初めて会った時の事は今でも忘れがたい。
そう、あれはやや肌寒くなってきた冬の初めの事。部下を探すように言われ酒場に来たところで見つけたのがその本人、会った時彼女は―
「おぇえええええ」
吐いていた。思い切り、吐いていた。何度も言うが、吐いていた。
「まあまあ、そんな事もあったなあ!」
豪快な笑い声を上げながら並々と酒の注がれたジョッキを机に叩きつけ、今にも叩き割らんとしているかのような迫力で女が叫ぶ。勿論そんな者ばかりの酒場の机はそれほどで根を上げるわけもなく、平然と傷一つない姿で彼女の鉄拳を受けていた。
ルジェ・ユーティア。長く伸ばした黒い髪を後ろで束ねた男勝りな雰囲気や態度は、どこか男性を思わせる。天を射る矢の一員でそれなりの位置に居り、仕事も早く能力も高い。が、いかんせん酒癖が悪く滅多な事ではギルドからの依頼が降りる事もない、所謂「幽霊要員」だ。目の前の男はくたびれた様子で苦笑を零す。
「そんな事もあったなあ、で済まされるモンじゃないっしょ。俺様あんな豪快に嘔吐する女の子初めて見たわ」
「惚れたろ?レイヴンよ」
ニィっと真っ赤な顔で笑みを浮かべて言うルジェに、心底疲れたといった風にレイヴンと呼ばれた男は溜息を吐く。けれどそこに見放した様子はなく、かといって根気強いものも見えない。単純に繰り返される酔っ払いの行動に呆れているだけだろう、レイヴンが席を立つ事は当分無い。
がやがやとした店内でも、最もルジェの声は響く。元々大きい声にやや低めの声は、じわりと波紋のように響くのだからあまり喋らせるのは控えたいものだが。もう一つ溜息を吐き、ジョッキを傾けてからレイヴンはルジェに目線をやった。
「ある意味ではね。でもおたくさん一応女の子なんだから、もうちょっとさあ…」
「いいんだよ、もー女の子って年でもねェし。そろそろオバサンでねェのォ」
呆れた様子のレイヴンにそう言ってのけるルジェの肌は、若い。白い肌はまるで死んでいるかのようで、まさか、と思ってしまう。―いや、そんな事はない。ありえるわけが、ない。ルジェと話す間、レイヴンの思考はほとんどが自己完結に終わる。
「ていうか、ルジェちゃんは一体何歳なのよ」
「んー?永遠の18歳…なんちゃってなーあ!ハハハハハ」
「ちょっ」
まさか、と思っていた矢先、含んだ笑みをしながらそんな事を言われては、ついうっかりそちらの方向に考えてしまう。ルジェには何の思惑も無いのだろうが―そこがまた、負けた、とも悔しい、とも思うのだ。全く、彼女には敵わない。自信の発言に馬鹿笑いを初め、仕舞いには腹を抱えるルジェを見やっては本日何度目かわからない溜息を零す。全く、敵わない。
「でーさァ、レイヴンはよ?最近どうなのサ」
「どーって、何が」
「こっち関係で」
ぴ、っと立てられた小指が眼前に突き出される。獲物を狙うような輝く黒の双眸が痛い。女性のこの手の話に引っかかれば厄介になる、そう重い視線を逸らしたのだが―
「ちょーいおっさん。話は終わっちゃねェよー?」
「あ、やっぱダメ。じゃあこうしない、ルジェちゃん」
案外飄々として答えるレイヴンにルジェはすっと眉を顰めたが、次の瞬間にはまた人を喰ったような笑みを浮かべてみせる。どんな楽しい提案が出てくるのか、早く言え。そんなニュアンスが言外に含まれているようでレイヴンの笑みを浮かべる口の端が引きつったが、びしっと今度はルジェに向かって、親指を立ててみせる。
「ルジェちゃんのこういう話と交換、ってコトで」
「っち、そー来たか」
ルジェはあからさまに顔を顰め、床に向かって唾を吐き捨てる真似をする。いつもなら彼女はここで引き下がるのだが、「まァいいか、」今日はどうやら、違うようだ。レイヴンならば何とかいい訳をして逃げそうなものだが、またこちらも興味深々といった風でルジェの話に耳を傾けている。
しばらくぼうっと虚空を眺めていたルジェだが、またレイヴンに視線を戻す頃には清々しいまでの笑みを浮かべていた。居ない、てっきりそういわれるものとレイヴンは思い次の言葉を探していたのだが、彼女から帰って来た言葉はまた予想外なものだった。
「死んだ」
「…え、」
「あたしが見てる前で『バーン』、心臓に直撃。ありゃ即死だね」
わはは、と笑った彼女の笑みはいつもと変わらぬものではあったけれど、そこに一抹何かを感じてしまうのは、勘違いなのだろうか。何か彼女が隠しているような、そんな―何か。到底理解し得ない深く暗いものが潜んでいるような気がしてならなかった。
「まァいいさ、シュヴァーンの話は。さァ飲め飲め、弔い酒じゃ!」
ほとんどそこで、レイヴンの思考は停止していた。
シュヴァーン。その言葉がどれほそ重いのか、おそらく彼女は知らないのだろう、と思う。だがそれを八つ当たりするのは可笑しい、この道を選んだのは、レイヴン自身なのだから―にや、と笑う。
「シュヴァーンねぇ。ルジェちゃん、あんな奴が良かったの?」
にやにやと下世話な笑みに下世話な台詞を乗せるが、当のルジェは全く気に留めた様子もなく「いやあ、何で好きなんだかねェ」と、雨がおちるほど小さな声で呟いた。過去形ではなく、現行の形で、ぽつりと。
その声は酒場の喧騒に消えていくはずだったのだろうが、何の悪戯か本人の―レイヴンの耳に届いていた。本人としては何か返すべき言葉があったのかもしれない、かけるべき慰めの言葉があったのかもしれない。けれどレイヴンの口から発せられたのは、追い討ちを掛けるような言葉で。
「好きな子が居たって話だけど」
諦めさせたかったのかも、しれない。どこか"彼女"に似た雰囲気のあるルジェに、そんな事を言われては重ねてしまいそうになる。いい年になって、こんな境遇の中でも愛しいと思ってしまうかもしれない。そんな怯えや自制心が歪んだ形になって、彼女を傷つけるような言葉の矢になる。
ルジェは、それでも飄々としていた。先程までのように大笑いしていないのは、そろそろ酔いも頂点に達したからなのだろうが。
「知ってら。キャナリだろ」
何の躊躇いもなく、ルジェの口からは別の人間の名が出た。「へ、」とレイヴンの口からシュヴァーンともレイヴンともつかない発言がこぼれ落ちる。間抜けな声だ、知らなかったのかとひとしきり笑った後でルジェは乾いた笑いを零し、「キャナリって子だろォな。まあ、そいつにも想い人が居たって話だけどよ」と付け足した。
絶句するしかない。キャナリの名を知っていて、シュヴァーンの最期を見ているという。彼女の正体は、と考えた時に誰の顔も思い浮かばないのは当然なのだろう、あんな窮地では後ろに誰が居たかなんて事は考えられもしない。飽和状態のルジェを最後に目を閉じてレイヴンはやれやれ、と呟く。
「違うって。シュヴァーンの想い人は、『ルフェ・ユスティ』って子」
こうなったらやけ、とでも言うようにほとんど本人すら知らないような事を言ってのけた。これで彼女が反応すれば、と想って目を開いた、のだが―
「…。…ちょっとぉ、ルジェちゃーん?」
「………」
ルジェは既に、出来上がっていた。机の上に突っ伏しては何事か恨めしげに呟いている。もう飲めない、だとか、大半はそういった事だろうと思いつつ耳を向けたのが悪かった。「今更だ」そう言っているのが、聞こえてしまった。最早どう反応していいのかもわからない、困惑し大きな音を立てて自身の椅子に戻る。
と、ルジェがぴくりと反応した。起きるのかと思いきや、しばらくそのままの姿勢で居る。唐突に彼女はぽつりと、
「シュヴァーン」
はっきり、透った声でそう呟いた。自身が呼ばれたのかと思い、レイヴンは目を見開く。
「シュヴァーン…シュヴァーン!!」
段々と加速する大きな声。けれど店内は慣れた事と気にも留めない、それに彼女は少しばかり隔離された場所で飲んでいる。だから、ルジェの行為に違和感を覚える者も、レイヴンを疑う者も居ない。彼女はよくこの名前を口にしたし、レイヴンがこの酒場にルジェに会いに来るようになる前まではよく叫んでいたものだから。
だから、ルジェが唐突に立ち上がり、レイヴンに覆いかぶさろうとも、誰も気に留めはしない。
「どこへ行っていた!私があれだけ探しても見つからなかったくせに、今までどこで何をしていた!今更ッ…私が好きだと、ふざけるな、ふざけるなっ!人がどれだけ―ッ」
酔っているのだか、それこそ「ルフェ」なのか、わからない。
本当は両者共に当分前に気付いていた。レイヴンは、ルジェがルフェなのだと。ルジェは、レイヴンがシュヴァーンなのだと。それに気付きながら酔ったフリをし、本音を隠して付き合っていたのだ。そこに触れた時何かが崩れると、想っていたから。なのに彼女は、いとも簡単に、その均衡を壊してしまった。
「全く、ルジェちゃんは馬鹿よね。―俺の事なんて忘れればいいのに、俺はもう死んだんだ。わかってたくせに何故そこまで"らしくない"事を言う、ルフェ」
「だまれ、どろぼうおとこ」
服を千切れんばかり掴み、ルジェは肩を震わせ泣く。悲しみか酔いか、愛情か。彼女がそれを明かす事は無いのだろうと、レイヴンは知っている。
―――
(酒盛り場の嘘)
もうねむくなってきちゃった/(^O^)\
シュヴァーンだって知ってて嘘をつく
年のいってる人の話が書きたかったんだw
そう、あれはやや肌寒くなってきた冬の初めの事。部下を探すように言われ酒場に来たところで見つけたのがその本人、会った時彼女は―
「おぇえええええ」
吐いていた。思い切り、吐いていた。何度も言うが、吐いていた。
「まあまあ、そんな事もあったなあ!」
豪快な笑い声を上げながら並々と酒の注がれたジョッキを机に叩きつけ、今にも叩き割らんとしているかのような迫力で女が叫ぶ。勿論そんな者ばかりの酒場の机はそれほどで根を上げるわけもなく、平然と傷一つない姿で彼女の鉄拳を受けていた。
ルジェ・ユーティア。長く伸ばした黒い髪を後ろで束ねた男勝りな雰囲気や態度は、どこか男性を思わせる。天を射る矢の一員でそれなりの位置に居り、仕事も早く能力も高い。が、いかんせん酒癖が悪く滅多な事ではギルドからの依頼が降りる事もない、所謂「幽霊要員」だ。目の前の男はくたびれた様子で苦笑を零す。
「そんな事もあったなあ、で済まされるモンじゃないっしょ。俺様あんな豪快に嘔吐する女の子初めて見たわ」
「惚れたろ?レイヴンよ」
ニィっと真っ赤な顔で笑みを浮かべて言うルジェに、心底疲れたといった風にレイヴンと呼ばれた男は溜息を吐く。けれどそこに見放した様子はなく、かといって根気強いものも見えない。単純に繰り返される酔っ払いの行動に呆れているだけだろう、レイヴンが席を立つ事は当分無い。
がやがやとした店内でも、最もルジェの声は響く。元々大きい声にやや低めの声は、じわりと波紋のように響くのだからあまり喋らせるのは控えたいものだが。もう一つ溜息を吐き、ジョッキを傾けてからレイヴンはルジェに目線をやった。
「ある意味ではね。でもおたくさん一応女の子なんだから、もうちょっとさあ…」
「いいんだよ、もー女の子って年でもねェし。そろそろオバサンでねェのォ」
呆れた様子のレイヴンにそう言ってのけるルジェの肌は、若い。白い肌はまるで死んでいるかのようで、まさか、と思ってしまう。―いや、そんな事はない。ありえるわけが、ない。ルジェと話す間、レイヴンの思考はほとんどが自己完結に終わる。
「ていうか、ルジェちゃんは一体何歳なのよ」
「んー?永遠の18歳…なんちゃってなーあ!ハハハハハ」
「ちょっ」
まさか、と思っていた矢先、含んだ笑みをしながらそんな事を言われては、ついうっかりそちらの方向に考えてしまう。ルジェには何の思惑も無いのだろうが―そこがまた、負けた、とも悔しい、とも思うのだ。全く、彼女には敵わない。自信の発言に馬鹿笑いを初め、仕舞いには腹を抱えるルジェを見やっては本日何度目かわからない溜息を零す。全く、敵わない。
「でーさァ、レイヴンはよ?最近どうなのサ」
「どーって、何が」
「こっち関係で」
ぴ、っと立てられた小指が眼前に突き出される。獲物を狙うような輝く黒の双眸が痛い。女性のこの手の話に引っかかれば厄介になる、そう重い視線を逸らしたのだが―
「ちょーいおっさん。話は終わっちゃねェよー?」
「あ、やっぱダメ。じゃあこうしない、ルジェちゃん」
案外飄々として答えるレイヴンにルジェはすっと眉を顰めたが、次の瞬間にはまた人を喰ったような笑みを浮かべてみせる。どんな楽しい提案が出てくるのか、早く言え。そんなニュアンスが言外に含まれているようでレイヴンの笑みを浮かべる口の端が引きつったが、びしっと今度はルジェに向かって、親指を立ててみせる。
「ルジェちゃんのこういう話と交換、ってコトで」
「っち、そー来たか」
ルジェはあからさまに顔を顰め、床に向かって唾を吐き捨てる真似をする。いつもなら彼女はここで引き下がるのだが、「まァいいか、」今日はどうやら、違うようだ。レイヴンならば何とかいい訳をして逃げそうなものだが、またこちらも興味深々といった風でルジェの話に耳を傾けている。
しばらくぼうっと虚空を眺めていたルジェだが、またレイヴンに視線を戻す頃には清々しいまでの笑みを浮かべていた。居ない、てっきりそういわれるものとレイヴンは思い次の言葉を探していたのだが、彼女から帰って来た言葉はまた予想外なものだった。
「死んだ」
「…え、」
「あたしが見てる前で『バーン』、心臓に直撃。ありゃ即死だね」
わはは、と笑った彼女の笑みはいつもと変わらぬものではあったけれど、そこに一抹何かを感じてしまうのは、勘違いなのだろうか。何か彼女が隠しているような、そんな―何か。到底理解し得ない深く暗いものが潜んでいるような気がしてならなかった。
「まァいいさ、シュヴァーンの話は。さァ飲め飲め、弔い酒じゃ!」
ほとんどそこで、レイヴンの思考は停止していた。
シュヴァーン。その言葉がどれほそ重いのか、おそらく彼女は知らないのだろう、と思う。だがそれを八つ当たりするのは可笑しい、この道を選んだのは、レイヴン自身なのだから―にや、と笑う。
「シュヴァーンねぇ。ルジェちゃん、あんな奴が良かったの?」
にやにやと下世話な笑みに下世話な台詞を乗せるが、当のルジェは全く気に留めた様子もなく「いやあ、何で好きなんだかねェ」と、雨がおちるほど小さな声で呟いた。過去形ではなく、現行の形で、ぽつりと。
その声は酒場の喧騒に消えていくはずだったのだろうが、何の悪戯か本人の―レイヴンの耳に届いていた。本人としては何か返すべき言葉があったのかもしれない、かけるべき慰めの言葉があったのかもしれない。けれどレイヴンの口から発せられたのは、追い討ちを掛けるような言葉で。
「好きな子が居たって話だけど」
諦めさせたかったのかも、しれない。どこか"彼女"に似た雰囲気のあるルジェに、そんな事を言われては重ねてしまいそうになる。いい年になって、こんな境遇の中でも愛しいと思ってしまうかもしれない。そんな怯えや自制心が歪んだ形になって、彼女を傷つけるような言葉の矢になる。
ルジェは、それでも飄々としていた。先程までのように大笑いしていないのは、そろそろ酔いも頂点に達したからなのだろうが。
「知ってら。キャナリだろ」
何の躊躇いもなく、ルジェの口からは別の人間の名が出た。「へ、」とレイヴンの口からシュヴァーンともレイヴンともつかない発言がこぼれ落ちる。間抜けな声だ、知らなかったのかとひとしきり笑った後でルジェは乾いた笑いを零し、「キャナリって子だろォな。まあ、そいつにも想い人が居たって話だけどよ」と付け足した。
絶句するしかない。キャナリの名を知っていて、シュヴァーンの最期を見ているという。彼女の正体は、と考えた時に誰の顔も思い浮かばないのは当然なのだろう、あんな窮地では後ろに誰が居たかなんて事は考えられもしない。飽和状態のルジェを最後に目を閉じてレイヴンはやれやれ、と呟く。
「違うって。シュヴァーンの想い人は、『ルフェ・ユスティ』って子」
こうなったらやけ、とでも言うようにほとんど本人すら知らないような事を言ってのけた。これで彼女が反応すれば、と想って目を開いた、のだが―
「…。…ちょっとぉ、ルジェちゃーん?」
「………」
ルジェは既に、出来上がっていた。机の上に突っ伏しては何事か恨めしげに呟いている。もう飲めない、だとか、大半はそういった事だろうと思いつつ耳を向けたのが悪かった。「今更だ」そう言っているのが、聞こえてしまった。最早どう反応していいのかもわからない、困惑し大きな音を立てて自身の椅子に戻る。
と、ルジェがぴくりと反応した。起きるのかと思いきや、しばらくそのままの姿勢で居る。唐突に彼女はぽつりと、
「シュヴァーン」
はっきり、透った声でそう呟いた。自身が呼ばれたのかと思い、レイヴンは目を見開く。
「シュヴァーン…シュヴァーン!!」
段々と加速する大きな声。けれど店内は慣れた事と気にも留めない、それに彼女は少しばかり隔離された場所で飲んでいる。だから、ルジェの行為に違和感を覚える者も、レイヴンを疑う者も居ない。彼女はよくこの名前を口にしたし、レイヴンがこの酒場にルジェに会いに来るようになる前まではよく叫んでいたものだから。
だから、ルジェが唐突に立ち上がり、レイヴンに覆いかぶさろうとも、誰も気に留めはしない。
「どこへ行っていた!私があれだけ探しても見つからなかったくせに、今までどこで何をしていた!今更ッ…私が好きだと、ふざけるな、ふざけるなっ!人がどれだけ―ッ」
酔っているのだか、それこそ「ルフェ」なのか、わからない。
本当は両者共に当分前に気付いていた。レイヴンは、ルジェがルフェなのだと。ルジェは、レイヴンがシュヴァーンなのだと。それに気付きながら酔ったフリをし、本音を隠して付き合っていたのだ。そこに触れた時何かが崩れると、想っていたから。なのに彼女は、いとも簡単に、その均衡を壊してしまった。
「全く、ルジェちゃんは馬鹿よね。―俺の事なんて忘れればいいのに、俺はもう死んだんだ。わかってたくせに何故そこまで"らしくない"事を言う、ルフェ」
「だまれ、どろぼうおとこ」
服を千切れんばかり掴み、ルジェは肩を震わせ泣く。悲しみか酔いか、愛情か。彼女がそれを明かす事は無いのだろうと、レイヴンは知っている。
―――
(酒盛り場の嘘)
もうねむくなってきちゃった/(^O^)\
シュヴァーンだって知ってて嘘をつく
年のいってる人の話が書きたかったんだw