ルーマー・ゴッデン/文 バーバラ・クーニー/絵
掛川恭子/訳 岩波書店
2001年に出されたこの大型絵本は、絵本としてはテキストも多く、
読み応え十分のクリスマス絵本です。
”心から強く願えばその願いはかなえられる、
奇跡は起こりうる” ということが、
孤児アイビーと、クリスマス人形のホリー、小さい女の子がほしい
ジョーンズ夫人の不思議なつながりを通して語られます。
ホリーは、赤いドレスに赤いくつ、緑のペチコートとソックスという
クリスマスカラーのお人形。
ハシバミ色のガラス目は開けたり閉じたりできるし、
陶器の歯は小粒の真珠のようです。
イブまでに買ってもらわないと、クリスマスのおくりものには
ならないことを、昨日出されたばかりのホリーは知りません。
まわりのお人形たちに話を聞く中、アブラカダブラという
大きくて怖くて意地の悪いフクロウは、
ホリーに否定的なことばかり言って聞かせます。
でも、ホリーはあきらめず、クリスマスのおくりものとして
選ばれることをおねがいし続けるのです。
一方、セント・アグネスという孤児院では、
30人の孤児たちが一緒に暮らしていました。
でもクリスマスの3日間は、みな親戚の人と過ごすため、
むかえの人が来たり汽車に乗せられたりしています。
アイビーは、6歳の女の子。
緑色のコートと赤い手袋を持っています。
まさにクリスマスカラーです。
でもこのアイビーと一緒に過ごそうとまねいてくれる親戚は
いません。
アイビーは、「かまわないもん。」といいますが、
胸のおくはからっぽ・・・チクチクさすような痛みが走ります。
最後まで残っていた男の子に、アップルトンにいる
おばあちゃんのうちに行くから平気だと言ってのけますが、
それは、そんな町があるのかどうかわからないまま、
口から出た言葉でした。
おばあちゃんなんていないのはみな知っていることでしたし。
でもなぜか、アップルトンのおばあちゃんちに行くんだと
アイビーは強く思っています。
そして子どもがいないジョーンズさんは、今年はなぜか
クリスマスを祝う気持ちが沸き起こり、むずむずしています。
ツリーを買って飾り物も買って、キャンドルも買って。
帰宅途中でどういうわけか、赤いドレスのお人形ホリーに
目がとまるのです。
でも「きれいなお人形」と少し見入っただけで、
買うことはありませんでした。
このお人形のホリー(ヒイラギ)と孤児アイビー(つた)、
小さな女の子が欲しいジョーンズさんの3人が、
それぞれの願いを強く願った結果!
すべてがかなうラストシーンでは、胸がじーんとしてしまいます。
点だったものが線でつながって、あるべきところにおさまった
・・・というような安堵感。
寒かった心と体が、暖炉と食べ物とで一気にあたたまり
ほぐれていくような安心感です。
たった一つの望みがかなえばそれで十分すぎる幸せ・・・
ふだんすっかり物欲の奴隷と化している自分にとって、
ハッとする真実です。
クーニーの誠実で端整な絵は、ゴッデンのお話の世界を
あますところなく描いていて、本当にステキです。
まさにこのお話にはこの絵という気がします。
読んでいるうちに、アイビーやホリーの胸の痛みを一緒に感じ、
最後には思わず涙してしまう大好きなクリスマス絵本です。
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