あるところに正直村がありました。村の人たちはおとなも子どももみんな正直で、ウソをついたり、人を騙したり、物を取ったりする人は、だれもいませんでした。だから正直村の家には、鍵がついていませんでした。
正直村に学校がありました。学校ですから、テストがあります。テストのとき、試験監督の先生はいません。教室にいるのは、生徒たちだけです。なぜなら、正直村の子どもたちは、みんな正直ですから、テストでズルする人はだれもいないからです。
義男先生がテストの答え合わせをしていました。それがどうも変な感じなのです。生徒たちの答えがあまりにも似ているのです。
最初、義男先生は、自分の造った問題がバレていたのではないかと思いました。でも、そんなはずはありません。義男先生は、自分ひとりでテスト問題を作り、大切にしまっていましたし、またテストのその朝、自分ひとりで印刷しましたから、だれも見ることはできないはずです。
義男先生は、そのことを校長先生に相談しました。
「もしかしたら、生徒たちがカンニングをしているのかもしれない」、校長先生は、そう言いました。
義男先生は自分の生徒たちを疑いたくはありませんでした。「これはきっと、たまたま、そうなっただけでしょう。」義男先生は、校長先生にそう言いました。校長先生は、黙ってうなずいただけでした。
(つづく)
正直村に学校がありました。学校ですから、テストがあります。テストのとき、試験監督の先生はいません。教室にいるのは、生徒たちだけです。なぜなら、正直村の子どもたちは、みんな正直ですから、テストでズルする人はだれもいないからです。
義男先生がテストの答え合わせをしていました。それがどうも変な感じなのです。生徒たちの答えがあまりにも似ているのです。
最初、義男先生は、自分の造った問題がバレていたのではないかと思いました。でも、そんなはずはありません。義男先生は、自分ひとりでテスト問題を作り、大切にしまっていましたし、またテストのその朝、自分ひとりで印刷しましたから、だれも見ることはできないはずです。
義男先生は、そのことを校長先生に相談しました。
「もしかしたら、生徒たちがカンニングをしているのかもしれない」、校長先生は、そう言いました。
義男先生は自分の生徒たちを疑いたくはありませんでした。「これはきっと、たまたま、そうなっただけでしょう。」義男先生は、校長先生にそう言いました。校長先生は、黙ってうなずいただけでした。
(つづく)