現場知略

株式会社自動車情報センター、白柳孝夫の取材メモです。

自動車整備工場の整備士の給与について

2016年06月02日 02時55分58秒 | 自動車整備工場

昨日、ヤフーのニュースに以下のような記事がでた。
こういう記事は、しばらくすると消えてしまうので、以下引用する。
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自動車ディーラーの工場に整備士として7年務めたという静岡市在住の男性が、その給与明細の画像をツイッターに投稿して、悲惨すぎると話題になっている。
少し前に騒ぎになった保育士や図書館員と同じレベルだと言うのだ。
 「一年目の整備士の給料ですご確認ください。車好きなら整備士になるのやめましょう」。
きっかけは、自動車整備士になったばかりという人が
2016年5月24日に自らの給与明細をアップしたとしてこうツイートしたことだ。

整備士らの間で3000件リツイート

アップ画像では、手取りの月給が14万円強になっていた。
このツイートは整備士らの間で話題になったようで、現在は別のサービス業をしているという冒頭の男性は翌日、「多いほうやな」とツイッターで指摘。
男性は、2015年まで7年間務めたディーラーの工場における自らの明細だとする画像を投稿した。
そこには、手取りで11万円弱の給与が示されていたのだ。

残業なしのときのものだが、ガソリン代を1万円弱引かれたという。
このツイートも大きな反響を呼び、5月30日夕までに3000件ほどリツイートされた。

次々に質問も出て、冒頭の男性は、「整備士は残業が無いと辛いです」「バイトの方がマシですよw」と自虐的につぶやいた。
国家資格の整備士2級も持っているというが、手当は2000円だけだという。

職場では、忙しくなる月末に残業があるものの、月初めに早く帰らされるため、
結局、基本給しか支払われないことになるそうだ。
これだけだと年収100万円強にしかならない。
しかし、年2回のボーナスが1回20万円を超えることもあり、実家暮らしのため、なんとか生活していたと書いていた。
男性は、退職金15万円をもらって、整備士を辞めた。
給与が低いため、仲間も次々に辞めていったという。

ツイッターなどでは、同じ整備士だとする人たちから前出の2人と同様な投稿が寄せられている。
給与明細をアップして、「残業しーひんかったら 11万やで。笑 今月生きてかれへん ( ˊᵕˋ )」と告白する人がいたほか、手取りもバイト以下だとする人は、「残業しなかったら10万切るんだけどw おかしいいなぁ、整備士って国家資格なんじゃないの?」と疑問を投げかけていた。 
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引用中断

この記事は保育士や図書館員など最近、給与が悪いことが評判になった業種と並列して整備士を取り上げているが、
そういう捕らえ方は間違いである。
ここに書かれているのは「自動車ディーラーの工場の整備士」の話であって、独立系の整備工場勤務の整備士の話ではない。

そして・・・世間の常識的には・・・ディーラーのメカニック・・・良い給料
整備工場のメカニック・・・・給料悪い・・・とされてきた。
日整連の「整備白書」のデーターでも、そのようになっている。
記事は、日整連にも取材して確認しているようである。引用再開。
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こうしたネット上の書き込みは、どこまで本当なのだろうか。

整備士を雇う側の整備工場でつくる日本自動車整備振興会連合会は5月30日、J-CASTニュースの取材に事務局長が次のように話した。
“「手取りの月給が10万円ほどというのは、あまりないケースだと思います。9万の加盟事業所のうち2万ほどを調査した統計では、整備士の平均年齢43.5歳で平均年収は375万円ぐらいになっています。しかし、ほかの仕事より給与が低いという話は出ているのは事実で、こちらも様々な人材確保対策を行っています。道路運送車両法の改正で規制が緩和され、異業種からの参入も増えて価格競争が起きていることが背景にあるのではないかと考えています」

 整備士の数は、10年前より半減し、整備工場の約半数で人手不足状態が続いている。若者がきつい仕事を敬遠し、車離れが進んでいることもあるという。
国交省は、整備士の確保・育成に向けた検討会を設置し、4月15日に先進的な取り組みを事業所で共有するなどの対策をまとめた。また、厚労省では、外国人技能実習制度を4月から整備士も対象にするよう変えている。引用終了
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 しかし、このデータの引用も恣意的である。
整備白書では、デイーラー 平均年齢34.3歳 平均給与434万円
          専業整備工場 平均年齢 48.8歳 平均給与 350万円

・・・と明らかに差があるからである。
ここで問題になっているのはディーラーのメカニックの給与なのだから434万円と比較しないといけないのである。

何故に、整備士全体の話にしたいのか?この記事に答えが書いてある。

「また、厚労省では、外国人技能実習制度を4月から整備士も対象にするよう変えている。」

また・・ではなく、これが書きたいのでしょう?
保育士をはじめとして、お役人様が外国人労働者を入れたい業種については
「給料が安いのだからしょうがないでしょ」キャンペーンをやっているからだ。
しかし、業界そのもののイメージが悪くなるので、迷惑な話である。

さて、これからが本題である。

ディーラーのメカニックの給与がそれ程、良くはないのではないか?というのは、噂ではなく実態話としてある。
ディーラーを辞めて整備工場に職を求めて来るメカニックに、面接の時に前の給料を聞くからだ。

実は1995年の規制緩和以降、すでに20年が過ぎており、短時間車検が一般化し、
ディーラーの整備は「高いけど上質な仕上がり」という感じではなくなっているからだ。
そして、国産車メーカーの方針で殆ど整備する所がないハイブリット車や、電気自動車の新車販売比率が増えている。
その結果、整備では利益が取れない環境に変化しているのである。

一方で独立系整備工場の中で短時間、低価格を売りに価格競争を繰り広げている工場はディーラーと同様の運命にある。

しかし、整備技術を磨いて、顧客の声(ニーズ)を聞いて、不具合、故障に対応して来た工場は大丈夫なのである。
私が事務局長をやっているJISPAの会員工場にメカニックの給料を聞いてみた。

30代中盤の油の乗り切ったメカニックの年間給与 470万円
40代前半の工場長レベルの年間給与570万円

そんなに悪くないでしょう。

JISPAは輸入車整備推進協会という名称ではあるが、輸入車だけでなく国産車も、電子的な診断と職人芸により、
上質な仕上がりに整備することを目的に組織されたものである。
これだけの給料が払えるということは、それだけ付加価値の高い、稼げる仕事が入るということだ。

勉強中の整備士の皆さん「まずはディーラーに」就職しないで、JISPAの工場に直行しましょう。


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