいは自分の英語知識にマッチしているいないかを見極めることができて、当然、そこに公平性の欠如、あるいは公平性の格差が生じる。

 同一大学・同一英語試験問題でないことの公平性の欠如を問題にする国会質問も、記者会見での記者の質問も、ないように見える。そのような質問があったなら、萩生田光一は延期の理由の一つとしてこの問題を公平性の欠如の一つに加えていただろう。

 もし純粋に「受験生の都合」に合わせた民間英語試験の延期であるなら、同一大学・同一英語試験問題とはなっていないことをこそを解決しなければならない公平性の問題であるはずでありながら、それを抜きにしていること、10月30日の文教委員会では「2020年度からの円滑な実施に向けて全力で取り組んでいきたい」と答弁していながら、2日後の11月1日の記者会見で突如として延期を公表したということは、その記者会見が閣議後のことであることから、閣議で延期するよう、安倍晋三から直々に因果を含ませられた、いわば「政治の都合」に合わせた英語民間試験中止であって、公平性欠如云々は口実に過ぎないだろう。

 「身の丈」発言が実際には抱えている悪質さを暴かれた場合の内閣への打撃を早々に回避する思惑を理由とした延期と見ることもできる。

 「話す・書く」の英語の技能を測る方法としてテレビ会議形式の方法を採用すれば、同一大学・同一英語試験問題の採用が可能となり、県庁や市役所、あるいは都道府県に散在する公立大学の講堂、あるいは教室を試験会場とすることができて、試験会場が遠過ぎるという問題は解決できるだろうし、試験会場の費用も抑えることができるのではないだろうか。

 テレビ会議の機器を既に設置している大学や公共施設も存在しているはずだ。


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