あの頃(スター)18

2020-07-31 07:15:20 | 日記
「あの人は、そんな人じゃないわ。いつも優しくしてくださるいい人よ」

きっと、そのセリフはトラウマになるんじゃないか…と思われるほどリピートされて、OKが出ないまま、解散となってしまった。


そして、次回の稽古でのこと。。。

今日は、そのシーンだけでなく、全体的に流す(稽古する)ことになった。

そして、例のシーンがやってきた。

数人が笑いながら登場しての、このセリフ。

「あの人は、そんな人じゃないわ。いつも優しくしてくださるいい人よ」

「ハイ、次のシーン!」

……ん?OKなの?

演出はソコには何も触れずに次へ…。

あれだけ頑張った部分なのに…。

OKであるならいいや。

だけど、せめてそれならそれで、「OK‼」のひとことが欲しかったなぁ…。頑張った(乗り越えた)彼女の笑顔が見たかったなぁ…。

しかも、今日の彼女の頑張った成果の成功例は、前回も何度も出たよね💦

もう、何が良くて何がダメなのか…わからない…💦

…と、当時は思ってたけど、アレで良かったのかもね…と、今は思う。

そして、ある日突然、姫が来なくなった…💦💦

あの頃(スター)17

2020-07-30 07:40:37 | 日記
セリフに躓いて、迷宮に入り込んでしまった仲間がいた。

何度やり直しをしても、演出がダメ出しをする。

数人の女性たちと登場するシーンなので、自分のミスで何度も何度も他の出演者たちも付き合うことになってしまっていた。

それゆえに、申し訳なさで、さらに追い詰められていく。

「ごめんなさい💦私のせいで💦💦」

「いいよ。いいよ。気にしないで」
「頑張って!」

…と、優しかった共演者たちも、黙ってしまった。

「少し休もう」

演出が休憩を提案した。

少しだけ空気が緩んだが、ダメ出しを言われ続けて追い詰められた彼女は、トイレに駆け込んだ。


ーー休憩も終わり…、また、例のシーンから…。

彼女は泣きはらしたようだ。
目が真っ赤だ。

「さぁ、はじめよう。…セリフを言う彼女だけでいい。」

一緒に笑いながら登場する女の子たちは休憩。(免除された)

それだけでも、彼女には少し肩の荷が降りた。

彼女は緊張で深く息を吸った。

「あの人は、そんな人じゃないわ。いつも優しくしてくださるいい人よ」

「………。」

長い沈黙が続いた。

(いいと思うんだけどなぁ…と、皆思ったんじゃないか…と思う)

「誰か、ちょっとやってみてくれ」

し…ん…として間もなく。

「はい」

姫が手をあげた。

優雅に立ち上がり、所定の位置に着く。
「あの人は、そんな人じゃないわ。いつも優しくしてくださるいい人よ」

「…うん」

(…そりゃ、いいでしょうよ~、姫は追い詰められてもいないし…、新鮮なハズ💦)

「…それじゃ、もう一度、君」

姫はいいとも悪いとも言われず戻ってきた。

そして、再び本役の彼女が所定の位置に着いた。

「あの人は、そんな人じゃないわ。いつも優しく…、優しく…して…くださる……いい人よ…」

ついに彼女は泣き出した。

見ている私たちも、何がダメで何がOKなのか全くわからない。

「今日はもう、これで解散!」

自分が泣き出したために"解散"と言われたと思ったのか、彼女は泣き崩れてしまった。






あの頃(スター)16

2020-07-29 08:10:25 | 日記
ある日の稽古。

役者のひとりが行き詰っていた。

彼女の役柄は、主役の王子を好いている女性の役で、セリフはそんなに多くない。

彼女は素直で真っ直ぐで、悩み出すと、「適度なところで妥協ができない」とことん悩むタイプのように思えた。

彼女は数人の女性たちと笑いながら登場して、「あの人は、そんな人じゃないわ。いつも優しくしてくださるいい人よ」(…たぶん、こんなセリフだったと思います)

最初は、「あの人は、そんな人じゃないわ。いつも……。…いつも…。」

セリフ忘れがきっかけだった…。

「…すみません、もう一度、お願いします」

再び同じところをはじめから…。


ところが、緊張してしまったのか、また、同じところで躓いた。

「…すみません💦もう一度💦」

…そして、また、同じところで躓く。

3度、4度、5度……と、躓く。

迷宮に入ってしまった。

それだけなら彼女自身の問題なのでいいのだけど、演出が参戦してきた。

何度目かのトライでやっとセリフを言い終わった時、

「もう一度!」

…となった。

見ていた皆は、『え~💦せっかくOKテイクなのに~💦』

そしてまた、あらたな迷宮がはじまった。

『え?今のOKじゃないの?』

…という状況でも、演出は、

「もう一度!」

…となる。

彼女はどんどん追い詰められていく。

「あの人は…そんな人じゃないわ。いつも優しくしてくださるいい…」

「ダメ。もう一度」

笑いながら登場するシーンなのに、もう彼女は笑えない。

数人での登場シーンなので、自分のNGテイクのせいで、数人の仲間に何度も何度もやり直しをさせて申し訳ない…という思いが彼女を追い詰めていった。



あの頃(スター)15

2020-07-28 09:57:47 | 日記
「おねえさん、こっち来て~❗」

姫の呼び掛けに、適当に返事をしていたら、

「おねえさ~ん❗」

王子も呼ぶ💦

こちらも聞こえないふりをしていたら、王子が不機嫌そうだ💦


王子の横に憧れのスターさんが居るし、これはご挨拶に行っておこう❗…と、思った。

王子とスターさんの間に座った。

私の意識は憧れのスターさんの方に向いている。

「短い時間ですが、よろしくお願いします」

私は、深く頭を下げた。

「おねえさん、かたい、かたい❗」

「おねえさん、気をつかいすぎ~」

王子と姫が笑う。

「おねえさんって言うの、失礼じゃないかな?」

スターさんが会話に入って来た。

「年齢もここに居るみなさんより、少し年上だから…」

…と、私が笑って言うと、

「仲間でしょ、ここのみんなは。年齢は同じ。おねえさんもおにいさんもいないの」

みんなは黙ってしまった。

『きゃー😆カッコいい~💖』

と、心で叫びました。



あの頃(スター)14

2020-07-27 07:19:40 | 日記
ある日の帰り道。

お酒の場に居た。

『頑張ろう会をしよう!』

…という、王子の呼びかけで、ほとんどの役者が集まった。


王子は相変わらず女性に囲まれて大人気だ。

王子の取り巻きには、珍しくアイドルの姫もいた。

二人とも、ちやほやされ捲りで、ご満悦だ。



私はというと、遠く離れた席で、私に近い年齢の男性役者さんと飲んでいた。

「どうですか?この作品」

唐突に聞かれた。

「いい作品だと思います」

正直、つかみどころの無い作品だと思うけど、そんなこと言えない。


「ねぇねぇ、おねえさんも、こっち来て~!」

姫が声を掛けて来た。

ちょっと面倒だったので、聞こえないふりをすると、

「おねえさん~!こっち来て~!」


今度は、王子のお呼びだ。

…いやだなぁ…。


…女子(しもべ)に囲まれてて、充分ではないか…、こんなオバサンは必要無いのでは?

「はい。」

…と、満面の笑顔で微笑むと、また、年の近い男性役者さんとの会話に戻った。

「ここに来る前も、舞台やってたの?」

「はい、少し…」

「ね、おねえさんも、こっちおいでよ!」


また、王子がお呼びだ。


『…うるさいなぁ…💦』


と、私の心の声が聞こえたのか、王子は黙ってしまった。