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復興資金を増税で賄うべきかどうかが代表戦争点

2011-08-01 18:42:42 | 植草一秀氏の『知られざる真実』


復興資金を増税で賄うべきかどうかが代表戦争点




震災発生から間もなく5ヵ月の時間が過ぎ去ろうとするのに、菅政権は総合的な復旧復興政策を立案さえしていない。ようやく、復旧・復興政策全体の規模を23兆円とし、当初の5年間の事業規模を19兆円とする方針が示された。
 
 当初の復旧・復興事業を5年間で行うとするこの感覚。官僚主義以外の何者でもない。カフカの『城』を髣髴させるような感覚だ。
 
 被災地の市民は、このような政府の対応をどのような思いで見ていることだろう。いざというときに何もしない政府なら、国民は税を納める意思を失うだろう。本当は主権者国民が怒り、行動を起こさねばならないのだが、そのような行動力も失ってしまっているようにも見える。
 
 復旧・復興対策は1年間を目標に実行すべきものであるだろう。方針が決まり、具体策が決定されるなら、その事業に5年間もの時間を費やす意味は無い。かかる費用が同じで、物理的に実行が可能なら、前倒しで事業を実施することを妨げる理由は存在しないはずだ。
 
 財源も復興債で調達するのであれば、短期間に事業資金全体を調達することも可能である。こんなことを5年もかけて実行しようとするところに、恐るべき官僚体質が表れている。
 
 19兆円の事業規模のうち、6.1兆円はすでに第一次、第二次補正予算で手当て済みである。とはいえ、第一次補正予算のうち、2.5兆円は国民年金の国庫負担引き上げ資金の流用で、その財源はまだ確定していない。
 
 この2.5兆円と19兆円のうちの残額12.9兆円の合計15.4兆円をどのように調達するのかが当面の焦点である。菅内閣はである。子ども手当の見直しと高速道路無料化の中止で2.4兆円を調達し、10.5兆円を復興債で賄う方針を示した。
 
 残る2.5兆円は政府資産売却で対応しようということだろう。10.5兆円の復興債の償還資金の大半である10.3兆円を復興増税で賄う方針が示された。5年間の時限増税で10.3兆円を調達しようというものである。



財務省の発想は貧困であり姑息であり浅薄である。
 
 問題を三つ提示する。
 
 第一は、政府が膨大な資産を保有していることだ。震災復旧・復興対策は、一度限りの政府支出である。税制の変更は経済活動に様々な影響を与える。一度増税して、それをまた元に戻す。そのたびに経済活動は攪乱される。一度限りの政府支出であるなら、政府資産を取り崩して、その資金を事業に投入することが望ましい。
 
 とりわけ、政府の対外資産の取り崩しは、国内の経済活動に与える影響が極めて軽微であるである。政府は簡単に円資金に転換できるドル建ての金融資産を大量に保有している。この外貨準備資金を取り崩して復旧・復興資金に充当することがもっとも適切である。
 
 第二に、政府はJTやNTT、あるいは東京メトロなどの株式を大量保有している。これらの資産を売却すべきことは当然である。財務省はJTをいまだに食いものにして、会長ポストなどを天下りポストとして握って離さない。このような利権行動を排除するためにもJT株式の全面売却などが求められている。
 
 財務省の利権を温存して、一般国民に負担を押し付ける姑息な発想が問題なのだ。日本の財政事情が悪化していることは、多くの国民が認識している。国民は賢明だから、本当に負担の増加が必要なら、それに応じる考えを持っているだろう。しかし、その大前提は、官僚機構が利権を根絶することである。官僚利権が温存されたままでの国民負担増加は主権者国民が拒絶する。
 
 第三は、日本経済の現状を踏まえたときに、増税案などが検討されようがないことだ。大量出血の瀕死の大事故に直面した日本経済を集中治療室に入れて治療しようというのだ。集中治療室での治療なら、短期で集中的に治療を行うのが筋だが、菅政権はだらだら対応を続け、治療を放棄してきた。
 
 そのうえで、ようやく治療を行うかと思いきや、大手術を行うための輸血用の血液を、なんと患者から血を抜き取って行うというのだ。手術のための輸血用血液を患者から血を抜き取って実行しようという医者がどこにいるというのだ。



復旧・復興政策で創設されるインフラ資産は、今後、長期にわたって効用を発揮するものである。耐用期間は、一般公共事業の場合、60年とされている。したがって、一般公共事業を実施するための財源は、60年かけて調達すればよいこととされている。これが建設国債の考え方である。
 
 10.5兆円の復興債を発行するなら、この復興債の償還は、60年かけて行えばよいのである。5年間の間に増税で調達すべき理由は存在しない。無理に短期間で税金による償還を行えば、経済に強い下方圧力を与えてしまう。
 
 これらの諸点を考慮すれば、復旧・復興事業は政府保有の外貨準備資産を日本円に換金して充当するべきであると考える。外貨準備資金は政府が日銀から借り入れた資金で保有されている。この資産がドル建て国債から国内のインフラ資産に切り替わる。
 
 時間の経過に伴い、実物資産の時価評価は低下するから、日銀資産の裏付けの劣化を防止するために、政府は復旧・復興政策への投下資金の60分の1を、毎年度積み立てて、日銀資金の裏付け劣化を回避する対応を取っても良いと思われる。



民主党内には本来の民主党の主張を堅持する「正統民主党」と、米官業政電の利権複合体=悪徳ペンタゴンの一味である「悪徳民主党」の二つの勢力が同居している。現在の執行部は「悪徳民主党」に占拠されている。
 
「悪徳民主党」は復興増税を目論んでいる。「正統民主党」は官僚利権を根絶する政府資産売却・外貨準備売却による復旧・復興事業を主張している。
 
 これが、次期民主党代表選の最大の争点になるだろう。
①増税か政府資産売却か
②天下り温存か天下り根絶か
③原発推進か脱原発か
が重要争点として浮上する。
 
 さらに、
④対米隷属維持か自主独立か
⑤大資本との政治の癒着維持か根絶か
も重要争点だ。
 
 菅直人氏は三条件が整った時点での首相辞任確約を示すべきだ。それを拒むなら、不信任決議案を再可決するしかない。






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