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新イタリアの誘惑

ヨーロッパ・イタリアを中心とした芸術、風景。時々日本。

心ふるえる風景 パリ編㊳ モンパルナスのカフェで モディリアニの若き妻ジャンヌの視線を感じた

2025-02-01 | 心ふるえる風景 パリ編

 モンパルナスの地下鉄ヴァヴァン駅前に カフェ「ラ・ロトンド」がある

 このカフェは1903年開業以来 多くの文化人や芸術家たちの集まる店となり

 毎夜 芸術論を論じる空間となった

 

 無名の画家だったモディリアニは ここにきては店のナプキンに客の似顔絵を描き

 それを売っては 食事と酒代を工面していた

 日本からやってきた藤田嗣治は カウンターにモデルを上げてダンスに興じることもあった

 他にもエコール・ド・パリの画家たちが 常に席を占めていた

 パスキン ローランサン シャガールなど・・・

 

 少し前の時代には 北部のモンマルトルが若き芸術家たちの拠点だったが

 家賃の高騰や地下鉄南北線開通によって 来やすくなったモンパルナスが新しい拠点となった

 

 セーヌ川左岸に宿を取った時 朝食は予約せず毎朝散歩がてらサンジェルマン地区を通って

 「ロトンド」でクロック・ムッシューの朝食を楽しんだ

 店内は現在もモディリアニの作品が 何点も飾られており

 ふと目を上げると モデルであり彼の妻であったジャンヌと目が合う

 そんな格別な雰囲気の中で モディリア二の画集を開く時間は

 極上の満足を 東洋の旅人にもたらしてくれるものだった

 

 

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心ふるえる風景 パリ編㊲ セルジュ・ゲンズブール 伝説の歌手の家が改装され 一般公開された

2025-01-28 | 心ふるえる風景 パリ編

 セーヌ川左岸 カルーゼル橋からほんの少し南に行ったところにこの家はあった

 フランスのカリスマ的歌手で俳優でもあった セルジュ・ゲンズブールの自宅

 彼はヒット曲を世に出すとともに センセーショナルな言動で

 何度も人々の話題となった 伝説的な人物だ

 

 その彼がジェーン・バーキンと親密になった翌年

 1969年から二人で暮らし始め 死去する1991年まで過ごしたのがこの建物

 彼を慕うファンたちが 壁面に二人の似顔絵を描いたり

 「愛しています」などのメッセージを書き込んだり

 その内容は 数日見ないうちに新しく変更されていたりするほどだ

 ある年 私はこの家から数百メートルという場所のホテルに滞在したため

 一日に何度もこの家の前を通り 壁に見入るファンたちの姿を見つける毎日だった

 

 つい最近知ったことだが この家が2023年に「ゲンズブールの家」として

 広く一般公開されたということだ

 娘のシャルロットの手で整備され 愛煙した煙草ジタンの吸い殻で一杯の灰皿や

 愛用した楽器 レコードなど想い出がぎっしり詰まった内容になっているという

 ああ もう一度訪れてみたいなあ・・・

 

 

 

 

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心ふるえる風景 パリ編㊱ パリの墓地 小雨模様の中 ショパンは花束に囲まれて永遠の眠りについていた

2025-01-25 | 心ふるえる風景 パリ編

しばらく中断していた「心ふるえる風景」を再開します。

 ピアノの詩人フレデリック・ショパンは1831年、21歳でパリに移り

 39歳で病死するまでの18年間のほとんどをパリで過ごした

 従って彼の遺骸は パリの墓地に埋葬されている ペール・ラシェーズ墓地

 彼の墓は 墓地の中央入口からほど近い場所にあった

 墓石の上部には うつむく少女の像があり 

 石碑の中央にショパンの横顔と名前が刻まれている

 墓前には花束が絶えず 私が訪れた時も何人もの参拝者の姿があった

 

 パリ中心部のマドレーヌ聖堂で行われた葬儀には 3千人もが集まったといわれる

 その際 彼の心臓は故国ポーランドに戻されたが

 こちらの墓の遺体の上には 故国の土が撒かれたという

 

 墓の前にたたずんでいると どこからともなく彼の遺作「ノクターン20番」の調べが

 地面から湧き上がってくるような 幻想にとらわれる気がした

 一時期彼とジョルジュ・サンドが暮らした場所にある ロマン派美術館には

 彼の左手の「デスハンド」が保存されている

 あの繊細なメロディを紡ぎ出した天才の手は 

 意外にもというべきか 当然というべきか

 節々の関節が目立つ 力強いフォルムのまま残されていた

 

 

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心ふるえる風景 パリ編㉟ 大都会の建築群のかなた 荘厳に沈みゆくパリの夕陽

2024-10-29 | 心ふるえる風景 パリ編

 ある日の夕刻 モンパルナスタワーに上った

 1972年に完成したこの超高層ビルは 高さ210mとパリでは飛び抜けて高い

 ここで大都会の夕陽を見てみたい と思いついたためだ

 

 海に沈む夕陽は 旅先で何度も目にしてきた

 しかし都市の建築群のかなたに 沈んでゆく夕陽の姿を

 何の障害物もなしに 見続けることはなかなかない

 それがこのタワーからは 可能だと思ったからだ

 

 展望台に上ると パリの街が一望できる

 モンパルナスの丘の上に立つ サクレクール聖堂も

 普段は見上げてきたが ここだと見下ろす角度に眺められてしまう

 

 そのうちすき間なく建て込んだビル群が 次第に夕闇の中に沈んでゆき

 眩しく輝いていた太陽が 刻々と朱色の球となって地平線に近づく

 さっきまであれほど強い光を発していた球体が

 もうまるでとろけるかのように 暗色の色彩に変化し

 周囲の空を焦がしながら 静寂の中に没して行く

 

 高みから見る都会の日没 それがこんなにも荘厳なものだとは

 思いもよらなかった

 そして海の日没と違って この瞬間の時刻を過ぎると 

 都会には喧騒の夜が幕を開けることも 改めて思い起こす時でもある 

 

 

 

 

 

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心ふるえる風景 パリ編㉞ セーヌ河岸で「呼吸するビル」に出会った

2024-10-26 | 心ふるえる風景 パリ編

 セーヌ河岸シュリー橋近くに 全面ガラス張りの近代的ビルが建っている

 アラブ世界研究所で 10階建てのスマートな建物だ

 このビルには 他では見られない特別な装置がある

 

 名付けて「呼吸するビル」

 広い壁面全体に張られたガラス窓が 差し込む陽の光に合わせて

 自動的に開いたり閉じたりするという システムが組み込まれているのだ

 

 仕組みを説明すると 窓の裏側に光電管が設置されていて

 日光が当たる場所は カメラの絞りのように窓が閉じられ

 影の部分は 窓が開くというものだ

 これによって室内の光量は一定に保たれ 中の人たちは快適なオフィス生活ができるわけだ

 建物内に入って 窓の裏側(室内側)からみると こんな具合だ

 ただ単に丸い穴があるだけでなく 他にもひし形六角形八角形など

 さらに風車のような形もあり 大小さまざまに変化している

  

 それが日光の当たり具合で まるで自由自在に変化してゆく様は

 いつまでも見飽きない芸術作品に 出会ったような気分だった

 

  設計者のジャン・ヌーヴェルはフランス人建築家で

 建築界のノーベル賞といわれる プリッカー賞を受賞している

 

 

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