現場知略

株式会社自動車情報センター、白柳孝夫の取材メモです。

エコカー補助金の消化情況と財布の紐

2012年07月30日 09時13分54秒 | 新車販売

景況判断は数字より皮膚感覚に寄るものが多く、地域により差がある。
さしあたり今年のゴールデン・ウィークまでは、皆さん、黙っていたが「こんなことあるのかな」と思う程、景気が良かった。
しかし、GWが過ぎると・・・・あれ、おかしいな?と言う感じなんだが・・・そちらはどうかね?と地方から電話があった。

GW以降となると、考えられるのは消費税率アップを決める法案がが衆議院を通ったということだ。
あの法案は附則が着いていて、来年の秋に、その時の政権が景気を判断して実行するか延期するかを決めることになっているが、テレビや新聞は、その部分を伝えてない。そのため、消費者の財布の紐が急に固くなったのか?
新車販売ではエコカー補助金の申請ベースが7月から鈍化しているらしい。そのため8月末で打ち止めが予想されていたが、9月上旬にずれ込む・・かも知れない。
エコカー補助金・・打ち止め間近・・・の駆け込み需要も弱い。気分が暗いのだ。
これでは消費税率アップの駆け込み需要も期待できそうも無い。

 


トヨタのエリア販売戦略

2010年12月20日 20時52分14秒 | 新車販売

トヨタ自動車は来年から関東、中部、近畿など全国ロック別の地域戦略を担当する
エリア統括部長を新たに置き、4チャネルをまたいだ営業施策展開を目指すという。

トヨタの場合、トヨタ、トヨペット、カローラ、ネッツ各店営業本部の地区担当員が各チャネルの営業施策を受け持ってきた。
メーカーから販売会社の営業店舗に至る縦の流れを重視したものだ。
「トヨタの敵はトヨタ」・・・といわれるように、
各地域でトヨタ、トヨペット、カローラ、ネッツが競争していたのである。

この地区担当員を残しつつ、チャネル間を横断する専門員を置くという。
トヨタの販売力は、この地区担当員が優秀だからであるが、これを残しつつ、
地区全体を見る担当者を置くというのは「過渡期」の処遇であろう。

この話を聞いて日産自動車が地区販売体制を採用した1990年代初頭のことを思い出した。
日産はチャネル別の販売体制を、一挙に特別の販売体制に変革した。
その後に来たのは、チャネルの統合、販売会社の合併、営業所のリストラ、そしてメーカーの販売車種の削減である。

トヨタも同じ道を行くのだろうか?
確かにトヨタの車種は「多すぎて何だか分からない」といわれる。
「売れない多くの車種より、売れる少数の車種を」との声もある。
ハイブリッド車「プリウス」は4チャネル併売車となり、これが販売台数を伸ばしたことも事実である。
日産に続き、マツダ、三菱、そすてホンダも、すでに複数チャネルを解消し、現在は1チャネルに集約した。
トヨタだけが、独自路線を取り、また、これが成功していたのであるが、今後は同じ道を進むのか?
これは自動車整備や補修部品販売(共販チャネル)にも関係する戦略転換であるため、注目し推移を見守りたいと思う。


エコカー補助金制度終了の影響は?

2010年10月04日 01時41分48秒 | 新車販売

9月の新車販売台数は、登録車合計 が対前年比4.1%減の30万8663台。
軽自動車 が同4.6%増の13万3291台となった。
登録車では、小型乗用車が12.2%減少しているが、普通乗用車 、普通トラック 、小型トラック はプラスである。
軽自動車もプラスであるから、減少したのは小型乗用車 とバス だけである。

小型乗用車の大幅減は、エコカー補助金制度の終了に伴うものだ。
この制度は車齢13年以上の、古い車両を新型の低燃費車、次世代自動車に乗り換えると、補助金が出るスクラップ・インセンティブである。
古いクルマを早くスクラップにすることで補助金が出るため、全国の自動車解体工場は、ディーラーから大量の車が、処理に出されていた。
ところが補助金が終了すると、その動きはピッタリと止まり、古い車両は解体屋に行かずに中古車市場に流出することになった。

多少は古くても、まだ売れるということだ。
すでに、8月からその影響が出ていて、同月の中古車販売 は対前年比7.8%と、
今年初めてのプラスとなった。なんとも現金な話である。

このように見てくると、エコカー補助金が終了して、全ての自動車販売が奈落に落ちるということではなさそうだ。

参考⇒9月のブランド別新車販売台数概況

エコカー補助金があったために、あまり売れなかった軽自動車、
ハイブリッド車以外の、普通のガソリン乗用車、そして中古車の販売は上向きになっている。

問題は10月の小型乗用車の落ち込みが、どの程度か?と言うことだ。
6月、7月、8月と需要を先食いしているのは事実なので、10月はさらに落ち込んでも不思議ではない。

落ち込みが大きければ、需要の先食い分が消化され回復も早くなるだろう。
谷深ければ、山高しである。

 

 


トヨタ、軽自動車市場に参入

2010年09月28日 02時04分18秒 | 新車販売

9/28付日本経済新聞朝刊一面トップは、トヨタの軽自動車参入記事であった。
日産は2002年にスズキから軽自動車のOEM供給を受け、この市場に参入したが当時、トヨタは動かなかった。
軽自動車はグループ会社のダイハツに任せる方針であった。

しかし、今回は違った。
トヨタはダイハツから軽自動車のOEM供給を受け、軽自動車市場に参入する。
2011年秋以降、3車種をめどに随時導入を予定しており、
販売台数は
年間6万台(3車種導入時)を想定している。

販売店は、全国カローラ店・ネッツ店のほか、一部、軽市場の比率の高い地域においては、トヨタ店・トヨペット店での扱いも予定している。

なお、2009年の軽自動車メーカー別のシェア(乗用車及びトラック)は以下の通りである。


エコカー補助金、ついに終わる

2010年09月10日 02時08分18秒 | 新車販売

8月の自動車販売は日米ともに異変があった。
米国の自動車販売は対前年比21%の大幅減である。

http://www.autoinfoc.com/hanbai/sekaihanbai/h-sekaihanbai-8.html  

これは2009年に実施された米国の新車購入補助政策が8月で終了したからである。
古い燃費の悪いクルマを廃車にして、一定の燃費基準を満たした新しいクルマに買い換えると、
政府から補助金が出るというもので、欧州ではスクラップ・インセンティブと呼ばれた施策である。

日本のエコカー補助金も、車齢13年以上のクルマを廃車にして、
新車に乗り換えると補助金を積み増す仕組みなので、これとも似ている。

ただ、米国の施策が欧州や日本と異なるのは、直ぐに止めてしまったことである。
米国では7月末に補助金をスタートさせ、11月頃までは続ける予定だった。
ところが申し込みが殺到して、8月で財源が底をついてしまった。
財源を追加する話もあったが、早々と、あっけなく止めてしまったのである。

何故、止めたのか?
私は「旺盛な需要があることが分かったから」だと思っている。
需要の無いものは、売ることが出来ない。
もう、商売替えをするしかない。

しかし、補助金が出れば・・・すなわち安ければ爆発的に売れるということなら、
商品そのものには旺盛な需要があるということだ。
需要があると分かれば、それを掘り起こすのは、メーカーと販売店の商売である。
補助金が終了したら、確かに9月以降の販売が激減した。
しかし、12月には前年を上回り、その後も7月までは前年よりは売れている。

http://www.autoinfoc.com/hanbai/sekaihanbai/h-sekaihanbai-7.html

一方、日本市場の8月は新車販売は大きく伸びた。
国内登録乗用車の販売台数は対前年比49%の増である。

http://www.autoinfoc.com/hanbai/kokunaihanbai/h-kokunaihanbai-12.html  

補助金が、いよいよ終わるというので、ディーラーが盆休み返上で販売に取り組んだ成果でもある。
9月以降は販売はダウンするであろう。
しかし、クルマに対する需要が旺盛なのは、8月の販売で分かった。
一度、落ち込んでも、やがて必ず販売は上向くはずである。
自動車メーカーは、補助金終了後に照準を合わせて新型車を投入する計画だし、
外国者メーカーの一部は、政府に代わりメーカーが補助金を用意するという。

いよいよ秋の商戦がはじまる。


日産が輸入車のトップブランドに

2010年08月05日 20時05分33秒 | 新車販売

7月のブランド別輸入車販売台数は、日産が5514台とトップに躍り出た。
2位はVWの4874台、3位はBMWの2677台である。

http://www.autoinfoc.com/yunyusya/kokunai/yn-kokunai-9.html

日本の輸入車販売は、VW、BMW、メルセデス、アウディの4ブランドが圧倒的に強く、
この順位は長期間、変わらなかったが、ついに異変がやってきた。

7月13日より発売された日産マーチは、同社のタイ工場で生産し、日本向けに輸出される。
タイにとっては外貨を稼ぐ輸出車であり、日本にとっては輸入車である。

新型マーチは100万円を切る価格設定と、低燃費が受け7月末には受注が1万台を超えた。

この調子だと、輸入車のトップブランドは、当分の間は日産になりそうだ


タイ製「マーチ」がやってきた

2010年07月14日 17時54分44秒 | 新車販売

あらゆる製品が、海外の日系工場からの逆輸入品となるなかで、自動車だけは国産を貫いていた。
逆輸入車もあるにはあるが、日本市場への浸透はイマイチであった。

http://www.autoinfoc.com/yunyusya/kokunai/yn-kokunai-3.html 

しかし、昨日より発売となった日産自動車の新型「マーチ」はタイ製である。
マーチには、派生車種も多いから、これが成功すると「量産車は逆輸入車」というパターンが定着するかも知れ無い。
「マーチ」は1982年の初代発売以来、国内外で累計565万台を販売してきた。
4代目となる新型マーチは燃費も26.0km/Lを実現とのこと。
全車「平成22年度燃費基準+25%」を達成。
国土交通省の「平成17年基準排出ガス75%低減レベル」認定とあわせて、
「環境対応車普及促進税制」による減税措置に適合し、
自動車取得税と自動車重量税が75%減税される。

この低燃費はアイドリング・ストップ装置により実現される。
このアイドリングストップは、つねに車両の状態をモニターして
積極的にエンジンを停止させる設定とすることで、26.0km/Lの低燃費を実現している。
また、アイドリングストップ作動中にドライバーがステアリングを進行方向に切り始めるとエンジンが再始動したり、
ブレーキペダルを踏む力によってアイドリングストップを制御したりすることで、
ドライバーの意図に沿った違和感のない自然な運転を可能としている。

販売目標台数: 4,000台/月
価格は約100万円~140万円。



政府がインセンティブを払う構造

2010年07月07日 21時58分00秒 | 新車販売

昔から自動車の販売にはインセンティブが付き物であった。
ライバルメーカーと競合した時、ディーラーで10万円、20万円規模の値引きを条件に出す。これはメーカーが支払う販売報奨金(インセンティブ)が原資である。

しかし、これは正常の状態ではない。
当時、メーカーの地区担当員と話すと「インセンティブ依存の販売体制は異状である」という認識である。
「では、何故に止めないのか?」と問うと「ライバルメーカーが止めないからである」との回答だ。
当時は、販売正常化にために業界横断で、様々な話合いがなされた。
「インセンティブで値引きだけの販売になってはまずいからね」
「営業マンの販売力が落ちてしまう」
「車の性能を説明し、ユーザーにその価値を評価して頂き販売するのがディーラーの役割でしょ」というような話合いがなされた。

海外がバブル経済に踊っていた2003年以降は、この事情が少し変わってきた。
「メーカーは環境対応技術の開発に注力するので、インセンティブも、もうあまり出せんと言っている」
「工場は海外からの注文が殺到しフル稼働だ」
「注文者の住所・氏名を言わないと、車は回せんといっている。もう、激安新古車で釣る商売はできん」・・・てな話が、販売現場では囁かれていた。
それでも、インセンティブはディーラーの利益の25%程度はあった(乗用車の場合)。
そして、今は政府がインセンティブを払う時代となっている。
でも、そのインセンティブも秋になると終わる。
そこで、自動車業界は秋以降の販売を心配している。

JAMAの国内需要見通し2010年度については、日本経済の緩やかな回復が見込まれるが、補助金が年度前半で終了することもあり、四輪車総需要は4,65万台・前年度比95.1 %が見込まれる。
登録車は300万台・前年度比94.3%
軽四輪車は165万千台・前年度比96.4 %

最近、思うことだが自動車に限らず、多くの商品が値引き、破格のオマケ付き・・・になった。
これは、政府がインセンティブを払う構造の影響と思われる。

販売力の衰退は深刻である。

 


三菱自動車の「10年10万Km特別保証延長」

2010年06月10日 14時50分38秒 | 新車販売

三菱自動車は、6月より、全国の販売会社と一体となって
「三菱愛着プロジェクト」をスタートさせた。
このプロジェクトは、以下の3つから構成されている。

①国内メーカー初の「最長10年10万Km特別保証延長」

②10年の保有を想定し、経年劣化のリフレッシュメニューや車内外の改装・助手席ムービングシート等の機能追加を品揃えした「リフォームサービス」

③キーレスエントリーキー電池交換無料サービスなど特典を盛り込んだ「愛着クーポン」

この中で、注目されるのが「最長10年または10万Km特別保証延長」
従来、5年または10万kmとしていた特別保証を、最長10年または10万kmまで延長するものだが、
三菱販売会社(含登録販売店)での保証延長点検(24ヶ月定期点検相当)の実施が条件となる。
2回目の車検を三菱のディーラーで受け、この時に「保証延長点検」を受けると保証期間が延長される仕組みである。
まさに、文字通りの「顧客の囲い込み」である。

<保証内容と保証期間>
一般保証 3年/6万kmは変更なし
特別保証 は従来の5年/10万kmを最長10年/10万km に延長。
なお、特別保証対象部品は、以下の機構の構成部品の中で三菱自動車が指定した部品である。

 

エンジン機構
動力伝達機構
ステアリング機構
ブレーキ機構(軽除く)
サスペンション機構
排出ガス浄化機構
電子制御機構
乗員保護機構
※除く、各パッキン、ガスケット、オイルシール、Oリング、コーションプレート、ドレインプラグ、
 オイルフィラキャップ、パイプ、各種ホース、ブーツ、グロメット、ブッシュ、各種センサー類、
各種リレー類、重要機能を持たないカバー及びその取付ボルト、ナット等

※EV車駆動用バッテリーは5年/10万Km保証とする


需要が回復したら市場は変わっているか???(1)

2009年11月19日 14時54分44秒 | 新車販売

豊田章男新社長の就任記者会見から、トヨタが海外市場をどう見ているかを分析する。
北米市場については、以下のように話している。
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北米は、現在、市場が急速に縮小していますが、2億5千万台もの保有、
あるいは、今後も人口が増加してくることを考えれば、市場はいずれ回復してくると確信しております。
ただ、その時は、これまでのような大型車中心の市場構造とは、中味が変わってくると思います。
今後市場の変化をしっかり捉え、慎重に検討していかなければなりません。
とは言え、これまで、海外戦略の柱として、トヨタの成長を支えてきた北米が極めて重要な市場であることには、変わりはありません。
その中で「自立化」を一層推進し、これまで以上に現地に根ざし、北米社会の一員として、北米のお客様に喜んでいただけるクルマづくりを行ってまいります。
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米国は自動車が無いと生活できない国である。
以前は、大陸横断鉄道があったが、道路網の発展により、鉄道は消えた。
ガソリンが安く、その上に高速道路の無料なので鉄道を利用するより安上がりになる。
日本も、民主党が政権を取れば、高速道路を無料にするという。
これで鉄道の利用率は激減するだろう。
まずはローカルな鉄道から消えていく(モーダルシフトはどうなる?)。
現に高速道路通行料金を一時的に1000円にしただけで、大きな影響が出ているのだから。
(アフターマーケットは、昨秋からETCが品薄になり、今春には品切れが出るほど特需に沸いた)

自動車が無いと生活の出来ない国=米国では自動車は安定して売れる。
なぜなら、自動車は機械であり、いつかは壊れるからである。
米国では車齢10年以上の自動車が全保有台数の40%以上である。
車齢というのは自動車の年齢。新車で販売されて以降の年数だ。

米国の整備工場に行くと車齢15年から20年の自動車が並んでいる。
よく整備されてピカピカの現役である。
街角で見かけるポンコツは車齢25年~30年である。
これらのクルマは当然、そのうち壊れる。
昨年の夏頃から米国の整備工場には入庫が増えている。
また、全米最大の部品販売店チェーン「オートゾーン」は、好決算が伝えられている。
ユーザーは、景気が悪いので「車両を新調するのでなく、部品交換や修理で持たせる」との選択をしている。

でも、限界はある。
北米で商売をしている部品メーカーの幹部に話を聞くと・・・
「秋には我慢の限界が来るんじゃないの?」と、希望的な観測をしていた。
問題なのは新車が本格的に売れ出した時に「従来の大型車中心の市場構造が変わるのか?」という点である。

この話は、日本GMのスタッフと雑談した時にも出てきた。
GMは今、一時的に国有化され、経営的な手術を受けている。
8月までには、バランスシートも綺麗になり、退院する(民間企業としてスタート)予定だが、その時に市場が変わっていれば、極めて厳しい再出発となる。
問題は何一つ、解決されてないからだ。

今回、破綻したGMもクライスラーも、大型車しか品揃えがなかったわけではない。
大型車以外の中型車も小型車も品揃えはしていた。
しかし、大型車しか売れなかったのだ。

中型車や小型車を買うなら日本車を選ぶ。
大型車ならビッグ3の商品を選ぶ。
米国の消費者は、このような選択をしていた。
クライスラーが開発した日本車キラー「ネオン」も売れなかったし、
最初は成功したように思えたGMの新チャネル「サターン」も続かなかった。

今回の破綻で、クライスラーはネオンの後継車(まだ、生産していたのだ)を「不採算部門」としてバッサリとカットした。
その部品を供給していた日本の部品メーカーが悲鳴をあげている。
米国で大型車が売れ続けていたのは理由がある。
需要が回復したら米国市場は変わってしまうのか?

これは、今後の自動車業界の方向性を示す、需要なテーマである(続く)。