日々是好日日記

心にうつりゆくよしなしごとを<思う存分>書きつくればあやしうこそものぐるほしけれ

「ニンゲンは毒だ」と思った?鯨の話

2021年06月18日 07時32分10秒 | 政治
 「米国で11日、ザトウクジラにのみ込まれたものの生還したロブスター漁師が、その驚くべき体験を語った。その主人公は、マイケル・パッカード(Michael Packard)さん。『閉じたクジラの口の中に30~40秒ほど入っていた。クジラは水面に上がり、私を吐き出した』とフェイスブック(Facebook)に書き込んだ。『ザトウクジラが私を食べようとした』『 ひどくけがをしたが、骨は折れていない』」(2021/06/12 AFP=時事)
 いやはやモノ凄い経験をした人がいるものだ! それにしてもこの鯨、どうしてこの人を吐き出したのだろう。不味かったのか?、「人間は毒だ!」と思ったのか??、それとも???
 同じように、人が食われる話が落語の名作「夏の医者」に出てくる。夏の暑い真盛り、山奥の村のお年寄りが畑で倒れた。村には医者がいない。孝行息子は8里半も離れた隣村のお医者を呼びに山を駆け下る。やっとのおもいで医者に会うと、お医者は草取りが終わるまでそこで涼んでいろと動じない。それでも仕事が片付くと、「病人は何を食べたかな?、うん?、チシャを食べた!? うんうん、それがいけない! 夏のチシャは腹へ障る。では食あたりの薬を用意してでかけよう」と腰を上げてくれた。
 山道の方が早く着けるからという医者の言に従って二人は山道を真っ直ぐに登って疲労困憊。山頂で一休み涼しい風にあたって生き返った気分も束の間、突如あたりが真っ暗、視界はゼロになってしまった。
 「こりゃ大変じゃ!。この山には昔からウワバミが棲んでいるとは聞いていたが、どうやらわしらはその腹の中に呑まれてしまったようだわい」と医者。「おいおい、お前にあずけておいた薬箱をこっちへ寄こせ」。中から「大黄」を手探りでみつけた先生、これをあたり一面に撒き散らした。とみる間にウワバミは苦しみ出し、七転八倒のたうち回っ高と思うと、やがて臭い匂いにブーっという大音響と共に二人は尻からひり出されてしまった。その臭いこと!
 小川で体を洗い匂いをとってから病人を診た先生、「これは暑気負けだ。いい薬を持ってきたから進ぜよう。おい、薬箱を寄こせ」という。ところが息子の方はあの必死の渦中に薬箱をウワバミの腹中に忘れてきたことに気がついた。「仕方がない、わしがもう一度ウワバミに呑んでもらって腹の中から薬箱を取ってこよう」と、先生またもと来た峠に上ってみると、ウワバミは息も絶えだえ横になって唸っている。
 「おいおいウワバミさんよ、わしはおまえさんの腹中に忘れ物をしてきたので、もう一度わしを呑んでもらえまいかい?」と頼むと、ウワバミは力なく首を横に振って応えた。
 「いや御免こうむる。なにしろ夏のイシャは腹へ障る!」。
 冒頭新聞記事のザトウクジラ、「夏の漁師は腹に障る」と言ったかどうか? 一説によると鯨の喉は意外と狭くて巨漢の漁師を呑み込めなかったのだろうと専門家の意見が載っていた。クワバラ!クワバラ!