せかいのうらがわ

君と巡り合えた事を人はキセキと呼ぶのだろう
それでも僕らのこの恋は「運命」と呼ばせてくれよ

ぼくと魔法使い

2009-02-13 03:16:25 | 小説
「ねえ君って何で生きてるの。死んでしまえばいいのに」

ぼくにはずっと前から、見えない友達が居る。それはぼくにそっくりの形をしていて、ぼくにそっくりの声をしているのだけど、ぼくには見る事ができない。それは魔法使いで、どんな魔法でも使えるけれど、ぼくが一言使うなと言えば魔法を使う事のできないよわっちい奴。
けど魔法使いは誰よりも強い。誰よりも強い僕は、きっともっと強いはず。

「それで、ぼくはきっと呪いにかかった王子様で」
「そんな、妄言ばっかり、」
「悪い魔法使いが誰もが僕を嫌う呪いをかけたんだ。だからお母さんもぼくを捨てたし、町の人は石をなげるんだね」

ぼくは賢い子だから、そういう事はよーくわかっている。悪い事は全部ぼくが眠っている間ぼくに似た魔法使いが悪戯したことで、ぼくは何にも悪い事なんてしちゃいない。朝起きれば暖かいパンが盗んであるし、夜には誰のものかわからない毛布がある。悪口をいう人の口には大きな石を食べさせて、魔法使いは正義の味方!この世界の人はみーんな呪いにかかっているのだから、ぼくが目を覚ましてあげなくちゃいけないんだ。
それにしても魔法使いはずいぶんお母さんに似た事をいうんだね。


―――
(君を殺す世界)