安倍晋三の4年間の「今世紀最高水準の賃上げ」続行から“特に”介護職置き去りの経済界賃上げ要請

2017-11-05 11:32:46 | 政治

 議長が安倍晋三の政府経済財政諮問会議が10月26日(2017年)開かれて、3%の賃上げを経済界に要請した。この賃上げ要請は5年連続となっている。

 安倍晋三の要請によって賃上げが実現していると言うことは裏を返すと、アベノミクスが賃上げに自律的な実効性を持ち得ていない証明としかならないことを示していることになる。当然、安倍晋三が盛んに宣伝していたアベノミクスの好循環は賃上げがその重要な一機能に位置づけられいた関係から、強制という力学によってどうにか動いていたことになり、要請がなくなればたちまち回転にブレーキがかかる好循環を正体としていることになる。

 「経済財政諮問会議」での安倍晋三の発言から、社会保障費と賃上げに触れている箇所を取り上げてみる。      

 安倍晋三安倍内閣では、これまでアベノミクスを進めることで財政健全化に大きな道筋をつけてきました。税収が伸びたことで新規国債発行額を10兆円減らし、また、社会保障費の伸びを3年連続で5千億円以下に抑制するなど歳出削減努力を積み重ねてまいりました。

        ・・・・・・・・・・

 次に賃上げについて議論しました。

 この4年間、今世紀最高水準の賃上げが続いています。また、安倍内閣では、最低賃金をこの4年間で100円引き上げました。パートで働く方々の時給も過去最高となっています。こうした流れを更に力強く持続的なものとしていかなければなりません。

 民間議員からも指摘がありましたが、賃上げはもはや企業に対する社会的要請だといえます。来春の労使交渉においては、生産性革命をしっかり進める中で3%の賃上げが実現するよう期待したい。経済界におかれては前向きな取組を是非ともお願いしたいと思います」――

 「この4年間、今世紀最高水準の賃上げが続いています」と「今世紀」という形容詞をつけて、かつてない特段の事実であることを誇っているが、いくら「今世紀最高水準の賃上げ」だとしても、「今世紀最高水準」どころか、遥か低水準の個人消費を最終結果としているようでは「今世紀最高水準の賃上げ」は何ら意味を持たないことになるにも関わらず、安倍晋三は相変わらず不都合な事実には触れない。

 個人消費が活発な動きを見せないから、5年も連続の賃上げ要請となっていると言うことでもあるはずだ。

 4年間連続の「今世紀最高水準の賃上げ」を誇ると同時に「社会保障費の伸びを3年連続で5千億円以下に抑制」したと自らの3年連続の歳出削減努力を素晴らしいこととして誇示している。

 10月26日の政府経済財政諮問会議から8日後の2017年11月3日付のマスコミが介護職員の組合「日本介護クラフトユニオン」の「2017年度就業意識実態調査」待遇調査を紹介していたので、直接アクセスして見た。   

 調査実施期間は3~4月。調査対象は介護施設などで働く組合員計4277人。月給制職員1854人と時給制職員1002人が回答(三つまで回答可)。上位順に見てみる。

                月給制職員     時給制職員
 「働く上での不満」
 
 「ある」             79.7%      60.0%
 「ない」             16.8%      34.1%

 「不満の理由」

 「賃金が安い」           56.3%      50.1%
 「仕事量が多い」          34.9%      21.0%
 「何年経っても賃金が上がらない」30.6%      27.8%
 「昇給システムが明確ではない」 18.2%      14.1%
 「連休が取りにくい」         22.3%       15.3%
 「有給休暇が取れない」       13.8%       8.2%
 
 介護職員の待遇意識には安倍晋三が誇りを持って口にしている「この4年間、今世紀最高水準の賃上げが続いています」という状況は些かも届いていない。

 介護職員の常勤と非常勤(時給)を合わせた平均月収は全産業の平均月収と比較して10万円前後低い21万円前後だと言われている。但し常勤と非常勤(時給)との格差もあるから、常勤の給与はかなり上となる。

 「平成28年度介護従事者処遇状況等調査結果の概要」厚労省)を見てみる。    

 非常勤(時給)の平成28年9月の平均月収96,080円(前年同月比2,400円)
 常勤の平成28年9月の平均月収179,680円(前年同月比2,790円)

 非常勤(時給)の場合、主婦で家計の足しにしているというケースが多いと見られるが、常勤で男子の場合、例え共働きであったとしても、男子個人の平均月収が179,680円は低過ぎる。

 より問題なのは、「連休が取りにくい」、「有給休暇が取れない」という状況は「仕事量が多い」ことと関係していて、「賃金が安い」、「何年経っても賃金が上がらない」といった不十分な賃金状況が原因して人手が集まらない、あるいは勤めても、離職者が多いことの悪循環としてある悪条件の数々であって、これらの悪条件が人間としての扱いを満足に与えていない職場環境にある、あるいは生活環境にあるということであろう。

 “特に”介護職員のこのような賃金格差・待遇格差を見ると、安倍晋三が言っている「この4年間、今世紀最高水準の賃上げが続いています」という状況から介護職を完璧に置き去りにしていることになる。

 “特に”と引用符を付けて強調したのは介護職にとどまらずに大企業従業員と中小企業職員の間、あるいは正規従業員と非正規従業員の間の賃金格差が厳然と存在していて、置き去りにされているのは介護職だけではないからだ。

 格差自体が、様々な政策で手を打っているように見えるが、それら政策が実効性を持たずに社会的弱者を置き去りにすることによって成り立つ。「この4年間、今世紀最高水準の賃上げが続いている」賃上げ状況に反して個人消費が活発にならない経済状況にあるということそれ自体が上に挙げたようにアベノミクスの格差を受けて置き去りにされている階級群が多く存在するということの証明でもあるはずだ。

 当然、「社会保障費の伸びを3年連続で5千億円以下に抑制」という歳出削減にしても社会的弱者置き去りの構造を持つことになる。2017年5月26日に成立・2018年4月施行の改正介護保険関連法は単身340万円以上、夫婦463万円以上の年収者の介護の自己負担3割引き上げを方針としていて、一見、高額所得者に対する負担増に見えるが、自己負担3割に耐えられる収入階層であって、人口比率の高い多くの中小所得層が介護や通院の機会を減らしている状況は本質的には社会的弱者置き去りであることに変わりはない。

 そして経済界が安倍晋三の賃上げ要請に応じたとしても、「4年間」そうであったように、今後共置き去りは続くだろう。格差の置き去りである。 

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