ブー、ブー、ブー。
また、電話だ…。
ここ数日、電話に怯える日々…。
電話を替えようかとまで思った。
だけど、慎二さんがいる限り、奥さんも電話をすることが出来る…。
何をしても無駄だ…。
着信拒否も出来る…。
だけど、それも、ネガティブな結果になるこもしか想像がつかない…。
「会っていただけませんか?」
「……」
嫌です…と言いたかった。
「主人とあなたが会っていた居酒屋で待ってます」
強引に決められてしまった。
会いに行く。
何を言われても自分が悪い…。
直面しているトラブルは、対峙しない限り解決しない…と思った。
とにかく謝罪して、許しをこうしかない。
「お疲れ!」
慎二さんが笑顔で肩をたたいてきた。
彼もユミさんとの距離の取り方に悩んでいるのがわかる。
『温泉行くの?』『マリエと?』
まったく気にならない…と言ったら嘘になる。
だけど、マリエとの関わりがある限り、奥さんからの電話は続くだろう…。
「慎二さん!…ちょっと話しがあるの!」
二人で、使われていないコピー室へ。
「マリエと付き合っているの?」
「そんなことより、最近の君変だよ。どうして避けるの?」
「そんなこと、どうでもいいの。とにかく、マリエと付き合っているかどうか教えて!」
「付き合ってなんていないよ」
「わかった…。」
本当の事を言うとは思えないけど…、慎二さんの唇の端が少し上がった。
慎二さんが嘘をつく時、誤魔化す時に、唇の端が上がる。
奥さんに会いに行こう…。
つづく。。。