日々是好日日記

心にうつりゆくよしなしごとを<思う存分>書きつくればあやしうこそものぐるほしけれ

尾身氏に「御用学者」への名誉挽回のチャンス

2021年06月08日 07時19分26秒 | 政治
 天海大僧正(1536?-1643)といえば安土桃山時代から江戸時代初期にかけて天台宗の大僧正にして、なによりも征夷大将軍徳川家康の側近として、江戸幕府初期の朝廷政策・宗教政策に深く関与した、いわゆる元祖「御用学者」列伝中の一大人物である。
 大政治家が生前は言うに及ばず死後迄ついてまわるうさん臭さ、権力を振り回さざるを得ず、その中には必ず政権維持のために為す我田引水の利益独占が有るからに他ならない。
 そういう宿痾を抜きがたく身に付けた政治家に影のように付き従ってその政治家の権威を発揮させる役割を負うのが御用学者の役割である。上記天海和尚は徳川家康が江戸幕府開府にあたって勤めた有能な御用学者であった。
 他にも、日本国中名だたる名庭園の定冠詞になったような夢窓疎石は、足利尊氏に仕え国師の称号を与えられて室町幕府の基礎をつくることに貢献したとされる。夢窓国師にしても天海僧正にしても彼らは君臨する政治家に服従的に仕えているのだが、中には御用学のかたわら天下取りの野望に方針を変えてしまった心得違いもいる。女帝孝謙天皇の御用学を専らとしていた僧道鏡のように男女の関係が嵩じて自らが最高権力を簒奪しようと勘違いをした者もいる。こうなると、もはや御用学者とバカにしてはいられない。
 パンデミック現下の日本政治における御用学の最たるものが政府の「新型コロナウイルス感染症対策分科会」の委員会、なかでもその会長の尾身茂氏であろう。尾身氏は、この国のCOVID-19パンデミック撲滅の征ウィルス大将軍の名目で安倍政権から菅政権と二代の宰相に仕える形で御用学を展開してきたように見えたが、最近になって路線を変えたのか?、はたまた学者の良心が状況に耐え難くなったのか?、最高権力者内閣総理大臣のザレ言に真っ向から反対とは言わないまでも、オリ・パラ東京大会の今夏強行実施を企む菅内閣の「方針」には真っ向から反し、「御用学」を放棄しまったように見える。
 この間、名称や位置づけなどに多少の変更はあったが、氏が主宰?してきた一連の会議体ははかばかしい「途・道」を指し示すことも無く、ずるずるとCOVID-19の跋扈を許してきた。「彼を知り己を知らば百戦危うからず」(孫氏)、科学者なら当然やるべきウィルスの市中感染状況の把握のためのPCR検査を早期に徹底的に行い敵の在り処を探知し、これを包囲して叩くという当然の方途を採らなかった。かくていまだに神出鬼没する敵の在り処や企てが皆目分かっていない。分からないままに外国産ワクチンに依存して国民皆接種の無差別防空壕入りの無芸に終わることになった。そのどん詰まりに至って、オリ・パラ決行を主張する菅政権の玉砕政策に「異」を唱えなければならなくなったのである。
 政権からは「自由研究」と揶揄されているが、反面「御用学者」のレッテルをはがす絶好の機会ではある。筆者は、ひとり尾身氏の名誉挽回を期待する。