ヨナの福音こばなし帳

オリジナルのショート・ストーリー。一週間で一話完結。週末には、そのストーリーから人生の知恵をまじめにウンチクります。

こすずめピヨの冒険(1)

2007-09-03 | あきこの10円玉/ こすずめピヨの冒険
この数日、ずっと雨が続いていました。こすずめのピヨは、退屈で仕方ありませんでした。だって、せっかく、飛べるようになったのに、どこにも行くことができないからです。

それが、今日は、ぽっかりといい天気です。雨に打たれてうつむいていた葉っぱたちは、きらきらひかって、ご機嫌です。木立の間を抜ける風も、楽しげに、あちこちを揺らしながら、駆け抜けて行きます。

「ボクも、どこかに行きたいな。」

ピヨは、巣から、頭を出して、遠くのほうを眺めました。遠くのほうといっても、ピヨの巣のある木のまわりに、あと何本か木があって、そして、家が並んでいます。それから向こうは、道が曲がっているので、それほど、遠くまで見えるわけではありません。

「あの曲がり角の向こうには、何があるのかな。」

ピヨが、これまで飛んだことがあるのは、木のまわりと、曲がり角の手前まででした。それより向こうには、行ったことがありませんでした。

(つづく)