せかいのうらがわ

君と巡り合えた事を人はキセキと呼ぶのだろう
それでも僕らのこの恋は「運命」と呼ばせてくれよ

死すれば愛となる(リテイク)

2009-02-23 21:52:47 | テイルズ
「眠らないのか?」

始祖の隷長に覆い尽くされた空は不可思議な動きを見せていて、古い文献で読んだ"オーロラ"という現象に似ている気がした。ほとんど魅入っていた様子を可笑しく思ったのか青年に声を掛けられ、ふと微笑む。
違う、眠れないことなどないのだ。仲間の嗚咽や悲鳴やうめき声が響く中、時には断末魔を聞いた後ですら眠っていたというのに、こんな平和な場所で眠れないわけが、ない。適当な誤魔化しを探して、薄い笑みと共に目を閉じる。

「…クローネスを眺めていたんだ」
「この町を食っちまった奴か」

確かに飽きなさそうだな、とユーリは呟く。気遣うような声色だというのに、その顔を見て話す事ができないのは私が穢れているからに違いない、と思う。私は全てを知っていて、その全ての一欠片すら彼らに話してはいない。これから起こる悲劇だって、充分予想をしているというのに。オーロラに魅入っている私には、彼に顔を向ける資格はない。
これほど沈黙をありがたいと思う事は後にも先にもあって欲しくはない。今口を開けば全て話してしまいそうだ、泣いてしまいそうになる。

「…ゲームでもしようか」

私の提案に、ユーリが意地の悪そうな笑みを浮かべた。そうだ、彼はこうでなければ。

「へえ、なんだ?言っとくが負けないぜ」
「反復ゲーム。相手の言葉を繰り返すだけ、拒否すれば負けだ」

妙に神妙な顔をして聞いていたユーリは、しばらくの間考え込んでから顔を上げた。「いいぜ、やろう」ニッと笑った表情はまだ少年の面影を色濃く残していて、彼はまだ幼心があるのだとどこか遠く思った。私がずっと遠くに、亡くして来たものをユーリは沢山持っている。羨ましい、と感じるよりも、眩しいと、感じる。眩しくて、焼かれてしまいそうだと。
私がそうして考え込んでいるうちに、焦れたのかユーリが口を開いた。

「まずは俺の番。…ルティは『レイヴンが好きだ』」

不意にユーリは此処に居ない人物の名を出す。少しばかり卑怯な気がしたがそうでなくてはゲームではない、ゲームごときに情けを掛けていては、楽しめるものも楽しめない。―贖罪になりはしない。いっそそのまま、私の罪も暴けばいいのにと、どこか思うのだ。

「…はは、私は『レイヴンが好きだ』。ならばユーリは『エステルが好きだ』」
「俺は『エステルが好きだ』、仲間としてな」

かわされた。くつりと笑い合う。「ルティは『仲間を信頼してる』、ってのはどうだ?」「まるで尋問じゃないか?私は『仲間を信頼している』、…とてもな」そう、とても。そんな会話がある程度続いて、ユーリは核心だけを避けていた。眠らなければいけない、―いや、"ユーリが眠っていなければ都合が悪い"。そう解っていても、この口は云う事を聞かなかった。最後にしよう、そう思った途端するりと、吐き出すように言葉が零れる。

「『ルティを信頼している』」

きょとん、とユーリが瞬く。私"たち"はその言葉を何よりも恐れているけれど、何よりも欲している。知っているよ、奴が何を望み何を欲し、何を思ったか。知っている、誰よりも傍に居たのは、私なのだから。
数秒の沈黙の後、ユーリは胸が痛い程の笑みを浮かべて言った。

「俺は、仲間を信頼してる」

ここで、負けてくれるなよ。そう言って泣きたかった。
終わったゲームに執着など見せないユーリに散歩に行くと告げて、その場を後にしてからも扉を突き抜けユーリの視線が追ってきている気がした。




「信頼しているというのなら」

「殺してみせろ、この私を」



道具であるのは、もうたくさんだ。殺して信頼を立ててみろ、"アレクセイの道具であるルティ・ユースティア"を殺して、今こそ。


―――
これはひどい/(^O^)\

言葉遊び

2009-02-23 02:29:02 | ネタ張
君を殺す嘘があるとしたら、
それは「君は此処に居る」という嘘。
嘘つきは真実を言わないのだから
嘘つきのわたしがそう呟けば
「君は此処に居ない」という証明になる。

だからわたしは、正直者の君を何度でも殺そう。
「君は此処に居ない」「君は此処に居ない」と
何度も、星の数ほど繰り返そう。

そうして君が泣いた時
わたしはやっと君を殺してあげる。


"君は、此処に居るのよね"


ああ、最高の茶番劇!

―――
ヤンデレ

ユースティティアの憂鬱

2009-02-22 13:39:45 | ネタ張
カロル:ルジェ…キュモールって人を見てから、機嫌悪くない?
リタ:ちょっと止めなさいよ。あんたみたいな戦闘マニアにかかったら、あいつ吹っ飛んじゃうわよ
ルジェ:待て待て、私だって無差別に人を殺すわけじゃない!
カロル:え、違うの?!
ルジェ:カロルは私を何だと…
ユーリ:や、てっきり俺もそうだと思ってたんだけどな
ルジェ:ユーリにだけは言われたくない。ユーリにだけは言われたくない!
ルジェ:私だって人を殺した後、うなされる事だってある
リタ:へえ、あんたにも感傷的な部分があったのね
ルジェ:まあ、な。
ユーリ:いいんじゃねーか?人間味があってさ。
ルジェ:…?何か誤解があるようだな。
ルジェ:もっと甚振って殺せばよかった、とかそういう事だが?
カロル・リタ:………
ユーリ:ははははは!
ユーリ:ルジェらしいけど、あんまやり過ぎるなよ?
ルジェ:わかっている。実際には一太刀で殺すさ
カロル:…僕もう…二人についていけない
リタ:今だけはあんたに同感だわ…付き合ってらんない

ユーリ:…嘘だろ?
ルジェ:…もちろん。


―――
小説にしようと思ってスキットになった\(^O^)/

死すれば恋となる

2009-02-21 00:02:57 | ネタ張
怖くなる。
そう遠くない未来に、幸福に隠された絶望があるようで。
最初から歌っていたのはあたしとカセットテープだけで、

双子なんていなかった。

そう言われる日が来る気がして、途方もなく恐ろしくなる。



怖いよ、―――。




…っていう絵を描きましたw

酒盛り場の嘘

2009-02-18 04:16:02 | テイルズ
初めて会った時の事は今でも忘れがたい。
そう、あれはやや肌寒くなってきた冬の初めの事。部下を探すように言われ酒場に来たところで見つけたのがその本人、会った時彼女は―

「おぇえええええ」

吐いていた。思い切り、吐いていた。何度も言うが、吐いていた。



「まあまあ、そんな事もあったなあ!」

豪快な笑い声を上げながら並々と酒の注がれたジョッキを机に叩きつけ、今にも叩き割らんとしているかのような迫力で女が叫ぶ。勿論そんな者ばかりの酒場の机はそれほどで根を上げるわけもなく、平然と傷一つない姿で彼女の鉄拳を受けていた。
ルジェ・ユーティア。長く伸ばした黒い髪を後ろで束ねた男勝りな雰囲気や態度は、どこか男性を思わせる。天を射る矢の一員でそれなりの位置に居り、仕事も早く能力も高い。が、いかんせん酒癖が悪く滅多な事ではギルドからの依頼が降りる事もない、所謂「幽霊要員」だ。目の前の男はくたびれた様子で苦笑を零す。

「そんな事もあったなあ、で済まされるモンじゃないっしょ。俺様あんな豪快に嘔吐する女の子初めて見たわ」
「惚れたろ?レイヴンよ」

ニィっと真っ赤な顔で笑みを浮かべて言うルジェに、心底疲れたといった風にレイヴンと呼ばれた男は溜息を吐く。けれどそこに見放した様子はなく、かといって根気強いものも見えない。単純に繰り返される酔っ払いの行動に呆れているだけだろう、レイヴンが席を立つ事は当分無い。
がやがやとした店内でも、最もルジェの声は響く。元々大きい声にやや低めの声は、じわりと波紋のように響くのだからあまり喋らせるのは控えたいものだが。もう一つ溜息を吐き、ジョッキを傾けてからレイヴンはルジェに目線をやった。

「ある意味ではね。でもおたくさん一応女の子なんだから、もうちょっとさあ…」
「いいんだよ、もー女の子って年でもねェし。そろそろオバサンでねェのォ」

呆れた様子のレイヴンにそう言ってのけるルジェの肌は、若い。白い肌はまるで死んでいるかのようで、まさか、と思ってしまう。―いや、そんな事はない。ありえるわけが、ない。ルジェと話す間、レイヴンの思考はほとんどが自己完結に終わる。

「ていうか、ルジェちゃんは一体何歳なのよ」
「んー?永遠の18歳…なんちゃってなーあ!ハハハハハ」
「ちょっ」

まさか、と思っていた矢先、含んだ笑みをしながらそんな事を言われては、ついうっかりそちらの方向に考えてしまう。ルジェには何の思惑も無いのだろうが―そこがまた、負けた、とも悔しい、とも思うのだ。全く、彼女には敵わない。自信の発言に馬鹿笑いを初め、仕舞いには腹を抱えるルジェを見やっては本日何度目かわからない溜息を零す。全く、敵わない。

「でーさァ、レイヴンはよ?最近どうなのサ」
「どーって、何が」
「こっち関係で」

ぴ、っと立てられた小指が眼前に突き出される。獲物を狙うような輝く黒の双眸が痛い。女性のこの手の話に引っかかれば厄介になる、そう重い視線を逸らしたのだが―

「ちょーいおっさん。話は終わっちゃねェよー?」
「あ、やっぱダメ。じゃあこうしない、ルジェちゃん」

案外飄々として答えるレイヴンにルジェはすっと眉を顰めたが、次の瞬間にはまた人を喰ったような笑みを浮かべてみせる。どんな楽しい提案が出てくるのか、早く言え。そんなニュアンスが言外に含まれているようでレイヴンの笑みを浮かべる口の端が引きつったが、びしっと今度はルジェに向かって、親指を立ててみせる。

「ルジェちゃんのこういう話と交換、ってコトで」
「っち、そー来たか」

ルジェはあからさまに顔を顰め、床に向かって唾を吐き捨てる真似をする。いつもなら彼女はここで引き下がるのだが、「まァいいか、」今日はどうやら、違うようだ。レイヴンならば何とかいい訳をして逃げそうなものだが、またこちらも興味深々といった風でルジェの話に耳を傾けている。
しばらくぼうっと虚空を眺めていたルジェだが、またレイヴンに視線を戻す頃には清々しいまでの笑みを浮かべていた。居ない、てっきりそういわれるものとレイヴンは思い次の言葉を探していたのだが、彼女から帰って来た言葉はまた予想外なものだった。

「死んだ」
「…え、」
「あたしが見てる前で『バーン』、心臓に直撃。ありゃ即死だね」

わはは、と笑った彼女の笑みはいつもと変わらぬものではあったけれど、そこに一抹何かを感じてしまうのは、勘違いなのだろうか。何か彼女が隠しているような、そんな―何か。到底理解し得ない深く暗いものが潜んでいるような気がしてならなかった。

「まァいいさ、シュヴァーンの話は。さァ飲め飲め、弔い酒じゃ!」

ほとんどそこで、レイヴンの思考は停止していた。
シュヴァーン。その言葉がどれほそ重いのか、おそらく彼女は知らないのだろう、と思う。だがそれを八つ当たりするのは可笑しい、この道を選んだのは、レイヴン自身なのだから―にや、と笑う。

「シュヴァーンねぇ。ルジェちゃん、あんな奴が良かったの?」

にやにやと下世話な笑みに下世話な台詞を乗せるが、当のルジェは全く気に留めた様子もなく「いやあ、何で好きなんだかねェ」と、雨がおちるほど小さな声で呟いた。過去形ではなく、現行の形で、ぽつりと。
その声は酒場の喧騒に消えていくはずだったのだろうが、何の悪戯か本人の―レイヴンの耳に届いていた。本人としては何か返すべき言葉があったのかもしれない、かけるべき慰めの言葉があったのかもしれない。けれどレイヴンの口から発せられたのは、追い討ちを掛けるような言葉で。

「好きな子が居たって話だけど」

諦めさせたかったのかも、しれない。どこか"彼女"に似た雰囲気のあるルジェに、そんな事を言われては重ねてしまいそうになる。いい年になって、こんな境遇の中でも愛しいと思ってしまうかもしれない。そんな怯えや自制心が歪んだ形になって、彼女を傷つけるような言葉の矢になる。
ルジェは、それでも飄々としていた。先程までのように大笑いしていないのは、そろそろ酔いも頂点に達したからなのだろうが。

「知ってら。キャナリだろ」

何の躊躇いもなく、ルジェの口からは別の人間の名が出た。「へ、」とレイヴンの口からシュヴァーンともレイヴンともつかない発言がこぼれ落ちる。間抜けな声だ、知らなかったのかとひとしきり笑った後でルジェは乾いた笑いを零し、「キャナリって子だろォな。まあ、そいつにも想い人が居たって話だけどよ」と付け足した。
絶句するしかない。キャナリの名を知っていて、シュヴァーンの最期を見ているという。彼女の正体は、と考えた時に誰の顔も思い浮かばないのは当然なのだろう、あんな窮地では後ろに誰が居たかなんて事は考えられもしない。飽和状態のルジェを最後に目を閉じてレイヴンはやれやれ、と呟く。

「違うって。シュヴァーンの想い人は、『ルフェ・ユスティ』って子」

こうなったらやけ、とでも言うようにほとんど本人すら知らないような事を言ってのけた。これで彼女が反応すれば、と想って目を開いた、のだが―

「…。…ちょっとぉ、ルジェちゃーん?」
「………」

ルジェは既に、出来上がっていた。机の上に突っ伏しては何事か恨めしげに呟いている。もう飲めない、だとか、大半はそういった事だろうと思いつつ耳を向けたのが悪かった。「今更だ」そう言っているのが、聞こえてしまった。最早どう反応していいのかもわからない、困惑し大きな音を立てて自身の椅子に戻る。
と、ルジェがぴくりと反応した。起きるのかと思いきや、しばらくそのままの姿勢で居る。唐突に彼女はぽつりと、

「シュヴァーン」

はっきり、透った声でそう呟いた。自身が呼ばれたのかと思い、レイヴンは目を見開く。

「シュヴァーン…シュヴァーン!!」

段々と加速する大きな声。けれど店内は慣れた事と気にも留めない、それに彼女は少しばかり隔離された場所で飲んでいる。だから、ルジェの行為に違和感を覚える者も、レイヴンを疑う者も居ない。彼女はよくこの名前を口にしたし、レイヴンがこの酒場にルジェに会いに来るようになる前まではよく叫んでいたものだから。
だから、ルジェが唐突に立ち上がり、レイヴンに覆いかぶさろうとも、誰も気に留めはしない。

「どこへ行っていた!私があれだけ探しても見つからなかったくせに、今までどこで何をしていた!今更ッ…私が好きだと、ふざけるな、ふざけるなっ!人がどれだけ―ッ」

酔っているのだか、それこそ「ルフェ」なのか、わからない。
本当は両者共に当分前に気付いていた。レイヴンは、ルジェがルフェなのだと。ルジェは、レイヴンがシュヴァーンなのだと。それに気付きながら酔ったフリをし、本音を隠して付き合っていたのだ。そこに触れた時何かが崩れると、想っていたから。なのに彼女は、いとも簡単に、その均衡を壊してしまった。

「全く、ルジェちゃんは馬鹿よね。―俺の事なんて忘れればいいのに、俺はもう死んだんだ。わかってたくせに何故そこまで"らしくない"事を言う、ルフェ」
「だまれ、どろぼうおとこ」

服を千切れんばかり掴み、ルジェは肩を震わせ泣く。悲しみか酔いか、愛情か。彼女がそれを明かす事は無いのだろうと、レイヴンは知っている。


―――
(酒盛り場の嘘)


もうねむくなってきちゃった/(^O^)\
シュヴァーンだって知ってて嘘をつく
年のいってる人の話が書きたかったんだw

散菊紋

2009-02-16 12:45:10 | 小説
さらり、と黒髪が落ちる。
この世界で魔術というものは珍しくなく、それこそ初歩的なもので何かの色を染めたり、高等なものになれば幻術でそう見せる事もできてしまう。だから、鬼が鬼喰に紛れてしまう事だって難しくはないのだ―特に、何百年も生きた彼なら。

「蒼遠は…」
「ああ。…完全に鬼というわけではないが、鬼の血が入っている」

鬼喰と、人狼と、鬼と、人。人狼はさほど気性も荒くなく、人に近い形をした聖獣だから、鬼喰と結ばれても問題はない。けれど、鬼と、人。間違いなく何かが起こらない限り、鬼は人を喰う。そこに愛があったのか、それとも―

「俺の先祖は、フェンリルと、鬼喰。遠菊犀弥と―カイ・ルシフェルだ」

―――


カイが好きです(ry

ぼくと魔法使い

2009-02-13 03:16:25 | 小説
「ねえ君って何で生きてるの。死んでしまえばいいのに」

ぼくにはずっと前から、見えない友達が居る。それはぼくにそっくりの形をしていて、ぼくにそっくりの声をしているのだけど、ぼくには見る事ができない。それは魔法使いで、どんな魔法でも使えるけれど、ぼくが一言使うなと言えば魔法を使う事のできないよわっちい奴。
けど魔法使いは誰よりも強い。誰よりも強い僕は、きっともっと強いはず。

「それで、ぼくはきっと呪いにかかった王子様で」
「そんな、妄言ばっかり、」
「悪い魔法使いが誰もが僕を嫌う呪いをかけたんだ。だからお母さんもぼくを捨てたし、町の人は石をなげるんだね」

ぼくは賢い子だから、そういう事はよーくわかっている。悪い事は全部ぼくが眠っている間ぼくに似た魔法使いが悪戯したことで、ぼくは何にも悪い事なんてしちゃいない。朝起きれば暖かいパンが盗んであるし、夜には誰のものかわからない毛布がある。悪口をいう人の口には大きな石を食べさせて、魔法使いは正義の味方!この世界の人はみーんな呪いにかかっているのだから、ぼくが目を覚ましてあげなくちゃいけないんだ。
それにしても魔法使いはずいぶんお母さんに似た事をいうんだね。


―――
(君を殺す世界)

母の少女

2009-02-12 18:58:29 | 小説
俺が生きていると、彼女は言うけれど。
俺は紛れも無い「人形」で、体温も心音もないイレモノだけの虚ろな存在。だから本当は彼女のような人間が、魂を持った、闇を魅せるその魂が、憎くてたまらなかったというのに、彼女は笑ってみせる。

「魂があってもね、心の無い人も居るんだよ」

だから零は、ずっとずっと人間らしい。俺よりよっぽど華奢で色白の腕が伸ばされて、体がやけに苦しくなる。ああこれが抱き締める、って事なんだと思った途端に涙がこぼれて、ぼろぼろに泣きながら彼女が帰るのを見送った。彼女は夢よりも現実を追う人で、だというのに心は断然寂しがりやで儚くて、いつだって心配していた。
何十年も経った後、わざわざ俺に会いに来た彼女は「結婚」していたけれど。

彼女は、俺の母なのだとおもう。

―――
(0)

零たちは人形で道具なので、記憶はすぐに、
たった二ヶ月だけで消えてしまいます。
会えば思い出すようにはなっていますが、
彼らの時は忘れたその時点で止まったまま。
だって彼らが「客として愛するべき人」は
人間で、彼らよりずっと早く死んでしまう。
悲しみを持ったまま接客はできませんから。

…でも凄く悲しいことですよね、それって。

水子

2009-02-09 23:35:52 | 小説
死ぬ前には生まれていて、生まれる頃には死んでいた。
どうしてだったかわからない。ただ混沌とした意識の中「生きている」と実感する頃には、幾度となく動かせもしない身体に衝撃が走っていた。呪いのように女は「死んでしまえ」と繰り返しながらオレサマを殺そうと、何度も自分で自分の腹を蹴り上げていた。中からでは見えないその行為は、今から思えば傍観者にとって滑稽でしか無かっただろう。そんな醜態を晒してまでオレサマを殺したかった理由などわからない。わかりたくもない。
意思を持つのは悪い事じゃない。ただオレサマの場合は生まれ方が、ただの少しも愛す事なくオレサマを殺したあの女への殺意から生まれたのが悪かった。生まれた時は深い深遠の底に沈んだ意識が、殺せ殺せと耳元に囁きかける。気付けば人を呪い、壊し、魂を喰い…あの女より、酷かったかもしれない。だがそれを調べる術はもう無い。
大体あの女はもう、殺してしまった。

「軽蔑しろよ、俺を。復讐じゃ飽き足らずに何十人も、…何百人だって殺した。そうすればお前を閉じ込められるんだ、否定しろよ、早く…!」

そこまで聞いておいて、アハトに似た男は嘲笑にも似た様子でオレサマの話を無視した。著しく顔を歪めたのが自分でもわかった。この男は嫌いだ、とても。

「それで、結局お前は…寂しかったんじゃないのか?」
「ハッ、オレサマが?馬鹿げた人間だな、テメェは。悪魔が寂しいなんて言うとでも…!」
「俺にはそう見えるけどな」


―――

もう…いい…wwwww
初めてなんか「そういうジャンル」に入るやつを
演じた時を思い出しながら書きました。懐かしいw

殺人願望の定義

2009-02-08 20:18:34 | その他
「オーレンドルフ卿は…法律というものを、ご存知なのかしら」

唐突に開かれた唇から、氷柱ように尖った透明な声が響き渡る。オーレンドルフ卿、と呼ばれるエリクという男はそれに著しく顔を歪めた。彼女は彼女自身が嫌いで、ふとした時にとてつもなく残酷で恐ろしい言葉を吐く。まるで呪いかと勘違いできるほどに恐ろしい、言葉を。しかも彼女がそれを実行してしまいかねないところが一番恐ろしいのだ。
注意深く耳を傾けないようにしながら、小さく肯定の返事をする。できれば彼女にはその先を言って貰いたくは無かったが。

「…じゃあ、例えば」

数秒の間の後、沈黙を可笑しいと思いエリクが彼女の方に視線をやったのが間違いだった。ベルスーズの細く白い腕が、同じように細く白い首を覆っている。やめろ、叫ぼうとして立ち上がった途端に倒れた椅子の音で、ベルスーズは目を大きくして首を傾げた。そんな気は無かったのだろうか、いや―いつかは実行しようとしているに違いない。「可笑しな方ね」ベルスーズの笑い声がエリクの耳についた。

「わたくしが今…子供の私を殺したい―なんて思うのは。殺人願望のうちに、入りますの?」

―――
(悪魔と堕天使)


時間が空くと書けなくなってしまう^q^

元々エリクは港町に住む上流階級を標的にした
殺し屋だったんですが、ゲームでは雇われ中。
ベルスーズとルアル、エリクの三人は多分…
セランクリスか帝都の下町に出てくるの…かな?

ルアルとエリクの仲の悪さは尋常じゃないです。
それはもう日常的に殺しあうくらいに(∑)
まあ、ルアルの再生能力も尋常じゃないんで
何をやっても平気なんですがね。一応は。