本日は終日、上伊那農業高校において、標記の会議がありました。
よって、かなり早い時間に諏訪を出ました。有賀峠では、道路の凍結により、車が峠の頂上付近で仰向けになっていました。みなさん。冬の道、気をつけてくださいね。
夕方、学校に戻ってきました。
上伊那農業高校正面玄関
校内では、2学年が、いよいよ来週に迫った修学旅行のしおりを、LHRの時間に読み合わせを行いました。
話は変わり、昨日でほぼ、国公立大学のセンター試験を課さない推薦入試の結果が判明しました。昨日現在で、国公立大学には8名合格しています。最終的な報告は、またの機会にしますね。
今回、非常に難易度の高い大学に挑んだ生徒がいました。進路指導係から、「校長先生も、志望理由書と面接指導をお願いします」と頼まれていましたので、10月上旬から11月下旬まで、感覚的には、ほぼ毎日、その生徒の支援をしていました。
もちろん、この「校長日記」でも書いてきましたように、他の生徒も、面接練習に付き合い、試験までに何度も練習した生徒も何人もいます。
昨日、ネットで確認しましたら、この生徒、合格していました。本人も、校長室に結果を報告に来てくれました。
今だから話しますが、私自身も、この生徒の指導、非常に苦しくもあり、また、楽しくもありました。
頼まれた以上、合格させなければならないというプレッシャーが苦しさであり、日に日に成長していく生徒を見るのは楽しみでありました。
小海高校勤務時代に、毎年、国公立大学に合格者を出すために、該当者の小論文指導を任されていた時と同じ感覚を久しぶりに味わいました。
ちなみに、小海高校は平成8年度から今年度まで、毎年必ず国公立大学に合格者を出している、県下には例をみない地域高校です。
さて、実際の進路指導を考えたときに、本人の希望する学問分野について、まずは聞きますよね。
そのきっかけを、どのように学問研究に結び付けていくのか。その辺のところをどのように、「志望理由書」に記述するのか。そもそも、その前提となる、大学での学問研究とは何なのか。
さまざまなことを、短時間に、本人が吸収していかなければなりません。本人も相当苦しかったと思います。授業で習うことは、覚えればいいのですが、「志望理由書」は自分の考えを自分の言葉で紡ぎ出す作業だからです。
実は、本人が書いたものを、校長住宅に電子メールで送ってもらい、それを添削していました。結構遅い時間に、様々な先生のアドバイスを踏まえて、自宅で書き直したものが、電子メールが送られてきましたので、こちらもその時間にはパソコンの前で待機している状況でした。私が朱書き添削したものを送り返し、翌朝、校長室でさらに解説しながら、本人がさらに精度を高めていくという作業に、結構な時間をかけました。
本人が、専攻分野について、やりたいことを書くためには、関連する書物も読まなくてはなりません。そうした書物を、私自身も購入して読んでみたり、本人と学校図書館で一緒に探したり、こうした作業を進めながら、また、「志望理由書」を主に見てくださっている先生とも連絡を取り合い、何とか、これならいけるだろうというものに仕上がったのは、出願締め切りの前日の夜ということで、夜も営業している郵便局に、担任の先生が投函するという状況であったのです。
「志願理由書」が出来上がったあとも、本人は、2時間の試験時間の中で、膨大な量の課題文を読みこなし、「その要約と、専攻に関連付けた意見を課す」という、その大学の過去の入試問題に類する小論文を、担当の先生とほぼ毎日こなしながら、さらに、面接の精度を上げていく作業もありました。
さらに、面接に備え、専攻分野に関連する書物を何冊か貸し与え、読みこなすようにも指示しました。読んでいないと、面接のときに、奥行きが出ませんから。
今回、面接指導用に購入した本の一部です。この中の何冊かを、生徒に貸していました。
今話題のドラマ「下町ロケット」ではありませんが、まさに、「職人の世界」のような、手作業に類する地道な営みを延々と続けていったわけです。
本人は、あちらこちらの先生のところを回り、「ああでもない、こうでもない」といわれて、相当大変だったと思います。よく頑張りました。
昨日、本人が言うには、「推薦入試に費やした時間の合計は、280時間です」とのことでした。
この大学には、過去にも、何人か推薦入試で合格したことがあり、管理職になる前には、その指導にかかわった経験がありました。
私と同じく、「大学で民俗学を専攻したい」といった生徒には、その生徒の住む集落に伝わる伝統行事を調べさせ、先行論文も読ませて、報告書を活字に仕立て上げ、学会誌に投稿して、実績を積ませて、受験させました。
農学を専攻したいといった生徒は、自宅が野菜の専業農家であったこともあり、「将来、土壌について研究したい」と考えていて、実践面は相当強かったので、あとは、過去何年間分の国公立大学の推薦入試の小論文の問題を、3か月間毎日、担当の生物の先生と解いてました。たまたま、過去問にあった『沈黙の春』の冒頭部分の小論文が出題され、本人も、その部分を読んでいましたので、うまく書けたとのことでした。
家裁調査官になりたいといった希望を持った生徒の場合は、その大学の先生に、犯罪社会学を専門とする先生がいましたので、その先生の著作を買い、一緒に読んだこともありました。
以上、本人が専攻したいという分野によって、学びのスタイルは異なりますので、本人に適するであろう支援方法を考えることが大事だと、私は思うのです。
よって、推薦入試の指導は、教師も生徒も、非常に労力のかかる営みなのです。センター試験の勉強をする時間も犠牲になりますし、万が一、推薦入試に落ちた場合には、少し、苦しくなる場合もあります。今回の場合、センター試験の勉強を280時間できなかったことになりますので。
ただし、推薦入試に臨んだ生徒たちは、口を揃えたかのように、「現代文の成績が上がりました」と言っていましたので、論理的な考え方は身に着いたようです。
今日は、あえて、私の今までの指導の方法の一端を明かしましたが、単に、学業成績が優秀というだけでなく、読書量が豊富で、自分の言葉で、自分の考えを述べられる。自分のやりたいことを、明確に相手に伝えられる。また、記述することができる。そんな生徒が、文系の場合には、推薦入試に向いていると思うのです。理系は、だいたい、教科の口頭試問があるので、少し違うと思います。
2年生の諸君、1年生の諸君の中で、推薦入試を考えている諸君、校長室でお待ちしていますよ。私と今のうちに、大いに語り合おうではありませんか。今からなら、相当なことができますから。
上の新聞記事は、明日のコンサートについての、市民新聞の記事です。