旅館30

2023-11-30 10:20:56 | 日記
「何があったの?」

仕事が終わっての夕方に、幹太は徹弥たちに囲まれていた。

「幹太、大丈夫か?」

「え?何が?」

「さっき、物置小屋に倒れていただろ」

「物置小屋?俺が?」

「うん。休憩時間に一人で。梨花が『幹太が物置小屋から帰って来ない!』慌てて知らせてくれたんだよ」

「何言ってるかわからないよ」

「え?覚えてないの?」

「オレは真面目に仕事してたよ」

「……。」

皆、黙ってしまった。

「あ、今日は兄貴と出かけるんだ。じゃな!」

一足先に帰った幹太を見送った3人は、顔を見合わせた。


旅館29

2023-11-25 08:54:39 | 日記
「きゃ!」

夕美は物に躓いた。

「いてっ!」

夕美の足元から起き上がったのは幹太だった。

「幹太!何してんだよ!」

「あれ?寝てた?」

「私が躓いたの。こんな場所に寝てるなんて。休憩時間はとっくに終わってるよ」

「え?こんな時間?!」

「何やってるの?仕事戻らないと!」

「やべ~!」

幹太は急いで仕事に戻った。


旅館28

2023-11-21 10:01:03 | 日記
「帰ったんじゃない?」

「勝手に黙って帰るかな?」

やっと目が暗闇に慣れて来て、物置小屋の景色も見えてきた。

「幹太!…いる?」

徹弥は、とりあえず例の箱の場所に向かった。

「箱…無い…」

「え?無い?」

「きゃ!」

夕美は物に躓いた。


旅館27

2023-11-17 09:57:46 | 日記
「ひとりで勝手に物置小屋に入った…って、どういうことなんだよ」

徹弥と夕美は物置小屋に向かった。

その日は雨模様で、物置小屋の中は一層暗かった。

ゴコゴ…と、重い引戸を開けると、ホコリが舞う。


暗闇に目が慣れるまで時間が掛かる。

ギギッ…ギギッ…、一歩一歩進むと床板が軋む。

「幹太…?」

声が物置小屋の空気に吸い込まれていく。

「幹太…?いる…?」

し…ん…と静まり返る。

旅館26

2023-11-14 09:22:02 | 日記
「幹太がさっきの休憩時間に、物置小屋に行ったの」

梨花が、仕事の合間を盗んで、夕美と徹弥の休憩場所に現れた。

「え?どういうこと?」

「私、止めたんだけど、戻って来ないの」

「え?!どういうこと?!」

「体調悪くなってそのまま帰ったのかな?と思ったんだけど」

「なんで休憩時間に物置小屋になんて…」

「一時間しかないからダメだよ!って言ったんだけど…もしかしたら、まだ物置小屋にいるのかも」

「え?だけど、幹太たちの休憩時間からだいぶ経ってるよ。」

「ごめん、ちょっと物置小屋を見てきてくれる?私、仕事途中だから…」

梨花は話しも途中で、仕事に戻って行った。