<回>
宮古のバーの店内で、カオリママの話しをしばらく聞かされているうちにマッチ棒も酔いがまわってきた。話しの節々に隙間があると、そこでマッチ棒が東京であったことを話したくなり、何度か池袋に行った事を口にしようとするが、カオリママは『黙ってなさい』と言わんばかりに緩んだ口をカオリママの語りで塞がれた。
「おまたせ」
エリコが着替えた衣装は、下がホットパンツに上はジャケット姿。そしてブラジャーがまざまざと見え、上下黒色に纏った出で立ちだった。それに膝上まである黒のブーツを履き、エリコはステージまで歩いていくと、ポールダンス用のポールを布で持ち上下に細かく拭き始め、柔軟体操も行っていた。
「今まで見たことある?」
「いいえ、初めてですこういうのは」
マッチ棒はその姿に見惚れていると、カオリママがハガキサイズのポストカードをマッチ棒に手渡した。
「足の部分がエリコの足だから」
カードに写っている写真は、背景が赤色で黒のブーツを履いた片方だけの足がエリコだと言っていて、マッチ棒はそのカードをよく見ると、前に働いていたお店のチラシ用のカードだった。
カオリママはマッチ棒をそのままにし、店の隅に向かい音楽をかけ、店内はジャズが鳴り響いた。
スポットライトがエリコがいる銀色のポールを照らすと、ミラーボールの輝きまでもが店内中を彩り、最初に入った時のイメージとは見違えるように変わった。
「ディスコ調のかける?」
「いいえ、このままでも」
「古いのよねーあたしら」
カオリママは何を言いたかったのかは知らないが、ラテン系とユーロビートが流行るバブル景気の中で、南国から訪れたフィリピン人とは相性が悪かったとでも言いたげな様子にも伺えた。
「4番お願いしまーす」
エリコがそう言うと、カオリママは隅の方へ行くと色っぽく軽快なジャズが鳴り出した。
胸はそんなに出てないが肩幅が広くお尻も広く見えるエリコが右手にポールを握り始めると、左手を垂直に開き、ブーツでコツコツ踏み歩いてポールを起点に回り始めた。
背中を向くと、ホットパンツからはみ出る太ももとヒップライン。そして正面を向くと黒のブラジャーがむき出しに見え、目と目が合いそうになり目のやり場に困ったマッチ棒は、エリコの三角状になった下半身を想像した。
『いやらしい!』
天井から後頭部に向けてエリコの声が聴こえたようにも思えた時、エリコの足はポールにからめ身体ごと宙に浮いていた。宙に浮いたエリコの太ももは、銀色のポールに絡み合い黒との隙間から見えるエリコの白い肌でマッチ棒は心底目が回った。
カオリママがカウンターを隔てて背後からエリコの踊りを見ているのに気付いたマッチ棒は、手に持っていたチラシのカードに写るエリコのブーツに指をあて
「ここで働いてたんですか?」と、改めて尋ねると
「詳しいことは、あとでエリコから聞いたらいいよ」と、返事がかえってきた。
「は、はい」
(あとでって!)
(あとで聞いたらって…何?)
マッチ棒は『あと』の事が気になり踊りから目が離せなくなった。そして、エリコの演舞に魅了し、更に酔いが回った。
ゴールドラッシュ池袋イーストヘルス: える天まるのブログ灯の果て夢の果て続編 (灯の果てノベルズ) | |
クリエーター情報なし | |
メーカー情報なし |