僕の家内は招き猫が好き

個人的なエッセイ?

「点字再開」 星降る街

2020年07月01日 | Wish


梅雨空。
どんよりとして鬱陶しい季節。

それなのに・・・。
どうしてこんなに暑いんだ。

草取りをしていると、はげ頭がやけどをしてヒリヒリと痛みを感じます。
鏡を見ると、はげ頭が赤くなっていました。

これってやけど?
それとも日焼け?

「頭皮ってデリケートなんだから気を付けないといけないわ」
母ちゃんが笑いをこらえて鏡の中の私に言いました。

そんなはげ頭に、ぬれたタオルを乗せて冷やしていると、電話が鳴りました。
電話の相手は点字の先生でした。

六月二十二日から点字の勉強会が再開されました。
四ヶ月余りの中断でした。

一時はこのまま勉強会は終わってしまうのかと心配していただけに、
ホッとしました。

点字は一日でも練習を怠ると読めなくなる。
そう教えられていました。

だから中断期間も練習を続けていました。

それだけに、待ち望んでいた勉強会の再会でした。

それでも少し不安になります。
うまく読めたらいいのだけど・・・。

マイナス思考。
それが私です。いつものことです。

勉強会当日は、朝からお部屋の掃除をしました。

山のように積み上げられた荷物。
私にとっては宝物。母ちゃんにとってはガラクタ。

人によって呼び名の違う荷物の片づけから始めました。

あっちの荷物は、こっちへ移動。
こっちの荷物は、どこへ移動しようかな?

廊下、玄関、座敷に掃除機の音が響きます。
埃が舞い散り息苦しい。

暑くて死にそうだぜ。

最後に窓を開けて換気をしました。
勉強会の間も扇風機を回して空気の循環に心がけます。

なんて心遣いなんでしょう。
自分をほめてあげたい。

「愚か者」
母ちゃんのつぶやきは無視です。

そして勉強会が始まりました。
教科書は「シャーロック・ホームズ」です。

なつかしい。
左手の人差し指を、そっと点字の上に置きました。

緊張の一瞬。
「ホームズはソファに腰を下ろして、ワトソンを見上げた・・・」

よかった。ちゃんと読めている。
私は点字を声に出した読んでいきました

でも、なにか変です。
集中できない。

頭がクラクラする。
梅雨とはいえ、外は夏の陽射しです。気温はどんどん上がっています。

窓を開けていても部屋は暑い。
そのうえマスクをしています。

点字を声に出して読み上げると息苦しくなります。

マスクを外したい。
でも、それはエチケット違反です。

早く終わってくれ。
私は心の中で叫び続けました。

戦いすんで日が暮れて。
ようやく終わった。

頭痛と安堵の入り混じった感覚。

普段は時間を持て余して、人と会う機会もないから、
こんな時すごく疲れてしまう。

でも、これが充実感ていうのでしょう。
やはり僕は他人と接しなければいけない。

人との触れ合いが自分を救う。

新型コロナによって閉塞感を抱く世の中になりました。
人を疑い、人と接することを避け続ける毎日。

いつの間にか心が病んでいることに、私は気が付きました。

特効薬は見つからない。
でも、そんな時はマスクをして目と目を合わせればそれでいい。

青い空には入道雲。
勉強後のお茶会にはあま~いお菓子。

今日のお菓子はすごくおいしい。
目を輝かせる点字の先生。

これだから僕は点字をやめられない。
熱いお茶をすすりながら、幸せな気持ちで胸が一杯になりました。
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