安倍晋三は「衆院解散は全く考えていない」と夏の参院選と同時に衆院選を行うことを否定している。だが、自民党の与党内でさえ、同日選挙の可能性の噂が絶えない。
1月9日、二階派の親分であり、親分に相応しい風貌の自民党の二階総務会長が和歌山市で記者団に答えている。
二階俊博「(衆参同日選挙を)参議院選挙が有利になると思って主張している人もいるし、憲法問題を含めた諸問題を、国民に理解してもらうチャンスだとして、いっぺんにやったらよいという声もある。政権幹部が、同時選挙をしたいと思っていることは間違いない。
(但し)私は反対だ。選挙の最中に災害が発生したら、どうするのか」(NHK NEWS WEB)
ご存知のように2014年4月1日に消費税を5%から8%に増税以後、主として円安と3%分増税による生活必需品の値上がりよって実質賃金がマイナスの影響を受けて、個人消費が全体的に振るわなかったことなどからGDPは企業業績の勢いから見て、さしたる伸びを見せていない。
そこで安倍晋三は2014年11月21日に衆議院解散を行った2014年11月18日の首相官邸記者会見で同時に2015年10月1日の消費税8%から10%への引き上げの2017年4月1日への延期を宣言し、その是非の民意を問うとして戦った2014年12月14日施行の衆院選挙で自民党は大勝している。
増税延期の理由を次のように述べている。
安倍晋三「現時点では、3%分の消費税率引き上げが個人消費を押し下げる大きな重石となっています。本年4月の消費税率3%引き上げに続き、来年10月から2%引き上げることは個人消費を再び押し下げ、デフレ脱却も危うくなると判断いたしました」――
この発言は2017年4月1日の消費税10%増税を控えたここに来て中国と世界の景気減速が伝えられ、特に中国の株の値下がりを受けてその影響が日本の株価に連動する方向を取っていることと円高圧力となって現れている経済全体への悪影響によって生きていることになる。
但し同記者会見で再延期はないと明確に約束している。
安倍晋三「来年10月の引き上げを18カ月延期し、そして18カ月後、さらに延期するのではないかといった声があります。再び延期することはない。ここで皆さんにはっきりとそう断言いたします。平成29年4月の引き上げについては、景気判断条項を付すことなく確実に実施いたします。3年間、3本の矢をさらに前に進めることにより、必ずやその経済状況をつくり出すことができる。私はそう決意しています」――
尤も後で条件をつけている。
2015年9月24日の自民党両院議員総会後の「1億総活躍社会」発表の自民党総裁としての安倍晋三記者会見
安倍晋三「今お話があった消費税の引き上げについてだが、再来年の4月の10%への引き上げについては、世界に冠たる社会保障制度を次の世代に引き渡していくという責任を果たしていかなければならなえいません。そして市場や国際社会の信認を確保するため、リーマン・ショックのようなことが起こらない限り、予定通り実施していくことは既に今まで申し上げてきている通りでございまして、その考え方に変わりはありません。その段階で10%に引き上げていくことができる、そういう経済状況をつくっていく考えでございます」――
今年2016年1月6日午後の衆院本会議でも同じ趣旨の発言をしてることがマスコミ報道で分かる。
安倍晋三「リーマン・ショックや大震災のような重大な事態が発生しない限り、確実に実施する」(時事ドットコム)――
だがである、中国や世界の景気減速に加えて2017年4月1日の消費税10%増税が「個人消費を再び押し下げ、デフレ脱却も危うくする」直近の状況を色濃い既視感として蘇らせて立ち塞がらない保証はないし、当然、再延期の理由として生かすこともできる。
残るはこのような理由づけの増税再延期と「リーマン・ショックや大震災のような重大な事態が発生しない限り、確実に実施する」、再延期はしないとした公約との整合性である。
20年近く続いたと安倍晋三が言っている日本のデフレが元の状態に逆戻りして、20年近くが25年、30年と続いて日本経済と世界に於ける日本の地位が最悪の状況で低迷した場合は「リーマン・ショックや大震災のような重大な事態」に相当すると理由づけることも十分に可能であって、そうすることによって再延期しないとした公約との整合性を保つことができる。
ただでさえパッとしない、海外からも終焉が囁かれている、元々体力・創造性共に持たなかったアベノミクスが中国や世界の景気減速や消費税10%増税によってトドメを刺されてからでは、例え参院選には間に合っても、同日選を行わなかった場合、行わなかったことが後の祭りとして衆院選に襲いかからない保証はないことを想定していなわけではないだろうことも、同日選に走る有力な根拠となる。
もしアベノミクスが日本経済活性化と社会活性化に十分に力を発していたなら、例え中国や世界の景気減速に悪影響を受けたとしても、外部要因に過ぎないと逃げることができるが、格差拡大の負の面が大きくクローズアップされるだけで、大企業活性化は実現させているものの、日本の社会活性化とは裏腹の一般国民の生活状況となっていて、外部要因だけでは逃げることはできないことも、内閣支持率を一応保っている間にと同日選へと向かわせる衝動として否定できない。