前回
③ニートクリスマスハートビート
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クドウが俺の部屋に泊まってからの数日後の夜。また前ぶれもなく、いや今度は泣きべそをかいて俺の家にやって来た!。
どうやら、家族と揉めたらしい。俺が察するにクドウのお父さんと喧嘩したようだ。細かいことは、俺もクドウも聞きも話もしないが、少なくとも俺の家からクドウは朝帰りを二回している。
12月といっても、クリスマスの日にはまだ早い。
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(まだ早いのに)
(そんな姿で家の中をウロウロしたら、両親は黙ってないだろ!)
(たぶん試着していたのだと察したが!)
(気が早いっつうんだよクドウ・・)
「何日か泊めてくれる?」
「何日かって心配するんじゃないのか?」
「心配しないよ、近くだし」
(俺がクドウの家に連絡してからのこと)
(家電で家族からクドウに繋げてもらってからのこと)
(クドウの両親もどこに飛び出して行ったのかは?わかっているだろう・・)
「寒い」
肩を震えさせ首を短くして入ってくるクドウ。
「俺の服でいいなら着ろよ」
「たいして着れるような家服持ってないけど」
「お風呂も沸いてるから暖まれよ」
「うん」
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あの日会ったクドウと泣きべそかいてるクドウ。意外と思える部分もあるが、クドウらしいと思える部分もあるのだ。少しひねくれた部分、それは高校に入ったぐらいから感じていた。
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(クドウの学生時代は学力は優秀)
(俺が思うかぎり、通信簿はオール5だ)
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(しかも小学生の頃から健康優良児)
(健康優良児で小学生の代表にもなっている)
(俺とクドウが卒業アルバムに一緒に写っているのは小学5年,6年)
(それ以前の事は曖昧)
(とにかく5年、6年が強烈に残っている)
「5,6年以外に同じクラスになったことあったかな?」
「アララギは3,4年はあの先生でしょ 1.2年はあの先生」
「あの先生はさー・・・」
(クドウはその頃から記憶力がよかった)
(そして運動神経もいい・・)
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(俺とクドウが話すときは体育の授業の時ぐらい)
(ガリ勉タイプなら、可憐なクドウになっていたのかもしれないが)
(クドウは運動が出来て男勝り)
(運動がそれほどでもなかったら、俺を相手にはしなかっただろう)
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(俺の想い出にあるクドウは校庭の日差しと体操服)
(そこから見える白い肌と二の腕)
(そして太もものイメージが強烈に残っている)
(年に一度の運動会と5,6年生から参加する陸上競技会)
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俺とクドウは走り幅跳びに参加していた。クドウは足も早くトラック競技にも向いていたが、陸上競技会ではクドウは走り幅跳びを選んだ。俺はトラック競技よりフィールド競技の方が上位を狙えると思い、走り幅跳びを選んだ。
陸上競技会はまずは学校内で行われ、上位者は学校代表として他の学校の生徒たちとの陸上大会に出場する。勝ち進めば全国大会。もっと先にはオリンピックも夢ではない世界だ。
しかし、俺の小学生時代予選会の走り幅跳びでは6位入賞がやっとだった。俺は校内6位入賞では学校の代表どころではなかった。クドウは校内で優勝。学校代表で陸上大会にも参加していた。
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俺がクドウを意識したのは、運動会や陸上大会などの体育イベントがあるときだった。運動会の男女混合リレーでクドウと組んだことがあり、俺はクドウとバトンの受け渡しの間に体育ロマンスを感じた。
俺は競技中、とにかくクドウを意識していた。何より、大会数日前の練習期間と競技期間中は俺とクドウとの会話が弾んだ。
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走り幅跳びとなると男子選手が行ってる間は女子選手はそれを側で見ていた。幅跳びのクラス代表の俺にクドウは話しかけニッコリしていた。フィールド内にいるのは俺とクドウだけ。最も近い男女の仲が2シーズン続いた。
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クドウと気が合ったのは体育と陸上競技でのことだった。体育以外ではクドウの相手にならなかった俺は、中学で陸上部に入り、走り幅跳びより走り高跳びを選んだ。その時、なぜかクドウも陸上部に入部したのだ。
クドウが入部した当初、誰もが健康優良児のクドウを大歓迎していた。だが、その半年後ぐらいにクドウは退部した。
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そのわけを大人になってからクドウからそのことを聞いた。
「あの頃 ピアノもやってたから」
「あー合唱部とかにも入ったんだよな」
間近に見てもクドウの指は長く声質もいいのだ。歌声になると更にいい。
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「そういえばピアノコンクールがあって」
「俺知らずに会場覗いたらクドウが弾いてて」
「それも関係者以外立ち入り禁止のところで見ちゃってさ」
「いつよ?」
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「んー小5?んー小6ぐらいかな」
「雪降ってた頃だ 休日外で遊んでて寒くなって」
「あそこのホールに入ったんだよ」
「そこってどこよ?指で示さなくてもさー」
クドウは俺の示した指を叩いた。
「俺んちからあっちの方向にあった場所の」
「名前出てこないんだよ」
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「あの時ピアノコンクール、クドウが弾いてたのを俺観てたから」
「あの頃からピアノも習ってて」
「陸上部に入ったけど、親が厳しかったからさ」
「勿体ないな、あれだけ運動も出来たのに」
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「アララギ中学の時、高跳びの成績良かったじゃん」
「地元でよくても他じゃ全然さ」
「三年の時2位だったろ?」
「勝ったのは部員不足で出られなくなったあいつが高跳びに来て」
「優勝してさ、運動神経はあいつの方がよかったからな」
「あとは飛び方、俺は幅跳びの癖があって踏切が斜め上に飛ぶんだよ」
「だから触れるとバーが落ちやすい」
「あいつは、踏切もバーから真上に飛んでさ」
「触れてもバーが跳ねても落ちずに残れた」
「飛び方さえちゃんとできれば、運動神経の良い方がより成績がいいんだよ」
「カノは凄い凄い言ってたじゃん」
「女子は凄い言うけど、男連中は現実わかってるから」
「誰も凄いと思ってないよ」
「あたしは、アララギのその足凄いと後から思ったけど」
「あたしを蹴った時、瞬時に力抜いたでしょ?」
「蹴ったこと覚えてたか、俺も覚えてる」
「クドウが生理用品のこと、日記に書いて先生に提出してたのを俺が見ちゃってさ」
「男連中でからかってたら怒ってきて」
「クドウが俺の前まで走って向かって来たときに足上げてさ」
「上げた足が胸にあたって泣いたもんな」
「あの後俺すげー先生に怒られたけど」
「あれもっと足伸ばしてたらあたしひっくり返ってたよ」
「あれ、胸にあたる手前で足引いたでしょ?」
「あの勢いで向かって来て、あの勢いで足で蹴ったら」
「胸にあたってラリアート状態になってたからな」
「でも、あのときは悪かったな」
「胸にあたって痛かったけど、忘れてなかった」
「今日もここに来たら生理来ちゃってさ」
「あんたそれでもやるんだ!って思った」
「どういう訳か生理には縁があったみたいだよな」
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クドウは俺の運動神経のセンスに気が合ったようだが、普段着は制服以外の私服をさほど持ってはいなかったようだった。
「これさ、監獄のお姫さまに出てくるのみたいじゃん」
「今ある家服これしかないんだよ」
「しまむらには女子用でもっとちゃんとしたのが売ってるけど」
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12月に入りクドウと俺は二世帯住宅というか、半同棲状態になった。
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