映画と音楽そして旅

主に懐かしい映画や音楽について…
時には新しい映画も…

(30) セプテンバー・ソング(映画「旅愁」)

2005-09-03 00:39:52 | 映画音楽
 最近はあまり聴かれなくなったようですが、私たちの若い頃は九月になると、「セプテンバー・ソング」のメロディがあちこちで流れていました。この曲に耳を傾けながら駆け足で去っていった夏の日を思い出しては、なんとなく感傷的な気分になって落ち込むのが恒例でした。
 1952年公開の映画「旅愁」を観たのは私の十代末期、すり切れた古いフイルムを三番館で観た記憶が蘇ってきます。「誰が為に鐘は鳴る」のように映画館の看板に誘われて観たことや、宣伝文句を今でも覚えているのも全く同じでした。
  情熱のパラダイス ナポリ フィレンツェ 
       そしてカプリの島に 燃え上がった熱い熱い 恋物語…
を最近になって、数十年ぶりにビデオで見ることにしました。
 主演女優のジョーン・フオンティーンはこの作品が初めてではなく、以前にビング・クロスビーと共演した「皇帝円舞曲」という作品で見ているのですが、何故か全く印象に残っていませんでした。しかしこの「旅愁」での彼女は見違えるほど魅力的で,共演男優の
ジョセフ・コットンは名前が面白いのと、親しみ易い顔立ちですぐに気に入りました。
 ローマからアメリカへ向かう飛行機が、修理のためナポリへ寄航しました。待ち時間にナポリ見物していた二人は出発時刻に遅れたので、現地に留まり観光を続けました。
 しかし乗り遅れた飛行機が墜落して、乗客名簿に載っていた二人は死亡者扱いされていることを新聞で知りました。そこで二人は全く同じあること…を考え始めます。[二人の愛が奇跡を起したのだ…」と二人は風光明媚なフィレンツェで、新居を借り新しい生活を始めるのですが…
 イタリア各地の観光地を舞台に、旅先での出会い、芽生え始める愛、そして切ない別れ 秋のもの悲しさを思わせる主題曲、感傷的なムードを演出するようなタイトル…などの、メロドラマの諸条件がすべて揃った作品でした。
 これらの要素は後年の「慕情」「旅情」など、私がすでに触れた1950年代の作品に受け継がれ、[哀愁」などと並んでメロドラマの原点とも言えます。
 イタリア各地の観光地で、私が最も惹かれたのがカプリ島です。確か同名のヨーロッパタンゴがあったような気がするのですが…。この島には有名な「青の洞窟」があり、水面下に太陽光が反射して洞窟内を青色に染め、満潮時には水中に沈むのでこの洞窟を、訪れることが出来るのは僅かな時間だといわれます。
 火山灰に埋もれていたポンペイ遺跡、花の都フィレンツェ ダヴィデ像 天国への階段等々観光資源の紹介も忘れていません。
 モノクロ作品ですがこれが光と影の鮮烈なコントラストで、彼女の美しさを一層引き立てていたような気がします
 彼女が戦前の東京育ちであることや、「風と共に去りぬ」のメラニィ役 オリヴァー。デ・ハヴィランドの妹であることや、女優としてもこの二人はライバル同士だった事は有名な話です。
 主題歌の「セプテンバー。ソング」は二人がナポリに着いて、景色を眺めながら「最高の食事とワインと音楽が一度に味わえるなんて…」という華やいだシーンと、フィレンツェの酒場で出会ったアメリカ人が歌う場面などで挿入され、旅先でのうたかたの恋の哀しさを象徴しているように感じました。
   残された月日もあとわずか 九月 十一月
   ワインの香りもあとわずか 残された時間もあとわずか
   この大切な年月を 君といっしょに過ごしたい (画面スーパーより)
 主題曲「Seputenbar Song」はヴィクター・ヤングの初期の作品ですが、私のCD Boxの中のフランク・シナトラの歌は、虫の音と共に忍び寄る秋の感触を、尚一層確かなものにしているように感じるのです。
                                    たそがれ