現場知略

株式会社自動車情報センター、白柳孝夫の取材メモです。

駅前商店街「丸山食堂」の肖像

2015年03月14日 10時24分03秒 | 自動車整備工場

私が毎日、乗降している東京都内の私鉄駅。
その駅前商店街に出店した飲食店の盛衰は実に激しい。
個人営業の飲食店は1990年代に消え始め、その跡地に全国チェーンのFC店が出店した。
しかし、多くは長く続かないで閉店して、その跡地に別のチェーンのFC店が入る。
その店も、しばらく頑張るのだが、ある日、突然に「閉店のお知らせ」が貼り出され、静かに消えさる。
しばらくすると工事が始まり、また別のチェーンのFC店が入る。
これだけ盛衰が激しい中で、1980年頃から30年以上、生き残っている店がある。
間口一間半のカウンターだけの定食屋である。
全国チェーンのFC店のような、お洒落な外観では全くない。
殆どの人が気付かずに通り過ぎてしまうのではないかと思うような、しみじみ地味な外観である。
いったいどんな客が入るのか?
このような定食屋を好む実質本位の顧客層が確実にあり、その固定客だけで長年、続いている。
宣伝も、キャンペーンもやったことがない。
それでも、新規の顧客はやってくるし、古い顧客は移転とか死去で、去っていく。
新しい顧客の増える数と、古い顧客の減る数が、不思議と同じなので、いつも適当に空いている。

古くから続いている商売の顧客はこのようなものである。
もしも丸山食堂が評判になり店の前に行列が出来たら、まずは従業員を増やさねばならない。
調理人を増強して厨房も改装する必要がある。
すると、採算が合わなくなり、従来通りの商品を提供できなくなる。
ひっそりと、目立たぬように存在することが生き残りの秘訣なのである。

自動車整備工場も長年にわたり、ひっそりと目立たぬように存在している。
工場の外観は全国チェーンの自動車ディーラーやカーショップにように、意匠を凝らしたデザインでは全くない。
「いったい誰が入るんだ」と思われる地味な外観である。
しかし、このような工場を好む実質本位の顧客層(全整備市場の37%程度)が確実にあり、
その固定客だけで長年続いているのである。

この自動車整備工場の地味すぎる佇まいを見て、
これらの工場は必ず滅ぶであろうと言っていた人は1980年代から居たのであるが、
2015年になっても、そのままの佇まいで存在し続けている。

さて、丸山食堂であるが、外観からも親父さん一人で切り盛りしているところからも、
個人経営に雰囲気が濃厚に出ているのであるが、実はチェーンに加盟しているのである。
個人では、豊富なメニューを安価で提供するには苦労する。
食材はノンブランド(会社名・チェーン名が書かれていない)のバンで毎日、届いている。
食材を調理するのは料理人の腕であるが、食材の部分は共同購入・共同配送がおこなわれている。
個人経営の良さを生かしながら、これをサポートするシステムができているのである。


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