「高級サッカーボール」しか使わないのが我らがシニアチームの流儀である。もはや「普通のボール」などは蹴りたくもない(こうやって人間は堕落していく・・・)。
我々がサッカーを始めた頃からつい最近までは「手縫いの革ボール」が主流であった。タイヤのチューブのようなゴムボールをパンダ柄の5角形と6角形の32枚の革で包むように縫い込んだモノである。
ところで、皆さんはサッカーボールを「解体したコト」がありますか?
「ボールボーイ」のワタシは年に2~3個を切り刻みます。高級ボールといえど寿命は4年程度で「ヘソ」が緩くなり空気が抜けてしまうために買い換えて、古い奴を「燃えるゴミ」に出すために小さく切る必要性が生じるのである。
今回、「従来と大きく異なる製造法で無回転シュートを生んだ」と当時話題になった、南アフリカW杯使用級「アディダス・ジャブラニ」モデルを処分することになった。
で、切ってみたら、何と!夕張メロンのような鮮やかな色彩と、見事な断面構造だったので、興味津々で「解剖」してみた。

なぜかは言わぬが、ワタシは「ゴムには詳しい」。。。。ので、少し解説させてもらいます。
「ヘソ」の部分は、おそらく「天然ゴム成型品」で切り込みを入れて、空気入れの針の出し入れをシールしている構造であり、残念ながら昔からあまり変わらない構造である。(だから、使っているうちに劣化して空気が抜けてしまう・・・)

鮮やかなオレンジ色はガスバリア性の高い「ブチルゴム」の薄く、均一の厚みのシートである。昔の「タイヤのチューブ」のような風船構造ではなくヘソの部分まで完全に密着していた。
「え?どうやって作ってるんだろう?」・・・一応「業界人」の視点から、ここで疑問が生じた。
そして、ボールの断面であるが・・・・4層の均一なラミネート構造で、昔「手縫い」だった部分は「熱圧着」で見事に一体化されている。

驚いたのは、インナーゴムの外側に、化学繊維製の布(ブレード)があり、その外側に発砲させたゴム(いわゆるスポンジ)を挟んで外皮(これも内側は発砲させてある)が均一の厚みでそれぞれが接着/圧着されており、しかも「真円」に近い球状を保っている。。。。
・・ん~! 製造方法が分からん!
手縫いのサッカーボールは「ゴム風船」の周りを革で縫い合わせて、ウマいコト「球形」に仕上げている(すぐ変形したが・・・)。
革張りのボール(バレーボールとか)は、これもゴム風船の周りに接着剤で外皮を張り付けて、外から熱圧着で球形に仕上げた(使い込むと接着面が剥がれて来た・・・)
野球の軟球や、ドッジボールなどのゴムボールは「球形の半分」を金型で成型して、ふたつを接着してボールにした(つなぎ目が分かった)。。。
しかし、この「高級サッカーボール」は、均一な4層構造、しかもインナーゴムは「風船」ではない。要するに、中身に圧力を受けとめるモノが無いのに高圧で外から熱圧着させているのである。。。。作り方が分からん・・・
このボール、アディダス・ブランドだが、製造技術は広島に本社のあるM社のモノである。 恐るべし、日本のモノ作りの技術である。
くれぐれも、「モルテン?安もんジャン!」などという暴言を吐いてはいけないのである。。。。。外側のデザインが違うだけ(素材もちょっとアッチが高級・・)なのである。
ちなみに、ワタシが若いころ、広島に営業マンとして転勤してた時には、当地でM社と戦っていた(たぶん勝ち越したと思ってる)というご縁もある。