アナベルリー エドガー・アラン・ポー

2005-05-01 22:05:26 | Weblog
酒に溺れた作家として幾人かをピックアップしてこのブログに書いてきましたが、ここに書いた人の他に浴びるほど酒を飲んではいるのだけれども、どうも作品との関係に於いて書きにくく今まで
手をつけないでいた人が居りました。たとえばゴッホなどは完全にアル中だったようなのですが、彼の作品の高貴さはそういう形而下的なことを書くことをためらわせました。
今日ここに書くエドガー・アラン・ポー(1909~1949)もどうもそういう面があるようで書きにくい人の一人ですね。でもアル中もアル中で、留置所に入れられたことさえあるくらいで、けっきょくそれが祟ったためか(真の原因は不明)たったの40歳で世を去っております。
ご存知の通り、ポーの作家としての幅は極めて広いものです。「モルグ街の殺人」などというミステリーを書いたり、ユリイカというタイトルの思想書兼哲学書兼科学書というお
化けのようなものを書いたり、片や「大鴉」というような長編詩を書いたり、何か文才の止めが利かない、という趣のある天才児でした。

ここでは彼の詩の中でも特に人々に愛され愛唱されているアナベルリーを挙げておきます。なおアナベルリーとは彼の幼な妻で従妹であるヴァージニアのことだろうと推察されます。
ポーは27歳の時、周囲の猛反対を押し切って13歳のヴァージニアと結婚しましたが、その後ヴァージニアは早世してしまいます。その後ポーの生活は酒でひどく荒れたものになったと伝えられております。詩「アナベルリー」は亡き妻に寄せる切々たる思いを歌いますが、韻律が非常にきれいで、愛唱するのに良い詩です。また詩としては異例なくらい易しく読めます。

*なお訳はアナベルリー
を借用させていただきました。

ANNABEL LEE

By Edgar A. Poe


IT was many and many ayear ago,
   In a kingdom by the sea,
That a maiden she lived whom you may know
   By the name of ANNABEL LEE;
And this maiden she lived with no other thought
   Than to love and be loved by me.

I was a child and she wa a child .
   In this kingdom by the sea:
But we loved with a love that was more than love --
   I and my ANNABEL LEE;
With a love that the winged seraphs of heaven
   Coveted her and me.

And this was the reason that, long ago,
   In this kingdom by the sea,
A wind blew out of a cloud,chilling
   My beautiful ANNABEL LEE;
So that her high-born kinsman came
   And bore her away from me,
To shut her up in a sepulchre
   In this kingdom by the sea.

The angels, not half so happy in heaven,
   Went envying her and me -
Yes!- that was the reason (as all men know,
   In this kingdom by the sea)
That the wind came out of the cloud by night,
   Chlling and killing my ANNABEL LEE,
But our love it was stronger by far than the love
   Of those who were older than we-
   Of many far wiser than we -
And neither the angels in heaven above,
   Nor the demons down under the sea,
Can ever dissever my soul from the soul
   Of the beautiful ANNABEL LEE.

For the moon never beams, without bringing me dreams
   Of the beautiful ANNABEL LEE;
And the stars never rise , but I feel the bright eyes
   Of the beautiful ANNABEL LEE;
And so, all the night-tide, I lie down by the see
Of my darling - my darling - my life and my bride
   In the sepulchre there by the sea,
   In her tomb by the sounding sea.


      <アナベル・リー>

長いながい年月が経ってしまったけれど、
   海のほとりの王国に、
一人の少女が住んでいて、
   アナベル・リーと呼ばれていたよ。
そして、この少女の想いはたったひとつ、
   僕を愛し僕に愛されること、それだけだった。

僕は子供だったし、彼女も子供だった。
   海のほとりの王国で。
それでも、僕たちはとても愛し合っていたんだ--
   僕と僕のアナベルリーはね。
天国の翼のある天使たちも欲しがっていたよ、
   僕と彼女の愛を。

そう、これが理由なんだ。遠い昔、
   海のほとりの王国で、
雲の間から吹き下ろしてきた風が
   僕のアナベル・リーを凍りつかせた。
そう、彼女の高貴な一族がやって来て、
   僕のところから連れ去ってしまった。
彼女を墓の中に閉じこめるために、
   海のほとりの王国で。

天使たちさえも、僕たちの半分も幸せでなく、
   彼女と僕を妬んでいた-
そうなんだ!-それが理由だった(誰でも知っているように、
   海のほとりの王国で)
雲間から吹き下ろしてきた夜の風が
   僕のアナベル・リーを凍らせ、そして殺した。
でも、僕たちの愛はどんな人の愛よりも強かった、
   僕たちよりも年を重ねた人よりも-
   僕たちよりも賢い人よりも-
そして、天国の天使も、海の底の悪霊も、
決して僕の魂を引き離すことは出来ないのだ。
   美しいアナベル・リーの魂から。 

なぜならば、月の光は僕に夢を運んでくれる、
   美しいアナベル・リーの夢を。
そして、夜空の星は僕に光り輝く瞳を感じさせる、
   美しいアナベル・リーの瞳を。
そう、夜が来るたびに僕はたたずむ、その傍らに、
僕の愛しい-愛しい-僕の命、僕の花嫁の
   海のほとりの墓に、
   鳴り響く海のほとり、彼女の墓に。





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