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隅田川⑫ 我が国史上最悪の大火の反省から架けられた両国橋 その「明暦の大火」とは

2018-02-06 | 東京探訪・隅田川の橋

 両国橋は、千住大橋に次いで隅田川で2番目に架けられた橋だ。その原因となったのは、1657年に発生、10万人もの死者を出したの明暦の大火。

 (橋本貞秀「東部両国橋夏景色」)

 大火の際逃げようとした江戸の町民たちは、隅田川まで来ても川に阻まれてその先に逃げることが出来ず、災害が極端に大きくなってしまった。
 その反省から、新たに掛けられたのがこの橋だった。

 名称は、川の東側、下総の国と西側、武蔵の国とを結ぶということで、「両国橋」と名付けられた。

 ここで、江戸の歴史を語るうえで最も重大な影響を及ぼした災害である「明暦の大火」について触れておかないと、その後の物語も語れないので、この大火について経緯をたどってみよう。


 地下鉄南北線東大前で降りて、東大のキャンパスを左に見ながら高い街路樹の茂る本郷通りを南に歩く。

 農学部、法文学部と過ぎて、元前田藩の屋敷だった赤門を見ながら本郷3丁目手前の菊坂に入り、4本目の右の坂を上る。

 ここは本妙寺坂。かつてこの坂の上に本妙寺という寺があったことから名付けられた。

 ここが、江戸3大大火の中でも最大の被害をもたらした明暦の大火の発生場所だ。



 1657年(明暦3年)1月18日の昼頃、本郷円山町の本妙寺付近から火の手が上がった。
 その冬は前年11月から2か月以上も雨が降らず、江戸の街はカラカラに乾ききっていた。それに加えてこの日は、折から激しい北西風が吹いていた。 
 火は瞬く間に燃え広がり、湯島から浅草、佃島までも燃やす大火となった。

 19日未明、一旦火は収まったかに見えたが、昼前になって小石川伝通院、さらに匠町からも燃え上がり、今度は江戸城本丸、二の丸、三の丸までも焼き尽くした。
 さらに、同日夕麹町5丁目の町屋からも出火して、結局江戸の三分の二が焼失、死者10万人という我が国最大級、世界でも有数の大惨事となってしまった。

 この大火は、通説では本妙寺が火元となっているが、異説もある。その1つが「火元引き受け説」だ。

 実は、真の火元は本妙寺の隣り、風上にあった屋敷、老中阿部忠秋邸だったというもの。
 老中の家が火元となると、幕府は国中の非難を浴び、威信が大幅に失墜してしまうことから、同寺に火元を引き受けさせた。その根拠としては、本来火元となれば厳罰が課せられるはずだが、寺に対しては一切おとがめなし、3年後には客殿が再建されたうえ、幕府の通達を他の寺院に伝達する役職に任ぜられている。
 さらに、阿部家からは明治に至るまで同寺に供養料が奉納されていた、というものだ。

 また、この大火は「振袖を焼いた火が火災の原因だった」とする「振袖火事」とも呼ばれたが、これも確証はない。

 さらにもっとすごいのが「幕府の放火説」。
 
 当時は江戸幕府が開かれて半世紀。急激に発展膨張した江戸の町は無秩序に都市化されてしまい、老中松平信綱は都市改造を企画したものの、どうにも手の付けられない状態になってしまっていた。
 その難題を一挙に解決する非常手段は、一旦町を平らにしてしまうことだった。

 ⓵実際この大火後、城内にあった御三家の屋敷を城外に移したほか、多くの大名の屋敷替えを実行、防火用地を確保した。
 ➁また、寺院群も一気に隅田川の東側や浅草地区に大移転。さらに道路拡張、広小路設置など、その後の江戸の都市地図の骨格を形成する大改革を実現することが出来た。

 ただ、江戸城本丸焼失(その後現在に至るまで再建されず)を始めとした被害の大きさからして、「幕府陰謀説」の妥当性は見いだせないようだ。

 ともかく、この大火を機に変わったものを、そのほか見てみると、➂浅草は寺院群のほか吉原も移転して繁華街に生まれ変わった⓸両国橋の設置⓹回向院の建設などが挙げられる。

 さて、本妙寺は今どうなっているのか。

 実は本妙寺は1910年に巣鴨5丁目に移転している。

 寺に行くと、本堂の横に明暦の大火への供養塔が立っている。本郷にあったものをそのまま移したものだ。同時に本郷にあった墓もそっくり移転したため、江戸時代の名士の墓もここで見つけることが出来る。

 その1つ、遠山の金さんこと遠山金四郎の墓はここにあった。




 

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