現場知略

株式会社自動車情報センター、白柳孝夫の取材メモです。

車載式故障診断装置 情報指針に関するパブコメ結果

2011年03月30日 21時12分36秒 | 故障診断装置

昨年の秋に「車載式故障診断装置に係る情報の取扱指針(案)に関する意見募集」が実施された。(9月24日から10月25日)

スキャンツールに関わる情報公開については
「自動車メーカーはディーラーへの顧客囲い込みを完璧に行うため情報を出さないのではないか?許せん」
「ディーラーと整備工場の情報格差が広がるばかりだ」
と騒がれていたので、多くの意見が寄せられたものと思っていた。

ところが・・・・寄せられた意見は35 個人・団体のみ。
業界の関心(危機感)が高いわりには極めて少なかった。

 
何故なんでしょうか?

気を取り直して・・・・3月2日にパブリックコメントの結果が発表されたので紹介する。

情報開示の範囲

〇リプログラミングに係る情報や、
提供することによりスキャンツールが車両故障等につながる可能性のある機能を有することになる情報についても、
制限なく提供すべき。

<国土交通省の考えかた>
ご意見のとおり、リプログラミング等の機能は、専用外部故障診断装置又は外部故障診断装置開発情報で提供されることとしており、
特に制限を加えておりません。

今回の指針が適切に運用されるよう、努めて参ります。

〇情報提供を行う措置について、排気に係る装置等だけでなく、
エアバッグ、ABS、エンジン制御、かじとり装置、空調装置、パワーウインドー等さらに拡大すべき。

<国土交通省の考えかた>
今回の指針は、欧米の規定を参考に、国際的な整合性の観点から、同程度の内容を定めたいと考えています。
ご意見を頂戴した内容については、引き続き関係者とも相談し、検討して参りたいと考えています。

 〇修正プログラムのバージョン等、現在公開されている修理書の情報について、
あいまいなものがあるため、厳密な情報提供をお願いしたい。

<国土交通省の考えかた>
規定に従って厳密に情報提供が行われる等、今回の指針が適切に運用されるよう、努めて参ります。

〇リプログラミングに係る情報を提供するようにして欲しい。

 <国土交通省の考えかた>
リプログラミングの実施に関する情報は、提供されることとなっており、
ご意見を頂戴した内容が実現するものと考えています。


情報提供する車両の範囲

〇対象車種が乗用車及びGVW3.5t以下の自動車となっているが、
大型車両や電子制御を搭載する全ての車両、EV、HV、PHVを対象とすべき。

 <国土交通省の考えかた>
今回の指針は、欧米の規定を参考に、国際的な整合性の観点から、同程度の内容を定めたいと考えており、
対象をJ―OBDⅡが義務付けられた自動車としています。
ご意見を頂戴した内容については、引き続き関係者とも相談し、検討して参りたいと考えています。

〇本邦における販売台数が2,000台以下であっても輸入車等にあっては、
世界への販売台数が相当量あると思われるので義務付け対象とすべき。
〇年間販売台数については「2,000台以下」ではなく「100台以下」とすべき。

<国土交通省の考えかた>
国内での販売台数が少ない自動車の取扱については、他の法令における取扱や、その費用対効果を踏まえ、
慎重に検討する必要があると考えています。
今後とも、確実に取組みを進めて参りたいと考えております。

汎用スキャンツールの機能

〇汎用ツールにも専用スキャンツールと同程度の機能を持たすべき。
〇必要最低限の機能を有するスキャンツールと、オプション機能を有するスキャンツールの2つを設定すべき。
〇使用方法等の統一された汎用性のあるスキャンツールを開発して欲しい。

 <国土交通省の考えかた>
今回の指針は、欧米の規定を参考に、国際的な整合性の観点から、同程度の内容を定めることとしたいと考えており、
汎用スキャンツールの機能に関しては汎用スキャンツール普及検討会で検討しております。
ご意見を頂戴した内容については、同検討会での参考とさせていただきます。

〇スキャンツールが無くても診断できるようにすべき。

 <国土交通省の考えかた>
自動車の新技術に対応した適切な点検整備の実施体制を確保していくためには、
スキャンツールの活用を促進することが有益と考えています。

〇専用スキャンツールの提供について、技術力等を条件にできるとあるが、条件を付けるべきではない。
また、仮につける場合でも条件は明確にすべき。

<国土交通省の考えかた>
専用外部故障診断装置は取扱に注意を要する機器であることから、
その提供に一定の条件を付けることが適当と考えています。
なお、条件については、明確にする等、今回の指針が適切に運用されるよう、努めて参ります。

 〇専用スキャンツールの提供について、道路運送車両法第78条に定める自動車分解整備事業の「認証」
を受けていることを条件とすべき。

<国土交通省の考えかた>
適切な条件の設定等、今回の指針が適切に運用されるよう、努めて参ります。

 〇専用スキャンツールの提供については、一見、良いと思えますが、
ユーザーの点検整備の依頼を受ける整備専業事業者にとっては、
高価な各々のメーカー専用機を入手する必要があり、絵に描いた餅に過ぎない。

 <国土交通省の考えかた>
今回の指針制定により、専用外部故障診断装置を有償で提供する場合は、適切な価格で行うよう規定しており、
今回の指針が適切に運用されるよう努めて参ります。

その他

〇点検整備情報の提供は、改修等があった場合(排気に係る装置等)その改修後6ヶ月以内に実施とありますが
 環境保全に悪影響を与える恐れがある為改修と同時に提供(可能な限り早期)とするべき。

<国土交通省の考えかた>
今回の指針は、欧米の規定を参考に、国際的な整合性の観点から、同程度の内容を定めたいと考えています。
頂戴したご意見の内容については、自動車製作者等に周知させていただきます。

〇情報提供については、公害防止、安全確保の観点から本来、無償にて提供が望ましいが
開発間接費用等、若干の費用発生は、致し方ないと思われ、なるべく安価な提供となるよう配慮されたい。

 <国土交通省の考えかた>
有償で提供を行う場合は、適切な価格で行うよう規定しており、今回の指針が適切に運用されるよう、努めて参ります。

〇OBDの規格に関する意見(8件)
〇現在提供されている情報や機器の問題点に対する指摘(8件)
〇車検時の検査や、整備工場の認証基準に含める等のスキャンツール活用に係る検討を行うべき(5件)

<国土交通省の考えかた>
いただいたご意見は今後の業務の参考とさせていただきます。


「J―OBDⅡを活用した点検整備に係る情報の取扱指針」の全文

2011年03月17日 19時41分03秒 | 故障診断装置

3月2日に国土交通省より発表された「J―OBDⅡを活用した点検整備に係る情報の取扱指針」の全文

 
(目的)
第一条

この指針は、自動車の装置における情報処理の技術の発達に伴い、
J―OBDⅡを利用して行う自動車の点検及び整備に係る技術上の情報に関し、
自動車製作者等が自動車又はその部分の整備又は改造を行う者等に対して提供すべき内容
及び提供する方法についての指針を定めることにより、
ばい煙、悪臭のあるガス、有毒なガス等の発散防止装置(道路運送車両法(昭和二十六年法律第百八十五号。以下「法」という。)
第四十一条第十二号に規定する装置をいう。以下「排気に係る装置」という。)に関し、
法第四十七条から第四十八条までの規定に基づき自動車の使用者が行う点検及び整備が円滑に実施できる環境の整備を行い、
自動車の安全性の確保及び自動車による公害の防止その他の環境の保全を図ることを目的とする。

(定義)
第二条

この指針における用語の定義は、法第二条に定めるもののほか、次の各号の定めるところによる。

一「自動車製作者等」とは、法第五十七条の二に規定する自動車製作者等をいう。
二「J―OBDⅡ」とは、道路運送車両の保安基準の細目を定める告示(平成十四年国土交通省告示第六百十九号。以下「細目告示」という。)別添四十八Ⅰ・2・に規定された装置をいう。
三「制御装置」とは、自動車の装置を電子的方法により制御する装置をいう。
四「外部故障診断装置」とは、制御装置と接続し、自動車の装置の作動状況を診断又は整備するために使用する外部装置をいう。
五「専用外部故障診断装置」とは、外部故障診断装置のうち、
自動車の製作を業とする者が、自ら製作した自動車において使用するために製作したものをいう。
六「リプログラミング」とは、制御装置のプログラムを書き換えることをいう。
七「整備要領書等」とは、自動車製作者等が、その製作する自動車について、
構造、装置、点検整備方式、配線図等点検及び整備に必要となる技術上の情報を示した書面
(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録を含む。以下同じ。)をいう。
八「故障コード」とは、番号、記号その他の符号であって自動車の故障の状態を識別するためのものをいう。
九「故障診断の履歴情報データ」とは、細目告示別添四十八Ⅲ・7・1に規定する故障診断の履歴情報データをいう。
十「故障時の自動車使用状況データ等」とは、細目告示別添四十八Ⅲ・7・2に規定する故障時の自動車使用状況データ等をいう。
十一「エンジン関連現在情報出力機能」とは、細目告示別添四十八Ⅲ・8・に規定するエンジン関連現在情報出力機能をいう。

 (対象となる自動車)
第三条

この指針は、ガソリン又は液化石油ガスを燃料とする普通自動車又は小型自動車
(二輪自動車(側車付二輪自動車を含む。以下同じ。)を除く。)であって専ら乗用の用に供する
乗車定員十人以下のもの又は車両総重量三・五トン以下のもの並びに軽自動車(二輪自動車を除く。)を対象とする。

ただし、次に掲げる自動車にあっては、この指針によらないことができる。

一一型式当たりの年間販売台数が二千台以下の自動車
二平成二十二年八月三十一日以前に製作されたもの
(輸入された自動車以外の自動車であって平成二十年十月一日以降に指定を受けた型式指定自動車
(平成二十年九月三十日以前に指定を受けた型式指定自動車と種別、用途、車体の外形、原動機の種類及び主要構造、
燃料の種類及び動力用電源装置の種類、動力伝達装置の種類及び主要構造、走行装置の種類及び主要構造、操縦装置
の種類及び主要構造、懸架装置の種類及び主要構造、車枠、軸距、主制動装置の種類並びに排出ガス発散防止装置の仕様が同一であるものは除く。)及び一酸化炭素等発散防止装置指定自動車を除く。)

(点検整備情報等の提供)
第四条

自動車製作者等は、自動車を販売の用に供するときは、当該自動車の販売の開始の日から六月以内に、
整備要領書等(排気に係る装置に係るものに限る。)のほか、
排気に係る装置の点検及び整備をするに当たって必要となる技術上の情報であって次に掲げるもの
(以下「点検整備情報等」という。)を提供するものとする。

一全ての故障コードに関する情報
二車載式故障診断装置の構造及び作動条件に関する情報
三リプログラミングの実施に関する情報
四制御装置の調整に関する情報
五自動車の装置を強制的に作動させるための情報
六その他排気に係る装置の点検及び整備に必要となる情報

2 自動車製作者等は、前項の規定にかかわらず、イモビライザ
(原動機その他運行に必要な装置の機能を電子的な方法により停止させる装置をいう。以下同じ。)
に係る情報を提供してはならない。
ただし、自動車製作者等が、当該情報の提供先その他の関係者の協力を得つつ、
当該情報の安全管理のために必要かつ適切な措置を講じたときは、この限りでない。
3 自動車製作者等は、点検整備情報等をインターネットを通じて提供する場合は、
当該情報を容易に入手することができるよう適切な措置を講ずるものとする。
4 自動車製作者等は、第一項に基づき提供した点検整備情報等の内容に変更があったときは、
その内容を適切に提供するものとする。
5 自動車製作者等は、点検整備情報等の提供に当たって、特定の者に対し、不当な差別的取扱いをしてはならない。
6 自動車製作者等は、点検整備情報等を有償で提供するときは、当該情報を適正な価格で提供するものとする。

(外部故障診断装置開発情報の提供)
第五条

自動車製作者等は、自動車を販売の用に供するときは、外部故障診断装置を開発又は改良するに当たって必要な技術上の情報のうち、排気に係る装置に関する次に掲げるもの(以下「外部故障診断装置開発情報」という。)を提供するものとする。
一次に掲げる事項を外部故障診断装置に表示させるために必要な情報
イ故障コード
ロ故障診断の履歴情報データ
ハ故障時の自動車使用状況データ等
ニエンジン関連現在情報出力機能
二リプログラミングの実施に関する情報
三制御装置の調整に関する情報
四自動車の装置を強制的に作動させるための情報
五その他外部故障診断装置の開発又は改良に当たって必要となる情報

2 前条第四項から第六項までの規定は、外部故障診断装置開発情報の提供について準用する。

(専用外部故障診断装置の提供)
第六条

自動車製作者等は、次に掲げる機能(排気に係る装置に関するものに限る。)を有する専用外部故障診断装置を提供してもよいものとする。
一リプログラミングの実施を可能とする機能
二制御装置の調整を可能とする機能及び自動車の装置を強制的に作動させるための機能のうち、特別の注意を必要とするもの
2 自動車製作者等は、専用外部故障診断装置を提供するに当たっては、提供先の自動車の整備に関する技術的能力等を要件とすることができるものとする。
3 自動車製作者等は、第一項に掲げる専用外部故障診断装置を提供する場合にあっては、前条第一項の規定にかかわらず、次に掲げる情報は、提供をしなくてもよいものとする。
一前条第一項第二号に掲げる情報
二前条第一項第三号及び第四号に掲げる情報のうち、特別の注意を必要とするもの
4 第四条第四項から第六項までの規定は、専用外部故障診断装置の提供について準用する。

(国土交通大臣の確認等)
第七条自動車製作者等は、国土交通大臣に対し、その製作する自動車の型式ごとに、
当該自動車製作者等が行う次に掲げる行為(以下「点検整備情報等の提供等」という。)の状況について、
それぞれこの指針に適合しているかどうかの確認を求めることができる。

一点検整備情報等の提供
二外部故障診断装置開発情報の提供
三第六条第一項に掲げる専用外部故障診断装置の提供
2 前項の確認を受けようとする者は、次に掲げる事項を記載した申請書を国土交通大臣に提出しなければならない。
一氏名又は名称及び住所
二車名、型式及び販売の開始の日
三点検整備情報等の提供等の開始の日
四点検整備情報等の提供等の状況を示す書面
3 第一項の確認は、当該自動車製作者等が行う点検整備情報等の提供等の状況が第四条から第六条までの規定に適合しているかどうか判定することによって行う。
4 国土交通大臣は、第一項の確認をしたときは、当該確認に係る事項を公表するものとする。
5 第一項の確認を受けた者は、次の各号に掲げる場合に該当することとなったときは、その旨を国土交通大臣に届け出なければならない。
一氏名若しくは名称又は住所に変更があったとき。
二点検整備情報等の提供等の状況に変更があったとき。
三点検整備情報等の提供等をやめたとき。
6 国土交通大臣は、前項の規定による届出(同項第三号に係るものを除く。)があったときは、当該届出に係る事項を公表するものとする。
7 国土交通大臣は、次に掲げる場合は、第一項の確認を取り消すことができる。
一点検整備情報等の提供等の状況が第四条から第六条までの規定に適合しなくなったと認めるとき。
二第五項第三号の規定による届出があったとき。
8 国土交通大臣は、前項の規定により確認を取り消したときは、その旨を公表するものとする。
9 国土交通大臣は、自動車製作者等に対し、この指針に適合するよう指導及び助言を行うことができる。

附則
(施行期日等)


第一条この告示は公布の日から施行することとし、平成二十三年四月一日(輸入された自動車にあっては、平成二十五年四月一日)から適用する。ただし、外部故障診断装置開発情報の提供に関する規定(第六条第三項各号に規定する情報の提供に関する規定を除く。)にあっては、平成二十四年四月一日(輸入された自動車にあっては、平成二十六年四月一日)から、外部故障診断装置の提供に関する規定(同項各号に規定する情報の提供に関する規定に限る。)及び専用外部故障診断装置の提供に関する規定にあっては、平成二十五年四月一日(輸入された自動車にあっては、平成二十七年四月一日)から適用するものとする。
2 この告示の規定の適用の際現に販売されている自動車については、当該規定の適用の日を当該自動車の販売の開始の日とみなして当該規定を適用する。

(検討)


第二条国土交通大臣は、この告示の規定の実施状況を勘案し、必要があると認めるときは、
当該規定について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとする。


ゼロスポーツの倒産

2011年03月10日 20時05分00秒 | 電気自動車

ゼロスポーツが日本郵政と、郵便集配用車輌として改造電気自動車1030台を納入する契約をしたニュースは、
アフターマーケットにおける新規ビジネスの可能性という観点からも話題となった。

契約価格は34億7224万円の大型契約だ。

しかし、このような結果になろうとは・・・・


(株)ゼロスポーツは岐阜県に本社を置き、資本金1億8500万円、従業員80名。
1989年創業で1994年に法人改組された。
自動車メーカー向けのカスタムパーツの企画開発、特装電気自動車、ゴルフカートなどの製造、販売を手がけていた。
特に電気自動車の開発に長年の実績があり、中島社長は電気自動車普及協議会の代表幹事でもあった。

しかし、経営の方は、かなり厳しかったようである。
帝国データーバンクのよると、2006年8月期に約12億1900万円あった売上は、
2010年8月期には約5億5300万円まで落ち込んでいる。
不況の影響でカスタマイズ及びドレスアップ用品の市場が急速に縮小した影響も大きい。
こうした中で、郵政事業会社からの電気自動車の大量受注は、起死回生のチャンスであり、
同社は金融機関から運転資金を調達して対応していた。

しかし、生産計画が順調に進まず、2011年1月になって納期遅れを理由に郵便事業会社より契約解除を申し渡されたうえ、
違約金を請求され、金融機関への返済のメドが立たなくなった事から破産申請に至った。
負債は約11億7700万円。
納期の遅れはベース車両をスバルサンバーからダイハツのハイゼットに変更しようとした調整で、
日本郵政側と十分な調整ができなかったことにあるようだ。

内容の変更が契約不履行として日本郵便は契約解除を通告。
違約金の請求などで資金繰りが悪化し、破産申請に至った。