A Moveable Feast

移動祝祭日。写真とムービーのたのしみ。

玉の井覚え書き(その弐)

2005年05月25日 | 東京23区
Summilux 35mm/F1,4 Asph. 

 玉の井は、永井荷風の「墨東綺譚」一作により、記憶されると云っても過言ではない。
 荷風はいやなジジイであり、小説も好きではないが、さすがに「墨東綺譚」、「断腸亭日乗」、その他幾つかの随筆には、惹かれるものがあり、折に触れて繰り返し読むならいになっている。

 「墨東綺譚」の、賑わい通りで雨に降り込められる描写はあざやかだ。

 突然、「降って来るよ。」と叫びながら、白い上っ張りを着た男が向側のおでん屋らしい暖簾のかげに駆け込むのを見た。・・・・・やがて稲妻が鋭く閃き、ゆるやかな雷の響につれて、ポツリポツリと大きな雨の粒が落ちてきた。あれほど好く晴れていた夕方の天気は、いつの間にか変わってしまったのである。

 その後に続いて、

「旦那、そこまで入れてってよ。」といいさま、傘の下に真っ白な首を突っ込んだ女がある。

 と、お雪との出会いが用意されている。

 そのオトメ街とも賑わい通りとも云われる通りに立ち尽くしてみたり、旧寺島七丁目六十一番安藤まさ方なる、お雪の娼家跡を空しく探し歩いてみたりしたことがある。
 しかしきれいさっぱり何も残っていなかった。街が無くなってしまうということは、一体どういうことなのだろうか。

☆blogランキングに参加中☆
 ♪この頁が気に入ったらクリックお願いします♪



最新の画像もっと見る