『名も無く豊かに元気で面白く』

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❝人の変化に遅れ、創業魂が失われ❞変化が遅かった元超優良企業ヨーカドー

2024-09-08 04:25:12 | 日記
イトーヨーカドーは来年2月末までに閉店する33店舗の詳細が判明し、大きな話題となっている。報道によれば、茨城県で唯一の店舗であった竜ヶ崎店や埼玉の西川口店、千葉の姉崎店など、関東近郊圏での閉店も行われる。 
閉店する店舗の中でも、話題を呼んだのが、9月に営業を終える津田沼店だ。
津田沼店は1977年に誕生した。今年で46年目を迎える。
当時、津田沼には「西武津田沼ショッピングセンター」「丸井」「サンぺデック(ダイエー津田沼店)」「長崎屋」等の大型商業施設が多数立地していた。商業的な激戦が繰り広げられるさまは「津田沼戦争」とも呼ばれ、当時は勢いのあったヨーカドーがその戦争に参入した形となる。
しかし、ここに強敵が現れる。津田沼店誕生の4年後に誕生した「ららぽーとTOKYO-BAY」である。津田沼店からはわずか4キロほどで、車で行けば10分かからない距離。津田沼の隣、船橋の臨海エリアに誕生した。ちなみに、元はと言えば、懐かしい人には懐かしい「船橋ヘルスセンター」がある場所だ。

ここは、今でこそ全国に増えた「ららぽーと」の1号店にして、現在でも日本最大級の面積を誇る大ショッピングモール。現在の敷地面積は約171,000平方メートルで、東京ドーム3.6個分。でかすぎる。
とはいえ、ららぽーとTOKYO-BAY、オープン当初は日本に本格的なショッピングモールがなかったこと、ららぽーと自体が初出店だったこともあって、先行きが不安視されていた。なにより、すぐ近くの津田沼は戦争中だ。そんな激戦区にあって、後発の業態がうまくいくはずがない、そう目されていた。
だが、その目論見は見事、外れる。オープン時には4万人が来場し、推定では25万人が来場したらしい。客の勢いは止まらず、このショッピングモールはさらにさらに面積を広げていく。 
こうして津田沼の街は変化を続け、それに合わせて「津田沼戦争」も収束、街の形に合わせるようにして、商業施設も変化していった。 

人間の流行は、わずか数年程度で移り変わっていくのがほとんどだ。それに対し、商業施設などは、すぐに出店できるものでもなく、本部による出店計画や工事などを経て、やっと出来上がる。人々の興味よりも変化のスピードが遅いのだ。もちろん、チェーンストアの入れ替わりも、人々の興味の変化に遅れて生じる。
そして、それらを包み込む街ともなれば、もっともっとその変化は遅い。例えば、渋谷の再開発は2012年から2027年まで、15年がかかっている。
一方で、コロナを経て、人々の変化は以前にも増して早くなっている。リモートワークが前提となり、若者の消費も「モノ消費」から「コト消費」へと変わった。
にもかかわらず、街自体はまだ変化の途中。都心にカフェが足りない問題もまた、こうしたサイクルの問題だと言えるのだ。
これは、津田沼でも同様である。近隣にショッピングモールができたことによって人々の行動パターンが変わり、他の商業施設は変わってきた。
しかし、イトーヨーカドーだけは、その変化のサイクルに乗り遅れてしまったのではないか。改革はしているが、肝心の消費者を見られていない。

イトーヨーカドーの「変化の遅さ」は日本経済新聞の社説でも「遅すぎた経営改革」として語られているぐらいだ。実際、同社の取り組みを見ていると、この「人の変化」に対応する、という意識が希薄なのではないか、と思ってしまうことにたびたび遭遇する。顧客層が高齢者にもかかわらずセルフレジ化を進め、結果、有人レジが大混雑している様子など、そうした例は枚挙にいとまがない。
ただでさえ、「街の変化」「商業施設の変化」「人の変化」はサイクルがバラバラで、とくに商業施設は、人の変化のスピード感に対応しなければならない。普段の努力がなければこの変化に対応することはできないのだ。

津田沼店は、結果として46年という長寿を全うした。
しかし、そこが長寿であることは、むしろ、津田沼店が「変化に対応しなかった」ということを表している。もっともゆっくり進む街の変化にも対応しなかったということなのである。なんという皮肉だろうか。今や、GMSを追いやったショッピングモールが、利益率の低下に苦しんでいる状況であり、決して安泰ではない。事実上の創業者、伊藤雅俊氏が亡くなり、傘下で日本のコンビニの父、セブンイレブンを創業した鈴木敏文氏が失脚し、普通の会社に転落してしまったイトーヨーカドー、人の変化のスピード感に対応しなければ生き残れない見本になってしまいました。


コメント
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