ダマスカス留学生有志による情報ブログ

ダマスカス留学生有志とそのOBがアラビア語やイスラームについての情報をお送りします。

ダマス留学日記by某女子留学生

2005年12月01日 | 日常生活

イスラーム留学にはさまざまな楽しみがある。
自分の語学上達につれて増える楽しみもあれば、自分とイスラームの関係、至高なるアッラーとのつながりの深まりに伴って増えて来る楽しみもある。

例えば、大学入学当初、イスラーム入信したての頃の喜びは、大学の授業の中で預言者様(彼の上にアッラーの祝福と平安あれ)の名が言及されるたびに、クラスのみんなで『サッラッラーフ・アライヒ・ワ・サッラム(彼の上にアッラーの祝福と平安あれ)』と唱えることであった。日本の日常生活において、自分の話し相手が預言者様(彼の上にアッラーの祝福と平安あれ)の名を会話の中で発することはまれだと思う。
従って、アッサラート・アランナビー(サッラッラーフ・アライヒ・ワ・サッラム、又はアッラーフンマ・サッリ・アラー・サイイディナー ムハンマディン・ワ・アラー・アーリヒ・ワ・サハビヒ・ワ・サッリム アジュマイーン等と唱えること-アッサラート・アランナビー(彼の上にアッラーの祝福と平安あれ)にはさまざまな言い方があり、それだけで一冊の本ができるほどである)を言う機会も、自分で意識して言わなければ、非常に少なくなると思う。

こちらでは、日常的にドアーやアッサラート・アランナビー(彼の上にアッラーの祝福と平安あれ)が、人々の会話、市場で売り買いをする人々の短い会話の中にさえ入ってくるので、アッサラート・アランナビー(彼の上にアッラーの祝福と平安あれ)を唱える機会は非常に多い。乗用車やバスのナンバープレートの横に、『アッサラート・アランナビー(彼の上にアッラーの祝福と平安あれ)を唱えなさい』と書いてあることも多い。
また、怒った人や、動揺している人、思い出せないことがある人などを落ち着かせるときにも、その人に、アッサラート・アランナビー(彼の上にアッラーの祝福と平安あれ)を唱えるよう促される。
宗教とあまり関係の無い会話でさえも、預言者様(彼の上にアッラーの祝福と平安あれ)の名がしばしば言及されるのだから、イスラーム法学部の講義の中では、数分おき、時には、数秒ごとに、預言者様(彼の上にアッラーの祝福と平安あれ)の名が連発される。
そのたびごとに、アッサラート・アランナビー(彼の上にアッラーの祝福と平安あれ)を唱えることが、心が洗われていく様で嬉しかった。
 
ご存知のように、アッサラート・アランナビー(彼の上にアッラーの祝福と平安あれ)は、イバーダート(崇拝行為)のズィクルの一つで、クルアーンにもスンナにも、それを行うよう、またその莫大な報償について言及されている。

クルアーン
【本当にアッラーと天使たちは、聖預言者を祝福する。信仰するものたちよ、あなた方は彼を祝福し、(最大の)敬意を払って挨拶しなさい。】(部族連合章:56)

ハディース
≪わたしを一回祝福した者〈注〉には、アッラーが十回祝福を与える≫サヒーフ・ムスリム
〈注〉アッサラート・アランナビー(彼の上にアッラーの祝福と平安あれ)を唱えた者
≪最後の審判の日に私に最も近い人は,私に最も多く祝福をした人です。≫ティルミズィー 
≪誰かが私に挨拶をすると、私がその人に挨拶を返せるようアッラーが私の魂を返してくださいます。≫

また、つい最近の楽しみは、イスラーム系衛星放送のラマダーン月中特別番組である。今回のラマダーンに特に気に入って毎日見ていたのが、次の3つだった。

1:ドバイ聖クルアーン大会
これは、イスラーム・非イスラーム世界から、何十カ国(大体60-80)を代表するハーフィズ(聖クルアーン暗誦者)達がその暗記とタジュウィードの美しさを競うもので、ラマダーン月のうち20日間毎日タラウィーフの後に放送される。
驚くのはアフリカ勢が多いことである。
カメルーン、チャド、コモロ諸島、ジブチ、モーリタニア、ニジェール、ナイジェリア、セネガル、ソマリア、ザンビア、、、などなどムスリムがいるのかと思うような国から出場してきて、しかも上位に食い込むのである。
その他にも、中央アジア諸国やインド、パキスタン、ヨーロッパ各国、ミャンマー、タイ、などなどムスリム人口の広がりを見せ付けられる。

出場者は、大体二十歳前後の学生であるが、中には7歳の子供もいる。
れっきとしたハーフィズで、自国で、自分の先生が休むときは先生の代理を務めるという。
また、アラビア語の意味がまったく分からないハーフィズも何人かいる。
彼らは丸暗記しているのだ。
特筆すべきは、国籍を問わず、出場者の殆どが、まじめで穏やかな顔つきをしていることだ。
毎日何時間もこつこつと暗記を重ね、復習を繰り返し、クルアーンを胸に刻み込んできた人々である。
預言者様(彼の上にアッラーの祝福と平安あれ)のお言葉≪あなた方のうち最も善い者は、クルアーンを学びそれを人に教えた者である≫の通り、彼らは我々イスラーム共同体の最も善い者達である。

各国の出場者の読誦を聴いていると、自ずとその人が自国でクルアーンを練習している風景が想像される。
「○○出身だって?あそこは洪水が多くて、毎年多くの人が家を流されると言う。そんな中でクルアーンを毎日勉強しているのか、、、」
「○○から来てるんだ。あそこは内戦でたいへんだときくけど、彼の家族もばらばらになっているかも、、、」
「○○なんてヨーロッパの国なのに、タジュウィードの先生はいるのかな?先進国の生活は忙しく誘惑も多いだろうに、どうやって時間を作ってクルアーンを暗記したのだろう、、、?」等等、、、。

多くの出場者が発展途上国出身だから勉強環境は決して良いとは言えないだろう。しかし、勉強は、机と椅子でするものではなく、やる気でするものだ。
先日、あるイスラーム学校の夏期講習に参加したのだが、そこの教室には机も椅子も無く、簡素なカーペットが敷いてあるのみで、皆あぐらをかいてひざを机代わりにノートをとっていた。
本やペンをじかに床に置くのは、知識を求める道具である本やペンに対する敬意を欠くので、床に寝かせておかずに、壁に立てかけていた。
自分の部屋がうるさいと、廊下に座り込んで勉強している人もいた。

そして、ハーフィズ達の出身国が世界に散らばっていても、目や髪や肌の色がちがっていても、インタビューすると、多くの出場者が-時にはアラブ人よりきれいな-アラビア語で応答する。
やはりアラビア語-クルアーンの言葉-はイスラーム世界の共通語なのだと実感する。
そしてアッラーのお言葉【人々よ、われは一人の男と一人の女からあなた方を創り、種族と部族に分けた。これはあなた方を、互いに知り合うようにさせるためである。アッラーの御許で最も尊い者は、あなた方のうち、最も主を畏れるものである。本当にアッラーは、全知にしてあらゆることに通暁なされる。】(部屋章:13)の真実さをしみじみと感じる。

あと二つの番組に付いては、長くなるので、次回私の番が来たら続きを書こうと思う、インシャーアッラー。

聖クルアーンの訳は、ムスリム協会編の、日亜対訳註解聖クルアーンによる
ハディースの訳は意訳です

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