ヨナの福音こばなし帳

オリジナルのショート・ストーリー。一週間で一話完結。週末には、そのストーリーから人生の知恵をまじめにウンチクります。

正直村の子どもたち(1)

2008-09-04 | 放蕩息子Part2
あるところに正直村がありました。村の人たちはおとなも子どももみんな正直で、ウソをついたり、人を騙したり、物を取ったりする人は、だれもいませんでした。だから正直村の家には、鍵がついていませんでした。

正直村に学校がありました。学校ですから、テストがあります。テストのとき、試験監督の先生はいません。教室にいるのは、生徒たちだけです。なぜなら、正直村の子どもたちは、みんな正直ですから、テストでズルする人はだれもいないからです。


義男先生がテストの答え合わせをしていました。それがどうも変な感じなのです。生徒たちの答えがあまりにも似ているのです。

最初、義男先生は、自分の造った問題がバレていたのではないかと思いました。でも、そんなはずはありません。義男先生は、自分ひとりでテスト問題を作り、大切にしまっていましたし、またテストのその朝、自分ひとりで印刷しましたから、だれも見ることはできないはずです。

義男先生は、そのことを校長先生に相談しました。

「もしかしたら、生徒たちがカンニングをしているのかもしれない」、校長先生は、そう言いました。

義男先生は自分の生徒たちを疑いたくはありませんでした。「これはきっと、たまたま、そうなっただけでしょう。」義男先生は、校長先生にそう言いました。校長先生は、黙ってうなずいただけでした。

(つづく)