ペーパードリーム

夢見る頃はとうに過ぎ去り、幸せの記憶だけが掌に残る。
見果てぬ夢を追ってどこまで彷徨えるだろう。

檀・真弓・マユミ考

2012-01-08 02:14:26 | 歌を詠む
120107.sun.

いつもの散歩コースの反対側の道を歩いたら
薄桃色のかわいい小粒の実がはじけて
たくさんぶら下がっている木を見つけた。
 

檀(まゆみ)の木。
真弓とも書く。
よくしなる強い材質で、古くから弓の材料となっていたようだ。

万葉集にも詠まれている。

<天の原振り放け見れば白真弓張りて懸けたり夜道はよけむ>

白真弓は檀の白木で作られた弓のこと。
ついこの間、年末に見た三日月を思い出します。
1400年も昔の夜空にも、
そんな弓を張ったようなシャープな三日月が出ていたのかな。
それを見て詠んだ万葉人がいるなんて、
過去が俄然身近に感じられますよね。

白真弓は、「張る」「ひく」などの枕詞でもある。

もうひとつ。檀紙(だんし)という紙がある。
縮緬状のしぼのある和紙で、檀の木を原料として作られていた。
「いた」というのは、今は和紙の原料は
すっかり楮(こうぞ)に代わられているから。
檀紙は和紙の中でも一番格式の高い紙で、
古くから朝廷や幕府の公文書に用いられていたのだとか。
現代では、普段に使う熨斗袋は当然洋紙で、
印刷されたものがほとんどだから、なかなかお目にかかれないですけどね。
現在でも宮中の儀式や行事では檀紙が使われているそうです。

そうそう、2010年に歌人の栗木京子さんが
『しらまゆみ』という第7歌集を出されている。
栗木さんの代表歌のひとつ、
<観覧車回れよ回れ想ひ出は君には一日(ひとひ)我には一生(ひとよ)>
の色紙が実家にあるのと、
一度講座でお話をさせていただいたことがあるので
勝手に身近に感じていることもあって、思い出した。

『しらまゆみ』より 好きな歌
<少女らは大縄跳びの輪に入りぬ肩の先から流線ゑがき>
<一本づつパジャマに脚を通しをり明日より若い今夜のわたし>
<池の中に亀入りゆきて亀の見し大夕焼も水に沈みぬ>

さて、
檀という字を書くからには栴檀(センダン)と関係があるのだろうか、と
気になって、調べてみました。
栴檀は昨秋11月に、京都御所で見たばかり。
 

優れた人物は子供の頃から他の人と違う優れた面をもっていることをいう
「栴檀は双葉より芳し」という諺があるでしょう。
ここで言う栴檀は白檀のことなんですって。
香木である白檀は、双葉の頃から香りを放つため
そんな諺が生まれたようです。

そういえば、詩人のKさんの息子も、確か檀(マユミ)君だったな。
なるほどねえ、と、
3年ほど前に会ったきりの彼の聡明そうな瞳が蘇ってきました。

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3 コメント

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そうでした! (kikkoro)
2012-01-10 02:56:58
飛騨の友人、小夏ちゃんからコメントが!
そうだったの。
2年前に遊びに行ったとき、
確かに酒蔵で「白真弓」を買いました!
すっきりとしたのど越しのよいお酒でした。

・・・・・

飛騨古川に昔から親しまれている「白真弓」という地酒があります。
造り酒屋さんのサイトを見てみたら名前の由来は飛騨の枕詞「しらまゆみ」からだそうで、万葉集に
「しらまゆみ 斐太(ひだ)の細江のすが鳥の妹に恋れか いをねかねつる」(巻代十二)
という歌があるそうです。

白川郷出身の白真弓肥太右衛門という力士もいたそうです。
Unknown (ふくろう)
2012-01-10 13:19:39
鎌倉荏柄天神でミツマタの花が咲いていました。
マユミの花のように 下を向いて・・ でも うす黄色で あまり可愛くないですが。
マユミの木は 良くしなるので 漆べらに使われています。今も大切にしています。
Unknown (kikkoro)
2012-01-10 13:31:55
ふくろうさま

釣鐘上の小さな花は、なんかこういじらしくて
気がつくと目が離せません。
漆べら!
弓だけでなくそういうものの材料でもあるのですね~。

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