旅館13

2023-09-28 09:56:39 | 日記
「何?」

「顔…」

顔を見ると、目が無い…。

「完成途中なんじゃない?」

「これから目だけ画くの?」

「…それにしても、口は画いてあるのに、変だよね。」

「そうだよね」

「あれ?え?これなに?」

人形の顔を覆っていたビニールの中に人形の「手」のパーツが入っていった。

「この子たちの手は…あるよね。誰の?」

「誰の…って…」

夕美は思わず笑ってしまった。



旅館12

2023-09-25 09:21:35 | 日記
「あれ、見て!」


奥の暗闇の中にうっすらと人形が見える。

「あれって、人形?…だよね」

薄暗がりの中に、雛人形のようなものがある。

しかし、三人官女も、五人囃子もいない、お内裏様と、お雛様だけの雛人形だ。ビニール袋を掛けてはあるが、大切に仕舞われている感じではない。

「こんな暗闇にかわいそうだね。しかも、ホコリまみれ…」

梨花が人形を覆っていたビニールを取った。

「え?」

「何?」

「顔…」


旅館11

2023-09-21 10:49:33 | 日記
3人は、『いさみや』の物置小屋へ入っていった。

小屋に入ると白いモヤが立ち込めていて、天井にある小さな明かり取りの窓からスゥッと一本の光のスジが差し込む。

小屋の中は思った以上広くて奥行きもあった。
しかし奥は薄暗くて見えにくい。

「なんか、宝がありそうだな!」

徹弥は楽しそうだ。

「鎌なんて無いよ。鍬ならあるけど」

「鍬でいいよ」

「ねっ!」

奥を覗きに行った梨花が小走りに歩み寄った。

「あれ、見て!」

旅館10

2023-09-18 08:31:00 | 日記
「夕美んちのじいさん、何か知ってんじゃない?」

徹弥が興味津々に夕美に話しをふってきた。

「聞いてみてよ」

「あ…うん。」

「今日も昨日の続きの草刈りを頼むよ。本来の業務じゃないのに、悪いね~」

人の良さそうなオーナーは何度も頭を下げた。


「あ~しんどい!」

梨花は腰を抱えてしゃがみこんだ。

「草刈り鎌が小さい!!草が成長しすぎて手に負えないよ!奥の物置小屋にもっと大きめな鎌ないかな?」

「ちょっと見てみよう」

3人は、『いさみや』の物置小屋へ入っていった。

旅館9

2023-09-14 09:40:27 | 日記
翌日も、草刈りをした。

旅館の裏手は身長と同じくらいの雑草が生えていて、一筋縄ではいかない。夏はやぶ蚊も多く、暑くても長袖を来て作業をする。

「昨日の話し…、事件ってなに?」

梨花は早速聞いてきた。

「『いさみや』の前は民宿らしいんだけど、その前は普通の民家だったんだって」

それは、昨日、父親が言っていた。

「その家は3人家族でさ、ひとり事件に巻き込まれたとか…」

「事件…?!どんな?」

「詳しくはわからない」

「なんだ…わからないのか…」

梨花は期待外れの答えに、ガッカリしてみせた。

「夕美んちのじいさん、何か知ってんじゃない?」

徹弥が興味津々に夕美に話しをふってきた。