組織で生きる主人公が悩む談合に対する葛藤。
それでも懸命に働く内に知らず知らずしていた常識からの逸脱。
学生から社会に出て行く中でズレ始める恋人との関係。
談合をテーマとした企業小説、しかもタイトルが『鉄の骨』と固そうですが、それぞれの人間ドラマが絶妙に描かれ小説としての面白みにあふれた一冊。
ここに書かれているのは、学生から社会人になる時に、その大小はあれど誰もが一度は味わった事のある挫折や苦 . . . 本文を読む
最近の推理小説は捻りが効き過ぎ、それに慣れてしまうと古典作品が妙に物足りなくなってしまいます。
特に短編集ではその傾向はより強くなりますが、本書は仕掛けという意味でも物語という意味でも長編なみに構成され、ひとつひとつが充分に楽しめる内容になっています。
列車に関する作品は個人的な好みもあり、それほど楽しめませんでしたが『五つの時計』、『白い密室』をはじめどれも名作揃い。
ところが、某作家さんがオス . . . 本文を読む
次々に起こる残虐な事件、犯人が息子ではと疑う母親。独自の操作を開始する元刑事。
最後にいわゆるドンデン返しが待っているが、それありきで物語が作られたようにも思えてしまう。
物語にもう少し必要だったのは『残酷』ではなく、味わいある『コク』か。 . . . 本文を読む
文章がやっぱりうまいなぁ、と言うのが感想。
本書にもその名が登場するがSF古典『盗まれた町』を恩田陸的にアレンジした物語。
もうすぐ映画で『地球が静止する日』が公開されるが、いつも時代も人類は征服されたがっているよう。
本書ではSF的なハラハラドキドキではなく、人が根底に持つ多様化の話など、人類の進化に対する独特の考え方が面白い。
読後もなぜか読み終わった気がしないのは、すべてに明確な結論がでない . . . 本文を読む
短編集というのは先が読みにくいところが面白い。
1冊1話という長編では残りのページ数から展開を推測する事ができてしまうからだ。
お得意の犯人当てから有名小説家へのオマージュ、ちょっとした怪奇からラブまでなどなど、玉虫色した作品達を一気に読むのは起伏に富んだ遊歩道を惜しげもなく駆け抜けるような贅沢感がある。
1夜1話という読み方もあるが、本書は頭からできれば中盤まで、可能ならお尻まで読み切り、その . . . 本文を読む
担任の先生を含めたクラスで陰湿だが実態のないイジメにあった主人公はある時、自分の近くにいる『アオ』の存在に気が付く。
通常このテーマの本は黒々とした沈んだ終わり方をするのですが、なぜか本書は晴れ晴れ...とはいかないまでも薄曇り程度で無事に終わります。
ひとは誰しも望まぬ方向に転げ落ちてしまう事があるもの。
その程度の差はあれど、もがき諦めない力、それが生きる力なのでしょうか。
. . . 本文を読む
半分意図的、半分偶然にもしばらく非推理小説が続いていました。
久々のそれは有栖川半分有栖さんの孤島モノ。
帯に「アクロバティックな~」なんて書いてあるので買う方も期待しがちですが、アクロバティックではありません。
背景、そしてシチュエーションが異様ではあるもののドンデン返しを期待して読む一冊ではない。
むしろ『動』と言うよりは『静』の物語。
秘密のニオイのする島に偶然降り立った犯罪学者と推理小説 . . . 本文を読む
某スリーダイヤ系の会社がおこしたリコール隠しをもとに作られた(と思われる)企業小説。
運送中のトラックから脱輪したタイヤが歩道を歩く母子を直撃。
子供はかすり傷で助かったが、母は死亡。
整備不良が事故の原因と一方的に決めつけられた運送業者である中小企業が財閥系自動車会社へ戦いを挑みます。
中小運送業者への根拠なき批判やあからさまな嫌がらせ。それに対する同社社長の奮闘。財閥系自動車会社のリコール . . . 本文を読む
双子と鉄道ミステリーを組み合わせた作品。
どうも鉄道ものは相性が悪く、時刻表を相手に没頭する気持ちになれません。
読後に残るちょっとした悲壮感はあったのですが物足りなさを感じてしまったのは、密室ものに毒され過ぎてしまったからでしょうか。
作中に『アリバイ崩し』をパターン分けした講義が行なわれるのですがこれは必読かも!?
月光ゲーム、孤島パズル、双頭の悪魔のシリーズが非常に面白かっただ . . . 本文を読む
異常な様態を持つ連続婦女暴行殺人事件。
不可解な指示の多い誘拐身代金要求事件。
そして過去に起きたひとつの事件。
これらを"="でつなぐためのキーワードとは何か?
インパクト的には非常に地味ですが、考え抜かれたwhy done itが素晴らしい一冊。
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読みだすと止まりません。
迷路館、時計館に続く2度目の訪問は黒猫館。
記憶を無くした老人が手にしていた手記に書かれた殺人事件。
それははたして事実なのか、フィクションなのか?
トリックのネタを物語に仕立て上げる巧みさ。
そして、それをデコレートする遊び心。
それらが完璧なまでに組み合わさった作品。
2度読むことで、驚愕な仕掛けの伏線をつぶさに読み取ることができ、圧倒的な存在感を感じることがで . . . 本文を読む
迷路館に続き2nd. Trialです。
当時は気が付きませんでしたが、迷路館と時計館は何となく姉妹編のような感じを受けます。
夥しい数の時計に囲まれた空間、夜な夜な目撃される幽霊、そしてそれを探る霊能者と、オカルト風小道具に囲まれてはじまる物語ですが、1頁、1頁進む度にその情景は幻想的なホラーから、現実的な恐怖と怨念に染められた世界に変貌を遂げていきます。
すべての中心ともいえる"館"で起こる . . . 本文を読む
ミステリーにハマるきっかけを与えた一冊。
迷路など、異空間、非日常的な空間、現実から切り離された世界というのが昔から好きでした。
そんな事から単純にタイトルだけ見て選んだ一冊。
何気なく読み進めて行き、最後に待っていた衝撃に唖然。
この作品がはじめて読んだ綾辻作品であり、はまった一冊なのでした。
ところが、初めて読んだときの衝撃は覚えているのに、いざストーリーの細かな点まで思い出そうとすると思 . . . 本文を読む
殺人事件ではなく、殺人事件が起きるまでの過程を過去になかったシチュエーション、視点で描いた一風変わった作品。
前作、”扉は閉ざされたまま”でもそうだったように、派手さはないが非常に凝った作品。
ひとつひとつ事象を検証し解答を導いて行く過程が心地よい。
【読書羅針盤】
睡眠前のひと時にじっくりと読んでみたい度☆☆
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『A列車で行こう』てゲームがありましたね。
聴いた事がないですが、本々はジャズの曲のタイトルのようです。
どちらにしても本編には関係ありませんが(笑)。
いつもの地下鉄の出口を出たらそこは30年前のある日。
それは傲慢な父に反対して兄が家を飛び出し自殺をした日だった。
主人公の身に起きるタイムスリップの連続、そこから明らかになる父の若き日の姿、そして兄の自殺の本当の理由…。
ここまで書くとタイ . . . 本文を読む