長野県諏訪二葉高等学校校長日記 2014・2015

諏訪二葉高校の校長です。校長の視点から学校の様子をお伝えしたいと思います。登校日毎日更新を目指します。ご愛読願います。

6月11日(水)「ほお葉巻き」のこと 2014-057

2014-06-11 06:51:33 | 日記

 5月中旬から実施して参りました先生方との面談の第1回が、ほぼ終了しました。

 前任校に比べ、先生方の人数が約2倍になりましたので、結構時間がかかりました。また、非常勤講師の先生方とも面談も行っています。

 今回は、初回ということもあり、一人50分の時間を面談にあてましたので、様々なことを伺うことができました。先生方、お忙しい中、ありがとうございました。

 さて、先日、地歴公民科の坂口先生が、お手製の「朴葉巻き(ほおばまき)」と「朴葉寿司(ほうばずし)」を、「自宅で作りましたので、一つ召し上がってください」とのことで頂戴しました。ありがとうございました。大変おいしかったです。



     

     左がほお葉寿司で右がほお葉巻き


 「ほお葉巻き」は「つぶあんやこしあんを、米の粉(上新粉)に砂糖を加えて練った皮に入れ、朴の葉で包んでい草でゆわえ、蒸しあげたたもの」です。朴の葉に包んで蒸すことで、とても香り豊かなものになります。朴の葉が採れる5月末から7月下旬ころの季節的な食べ物です。

 さて、この「ほお葉巻き」、木曽地方の名物です。木曽のお菓子屋さんはこの時期限定で、売り出してもいます。軽井沢高校に勤務しているときも、木曽出身の先生が、「実家に戻ったときに、買ってきました」と、お裾分けを頂戴しました。近年では、お菓子屋さんから宅急便で取り寄せることもできるようになりました。

 木曽地方では昔、朴の木の葉に、握り飯を包んだり、「ほおばめし」といって米を朴の葉に包んで蒸したものを保存食として遠出の時の食料としていたようです。朴の葉の独特の風味が染み込んで格別の風味となり、食欲をそそったものだそうです。

 木曽名物の「ほお葉巻き」は、これから発展したものだそうです。

 月遅れの端午の節供の柏餅のかわりとして、作られてもきました。木曽地方には、柏の木が少なかったことも関係しているかもしれません。

 子どものころ、木曽で育った私は、この「ほお葉巻き」が好物でもあります。親戚のおばさんが、作ってくれた「ほお葉巻き」の味が忘れられません。いまだに、実家に宅急便でお手製の「ほお葉巻き」を送ってきてくれます。それぞれ、家によって、味も微妙に異なります。それぞれの家の「秘伝」があると思われます。

 「田植えの時期の中間食として食した」と、亡き母から聞いたこともあります。

 小林教頭先生も、木曽の高校に勤務していたときに、教え子たちが、「おばあさんから、ほおの葉には、殺菌作用がある」と聞いたとか、「つくる家により、味に微妙な違いがあるんですよね」と話してくれました。

 こうした、地域に残る食文化を大切にしたいと思います。また、地域興しの材料になっていることも、忘れてはいけませんね。

 朴の葉には殺菌作用があり、ほお葉巻きの他にも、今回紹介しましたほお葉寿司などにも使われています。

 『長野県史 民俗編 第三巻(二) 中信地方 仕事と行事』(平成元年発行)によりますと、

 木曽福島町(現木曽町)伊谷では、「(五月)節供に、ほおば巻とササマキをこしらえて苗代田に供えた」(369頁)とあり、苗代祭りに「ほうば巻き」を供えたことがわかります。同様に伊谷では、「苗5、6把の上にホーバマキを載せて供えた」(375頁)ことから、田植えの折の神祭りにもほお葉巻きが登場しています。

 さらに、五月節供に関しても、南木曽町三留野では、「四日の夜にはホーバマキかかしわ餅を作って神仏に供え、五日にはチマキを作って供える。田んぼの口にほお葉を立ててカヤで家を作り、よもぎとしょうぶで屋根をふいてほお葉を敷く。朝、重箱に赤飯、尾頭付き(煮干)、かぶとふきの煮物などを入れ、チマキやお神酒とともに主人が供える。家では赤飯を食べる。今はほお葉を立てるだけになった」(546頁)、同じく南木曽町妻籠では、「ホーバマキを作り赤飯やふきの煮物と一緒に田の神に供える」(546頁)、南木曽町向粟畑でも、「ホーバマキを作って田の神に供える」(546頁)と記されています。ホーバマキが単なる「ケ」の食べ物ではなく、神に供える「ハレ」の食物であったことがわかります。この場合の神は、「田の神」です。 

 三岳村(現木曽町)本洞では、「(田植えのときに)ホーバメシをますに入れて田の神に供える。ホーバメシとは豆を入れた炊きたての御飯をほおの葉で包んだものである」(376頁)とあります。田植えじまいにも、大滝村下条では、「残った苗を手でもんでナエヤマを作り、ホーバメシと神酒を供えた」(378頁)とあります。さらに、木祖村田ノ上では、「ほおの葉に米を包んで蒸したホーバメシを作って食べる」(380頁)とあります。以上からわかるように、ホーバマキだけでなく、ホーバメシに関する儀礼的伝承も残っています。

 以上、『長野県史』から、「ほお葉巻き」及び「ほお葉飯」に関する儀礼的な伝承を抜き出してみました。 

  昨日、『長野県史』をはじめとする参考文献を図書館に探しに行き、猿橋図書館司書には、図書館関連の会議の事前準備で忙しいところを、「ほお葉巻き」に関する文献を親切丁寧に探していただきました。ありがとうございました。助かりました。