現場知略

株式会社自動車情報センター、白柳孝夫の取材メモです。

ナブテスコ、自動車事業を分社化

2009年09月21日 02時06分17秒 | 自動車部品

ナブテスコは12月1日に自動車事業を分社化する。
年内にも自動車関連機器を扱う新会社を全額出資で設立し事業を移管する。
またブレーキなどに用いるアルミ鋳物の内製からも撤退する。

新会社の社名や新社長は未定。山形工場(山形県村山市)とタイ工場は、新会社に引き継ぐ。

同社はナブコと帝人製機が2003年9月に統合して設立された。
ナブコは、旧日本エアブレーキである。
商用車用エアーブレーキでは圧倒的なシェアを持つが、肝心の大型車販売が、究極の不振である。

同社のプレスリリースでは・・・自動車業界は、世界的な需要減速に陥っていますが、自動車カンパニーの主要顧客である商用車業界も昨秋以降、需要が大幅に落ち込み、その回復は当面限定的なものに留まり又、相当の期間を要することが予想されております。

このように売上高の回復が当面限定的なものに留まる環境下においても、収益を安定的に確保するために抜本的な構造改革を取り進めることと致しました。

要するに、当分、アカンと言うことです。

それにしても、日産車のブレーキシリンダーが、西日本出荷がナブコ、東日本出荷ががトキコで、補修部品の注文時に注意が必要だった「旧き良き時代」が懐かしい。

 


インフラ協調型安全運転支援システム実用化へ

2009年09月16日 13時03分57秒 | 安全

長く研究・開発されてきた「インフラ協調型安全運転支援システム」が実用化へ動き出す。

これは官民一体で開発されてきた次世代の安全装置。
簡単に言うと、車と道路が情報交換したり、クルマとクルマが情報交換することで、安全運転の寄与するシステム。 


・高速道路において、見通しの悪いカーブの先にある渋滞や停止車の情報を提供する「前方障害物情報提供」
・本線走行車へ合流車の存在を情報提供し、車両接触事故の防止につなげる「合流支援情報提供」


このシステムで車両側に搭載するのがDSRCユニット。

官民共同研究(2005年2月~)
首都高速公道実証実験(2007年5月~)
「ITS-Safety 2010」(2008) 
等で車両搭載実験が実施されている。

このたびトヨタの開発したDSRCユニットは、カーナビゲーションと連動し、ETCサービスに加え、道路と自車との間で情報を交換し、広域な道路交通情報および安全運転を支援する情報を、画像や音声などでドライバーへ提供する。

近く、新型車に搭載される予定である。
なお、以下のトヨタのサイトで動画が見れる。

http://www2.toyota.co.jp/jp/tech/its/safety/system.html


 


事業用自動車総合安全プラン2009

2009年09月08日 13時01分01秒 | 自動車整備

平成16年をピークに交通事故件数が年々減少し、死者数についても近年着実に減少している。
しかし、事業用自動車については、事故件数・死者数ともに、自家用自動車に比べて減少の歩みが鈍い。
また、酒酔い運転等の社会的影響の大きな事案についても、自家用自動車に比べて減少幅が小さい。 


・長期間にわたり高速道路が通行不能にするタンクローリーの横転・火災事故
・タクシーの死亡事故が増加に転じる
など緊急対策が必要となった。

 そこで、国土交通省は、2008年11月に「事業用自動車に係る総合的安全対策検討委員会」を設置し、ソフト・ハード双方の幅広い観点から総合的な安全対策について、5ヶ月にわたり検討を進めてきた。
こうして、本年3月に「事業用自動車総合安全プラン2009」がまとめられた。
目標を設定して社会的に取り組む内容である。
-------------------------------------------------------------

<事故削減目標の設定>

(目標)
①10年間で死者数半減(平成20年513人を10年後に250人、中間年である5年後には380人)
②10年間で人身事故件数半減(平成20年56,295件を10年後に3万件、中間年である5年後には4万3千件)
③ 飲酒運転ゼロ

<目標達成のため当面講ずべき施策>
(1)安全体質の確立
中小規模事業者の中には未だ安全に対する意識が不十分な者も見られ、業界全体として安全に対する取組を進めることが必要である。
① 安全マネジメントの評価の対象を中小規模事業者にも拡大。
② 講習会の開催等事業者団体による安全マネジメントの浸透のための支援の拡充。
③ メールマガジンの発信等による業界全体での事故情報の共有
④ 映像記録型ドライブレコーダー、デジタル式運行記録計等の活用による運行管理の高度化。
⑤ 労働・社会保険関係法令違反に対する行政処分の強化、

労働・社会保険関係行政機関との連携、運行記録計の義務付けの拡大等による、運転者の労働環境の改善。

(2)コンプライアンスの徹底
自動車運送事業者に対しては特に高いコンプライアンスの徹底が求められる。
加えて、自動車運送事業者がコンプライアンスを徹底するためには、荷主や旅行業者等、発注者サイドの理解や協力のもと、公正な事業環境の醸成に努めることが重要である。
① 監査要員のさらなる増員。
② 労働・社会保険関係法令を含む法令違反に対する行政処分の強化。
③ 被監査事業者の車両移動等による処分逃れを防止するため、事業譲渡先への処分を可能とする等の処分基準の改正、刑事告発の活用等。
④ 重大事故の発生等に関与した発注者の名称等の公表。
⑤点検整備未実施に係る行政処分の強化等による整備管理の徹底。
⑥スピードリミッターの不正改造に係る改造施工者、運送事業者に対する監査の実施。


(3)飲酒運転の根絶
① 点呼時におけるアルコールチェッカーの使用の義務付け
② 飲酒運転に対する行政処分の強化
③ アルコール・インターロック装置の普及。

(4)IT・新技術の活用 

現在開発が進んでいる新技術については、行政による強力なリーダーシップのもと、今後10年間のできる限り早期に本格的な普及を実現すべきである。
① 実用化されたASV技術の普及促進、新たなASV技術の開発
② 衝突被害軽減ブレーキの普及促進とそのための装着義務化の検討
③ 映像記録型ドライブレコーダー、デジタル式運行記録計等の一層の普及促進。

(5)道路交通環境の改善 

① 事故の発生割合が高い区間における交差点改良や歩道の整備、中央帯の設置、信号器改良等
② 通学路における歩道の整備やカラー舗装、防護柵の設置等
③ 生活道路への通過交通が多く、事故の発生割合が高い地区において、生活道路への通過交通を抑制するためのクランクやハンプ等の整備による、歩行者等の安心・安全の確保
④ 防護柵や道路反射鏡等の交通安全施設の適切な維持・管理を実施

--------------------------------------------------------------- 

各地方ブロックごとに「○○地域事業用自動車安全対策会議(仮称)」を設置し地域における施策実施目標の設定、毎年における進捗状況の確認等についてPDCAサイクルに沿って進める。 

以上が概要である。

この中で、私が個人的に注目するのは点検整備未実施に係る行政処分の強化等による整備管理の徹底
1995年の規制緩和の時、「クルマの品質は良くなったのだから、定期点検はユーザーの自己管理に任せるべきだ」との方法で改革が行われた。
この「自己管理」が曲者なのである。
自己管理は、点検をやる時期を自主的に決めるという意味であり「やっても、やらなくても良い」と言う意味ではないのだが、多くは後者に解釈されている。
検査と整備の分離、ユーザー車検に、その要因はないのか?
諸外国の自動車整備工場の規制を調べると、社会的責任のある仕事なので経営者の人格に係わる部分まで評価される。
整備している車両と、整備してない車両は外観から判断できない。
「ちゃんと整備しました」と金を取り、実は整備してなくて、その車両のユーザーが事故を起した場合、整備を担当した整備工場の責任は大きいはずだ。 

日本でも整備工場に対する監査は実に厳しい。
それは当然であるが、ユーザーに対しては野放しである。

ユーザー車検の場合も、ユーザーが自己管理で整備を実施しているのかを評価する制度の導入が必要である。
整備を行わないユーザーには、ユーザー車検を許すべきではない。 

トラックなど「事故を起せば多大な社会的損失を発生させる車両は例外」とアナウンスしても効果は少ない。
車検時にブレーキ関係を全く見ないで、そのまま通し、行政処分されたディーラーまであるのだから。そこまで、点検に対する意識は退化している。
点検整備未実施への罰則強化が必要である。 

さらに「クルマの品質とは関係なく、公道でクルマを走らせる以上、他人に迷惑を掛けないため点検・整備は必ず行う」との意識付けが必要である。