先ずはカネのかからない選挙制度から
禁止されているにも関わらず小沢民主党代表の資金管理団体が西松建設からの企業献金と知りつつダミー会社を通じて受取っていた政治資金規正法違反容疑(虚偽記載等)で公設第1秘書の大久保隆規が逮捕され、それを受けた小沢代表の記者会見での説明に満足できないと言う国民が圧倒的に多く、その進退問題ばかりか、自民党閣僚(かつて菅直人民主党代表代行から「道路族のドンは、古賀さんとか二階さんとか、顔を見るからに利権だけは離さない決意が表れている」と言われた内の一人、二階俊博経済産業相)や議員にも西松建設問題が飛び火して企業献金の是非が問われた。
自身の問題もあったからだろう、3月18日に小沢代表が企業・団体献金の全面禁止の方針を打ち出したが、企業からの献金を政党支部等を迂回させて受取り、活用している議員が多くいる都合からに違いない、与野党に賛否の議論を巻き起こした。
麻生首相自身はというと、その態度を3月18日の「時事ドットコム」記事(≪企業献金「悪ではない」=麻生首相≫)が次のように伝えている。
麻生太郎首相は18日午後、民主党の小沢一郎代表が企業・団体献金の全面禁止に前向きな姿勢を示したことに関し、首相官邸で記者団に「企業献金が悪という考えにはくみしない。企業献金の正当性に関しては最高裁判決もきちんと出ている」と述べた。
首相は「民主主義を実行するコストとして、企業献金の仕方についていろいろ各党・各会派でずっと(議論を)やってきた長い歴史の結果が今のものだ」と語った。(了)
前回のブログ記事で扱ったNHKテレビ「総理にきく」(3月15日放送)では取り上げなかったが、テリー伊藤が西松問題を質問している。再度3月15日の「YOMIURI ONLINE」記事(≪「総理にきく」全文…支持率「厳しい評価を頂いている」≫)を参考引用して、見てみる。
【西松建設問題】
――西松建設の問題だが、首相には捜査関係の情報が事前にあったのか。
首相 私のところに、小沢さんの第1秘書の逮捕が事前にテレビに出る前にあったか。ありません。あの日は確か、全く、経済財政諮問会議がやってた最中に逮捕という話が出たと記憶しますけれども、それ終わった後、秘書が言ってきましたんで、それまで全く聞かされておりません。
――なぜいまの時期に捜査なのかという点に関連して、検察当局ではなくて、法務省の当局が国会で説明する必要ではないかという意見もある。
首相 日本の場合は、司法、立法、行政という三権がきちんと独立を維持されていると私自身は、民主主義国家としての基本は確実にこれまで守られていると思っております。従って、このタイミングだからやるべきじゃないという種類の判断を検察がするかというのはなかなか考えにくい。事実、この国は内閣総理大臣、田中角栄ですら逮捕するという国ですから、そういった意味では、今言われたような配慮をしてというような感覚というのは検察には持ち合わせていないと私自身はそんな感じがしますけど。
――(テリー氏)今回の件では麻生さんにガッカリした。もっと怒って良かった。おれが政策で頑張っているのに、何を水を差すんだと。公共事業を受注している企業の企業献金はなくなると、麻生さんから各党各派に発言すべきだった。
首相 これはね、テリーさんなかなか難しいんですよ。法律的には。基本的には。少なくとも、国民にとって民主主義というルールを維持するのにコストの話ですから、企業は企業、個人は個人、団体は団体、それぞれに民主主義というものをきちんと運営するコストを払ってもらわなにゃいかんわけ。
――(テリー氏)そのために国民は政党助成金として払っている。国民は納得しない。
首相 テリーさんね、例えば、小選挙区約40万人。有権者40万人。そのうち10万人にテリー伊藤のパンフレット。郵便代切手80円。印刷代、封書して印刷しますから、それで約10万人かけますと、印刷代、封筒代何とかで最低200円。それでかける80円、足す80円。280円かける10万円、それで2800万円ですよ。あれだけ1枚で。これだけお金がかかるということはテリーさん、それだけかかると思っておられました?
麻生首相の「日本の場合は、司法、立法、行政という三権がきちんと独立を維持されていると・・・・」云々は鳩山由紀夫民主党幹事長の小沢代表公設秘書逮捕を「国策捜査のような雰囲気がする」と言ったことに対する、国策捜査はあり得ないとする趣旨からの発言であろう。
各閣僚も鳩山発言を厳しく批判している。
森法務大臣「検察当局は法と証拠にのっとって、厳正公平かつ不偏不党に、対象が誰であれ、刑事事件として取り上げるべきものを取り上げて対処している。『国策捜査』だというそしりを受けるところは一点もない」(NHK/ 09年3月6日 12時34分)
甘利行政改革担当大臣は「『国策捜査』はありえない。『国策捜査』だと信じている政党が政権を取ったら、相手の党はたまったものではない。検察は政府から独立している捜査機関だ」(同NHK)
河村官房長官も「『国策捜査』ということばが飛び交っているが、『国策捜査』などということは断じてない」(同NHK)
町村信孝前官房長官「誠に常識を欠いた、めちゃくちゃな発言だ。幹事長なり法相が本気で怒らないといけない」(「日経ネット」 /2009年3月5日)
安倍晋三元首相「首相が検事総長を呼んで『やれ』なんてあり得ない」(同「日経ネット」)
山崎拓「ぜひ今国会で本人自ら証人として立って(小沢氏が批判している)検察ファッショと戦われるのが最上の取り組みではないか」(同「日経ネット」)・・・・・
いくら公正・中立を謳っても、検事も人間であり、それなりに政治思想を有し、自らに固有の政治感情に囚われていて、完璧に不偏不党の姿勢を保つことは不可能であろう。更迭された航空自衛隊元空幕長田母神みたいな国家主義者が検察内部に存在しない保証はない。
思い込みや狂信に濃淡の差はあるだろうが、日本の政治を託すことができるのは自由民主党だと頭から唯一絶対の政党と看做し、日教組出身や労働組合出身議員がいて、労働組合の支持を受けている民主党が政権担当した場合、日本をダメにする、三流国家に貶めると危惧、あるいは忌避、あるいは危険視する政治的性向、あるいは国家主義的性向を抱えた検察官は皆無と断言できる保証はないはずだ。
例え検察官本人が極端な国家主義者ではなくても、あるいは極端な保守主義者ではなくても、その傾向を抱えていた場合、外部の国家主義者や保守主義者の意向、もしくは唆し・教唆を受けて元々の国家主義・保守主義の素地に熱い火を焚きつけられ、日本を守るためには自民党政権でなければならない、民主党政権を潰さなければならないとその線に添って自らの権限を悪用しない保証はない。勿論、本人は悪用とは思っていない。あくまでも日本のため、正義のためと信じて行動するだろう。
安倍晋三が相変わらず単細胞らしく言うように「首相が検事総長を呼んで『やれ』」とすることだけが国策捜査ではなく、“国のため”を装った擬似的な国策捜査もあり得るということである。
自らの政治的衝動からの“国のため”だとする個人的な国策捜査というケースも可能性としては存在し得る。
田母神が論文問題で更迭されずに航空自衛隊に居座って、自らの政治的思想・日本を絶対とする国家主義的思想を隊員に植えつけ、自己流の日本民族絶対主義の愛国心でマインドコントロールし、そのシンパを航空自衛隊に広く繁殖させた場合、実行に移すかどうかは別問題として、例え実行に移したとしても成功するか否かも別問題として、自らが抱える自己絶対傾向に触発されてクーデターに向けた衝動を抱えないとは決して言えない。
衝動から実行へと一線を踏み越えた場合、戦闘機は東京上空を旋回・威嚇に使い、ヘリコプターを使って首相官邸・国会議事堂・放送局。皇居の占拠など簡単にできる。
アパグループが募集した論文に田母神一人ではなく、多くの航空自衛員が応募していた問題で参院外交防衛委員会に参考人として招致された田母神は民主党浅尾慶一郎議員の「論文への応募を誰に紹介したのか」という問いに、「航空幕僚監部教育課長にこういうものがあると紹介した。わたしが(応募を)指示したと言われているらしいが、指示したとすれば1000人を超える数が集まる」(≪前空幕長、参考人質疑のポイント詳報≫「時事ドットコム」/2008/11/11-12:30))と同調者が「1000人を超える」と豪語している。
軍隊のような階級社会では影響力は田母神を頂点として、上官から下位階級に向かって底辺を広げる形でピラミッド型に浸透していく。「1000人を超える」中に田母神航空幕僚長の言動に心酔する空幕僚長以下の上官が順次連なっていたとしたら、それぞれの部下は例え「1000人を超える」中に入っていなくても、田母神の命令を受けた上官の強制で仕方なく行動を共にする部下も生じるはずである。航空自衛隊のトップである航空幕僚長の命令だと、従わなければこの場で銃殺に処すと威されれば、命令内容を問題とはせず、命令であることだけを根拠に動く隊員が相当数出てくることまで計算すると、「100人を超える」が2000人、3000人を超える集団に膨らんだとしても、おかしくはあるまい。
こういったことを考えると、小沢代表公設秘書の逮捕が例えどのようなケースでの国策捜査からの動きではなくても、麻生を筆頭に森法相や甘利行改革担当大臣や町村前官房長官、安部元首相のいわば“国策捜査絶対皆無論”、あるいは“検察公正・公平かつ不偏不党論”は単純で甘い希望的観測に過ぎないことが分かる。
麻生太郎の「企業献金が悪という考えにはくみしない」にしても、企業が営利団体である以上、企業献金は投資であり、斡旋利得とまで行かなくても何らかの見返り利益を期待しない企業献金という名の投資は存在しないという本質部分に対する視点を欠いた甘い、単純な性善説となっている。いわば企業献金は斡旋利得誘導装置の性格を抱えてもいると看做すべきを看做すだけの用心深さ(危機管理意識)のカケラも持てない単純さである。
単純・単細胞に仕上がっているから、「小選挙区約40万人。有権者40万人。そのうち10万人にテリー伊藤のパンフレット。郵便代切手80円。印刷代、封書して印刷しますから、それで約10万人かけますと、印刷代、封筒代何とかで最低200円。それでかける80円、足す80円。280円かける10万円、それで2800万円ですよ。あれだけ1枚で。これだけお金がかかるということはテリーさん、それだけかかると思っておられました?」と得意気に計算しているが、選挙の現実を単に表面的になぞるだけのことしかできない。
「2800万円」もかけたパンフレットの中身を詳しく読む人間がどれ程いるかということを考えることもできないからだ。例え内容を読んだとしても、本人の履歴書とどれもこれもテレビ・新聞が既に報道している所属政党の政策を単に羅列・列挙し、そこに“地元”という文字を加えてある似たり寄ったり・横並びのパンフレットに過ぎない。
要するに選挙の慣行行事として行っているパンフレットの配布であろう。それを麻生は得々と「民主主義というルールを維持するコスト」「2800万円」だと言う。
後援会を維持し、後援会員を維持するためにバスを連ねて旅行に連れて行ったり、演劇公演に連れて行ったり、大相撲に連れて行ったり、カネを必要とし、そのためにカネ集めに奔走する。
国会報告会だと講演会を開いて支持者を動員して、何人集まったと自慢し、選挙中は選挙カーを止めて演説する場所に同じく支持者を動員して、さもたくさんの支持を受けているかのように装う。
それらに必要とする経費を「民主主義というルールを維持するコスト」だと言う。
大体が余程のスキャンダルを抱えなければ、有権者は一般的には政治家単位ではなく、政党単位で投票先を決める。無党派層にしても、最終決定要素は政党単位であろう。支持しない政党の立候補者への投票はごく少数派のはずだ。投票する政党はテレビや新聞が報道する党首・党代表の人柄や政党の政策、リーダーシップ如何で決める。世論調査に表れているそれぞれの調査項目と調査数値がそのことを証明している。
要するに、以前自作HPにも書いたことだが、「政治にカネがかかる」と言い、「選挙にカネがかかる」と言って「カネがかかる」ことを常識として、慣行としてきたに過ぎない。
日本という国に於いてはカネが政治的創造性の欠如を補って政治家を成り立たせる代償物となり得ているからだろう。
そのカネの大きな部分を企業が献金という形で補っている。国会議員への登竜門である選挙にカネがなくても立候補でき、不足なく選挙活動できる体制を整えることが、政治家をしてカネの力に依存させない第一歩ではないだろうか。