ことばを鍛え、思考を磨く 

長野市の小さな「私塾」発信。要約力、思考力、説明力など「学ぶ力」を伸ばすことを目指しています。

「てきとうな」文

2006年04月17日 | ことば・国語
小学生の国語で、どう考えても間違うはずのない問題が、すべて×の子がいました。
内容は、文の途中に入る言葉を2つの選択肢から選ぶだけのもの。
たとえばこんな感じです。

「ものがきえただなんて、おかしな〔ア・話 イ・本〕があるものだ。」
「たこあげ大会で、お父さんが作った大きな〔ア・はこ イ・たこ〕をぼくはあげました。」

    
無学年制の問題集で、やっていたのは6年生。
やや国語が弱いとはいえ、レベル的にはスラスラできて当然の問題です。
ところが、みごとに全部逆に答えているのです。
思わず「えーっ!?...なんで?」と固まってしまった私...。

問題文を読んで「アッ」と気づきました。
「てきとうな文になるよう、...」

彼女は「てきとうな」を、「ふさわしい」という意味ではなく、「いい加減な」という意味に解釈していたのです!
だから自信を持って、いい加減な方(間違いの方)を答えていたんですね。

考えてみればこの「適当」という言葉は、ほぼ正反対な2つの意味に解釈できる不思議な言葉です。
たとえば英語なら、全く違う単語ですもんね...。

上司から「適当に処理しといて」と言われたら、あなたならどう対処しますか?
上司との付き合いが長ければ、あうんの呼吸でどの程度の仕事をすればいいかわかるのでしょうが、そうでないと判断が難しい...。
ベストを尽くせとは言われていないけれど、あまりいい加減でも怒られそう...。

一方、使う側にとってはこんな便利な言葉はありません。
いわば相手に判断を丸投げしているわけですから...。
多くの場合、レベルの高い仕事は求めていないと思われますが、それなりに「ふさわしい」対処は期待しているようです。
この言葉の曖昧さをうまく使って、一言で両方の意味を含ませているんですね。

日本語には他にも、正反対の2つの意味に取れる言葉がありますね。
よく言われるのは、セールス電話を断るときの「結構です」「いいです」
相手は勝手に(というか無理やりに)OKの意味に解釈してしまいます。
断るときは、はっきり「いりません!」と言わなければダメです。

ともあれ、教材の問題文では自分の都合のいいように勝手に解釈するわけにはいきません。
判断を任されても困ります。
誤解の生まれないように「ふさわしい文」とか「正しい文」という表現を使ってほしいですね。


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