たびにでるたび

***旅に出るたび **胸につもる何かを *ほんの少し、眠る前に

満月の少し前

2013-08-21 00:07:31 | Weblog
満月の少し前、
小さなイライラが溜まって
耐えきれなくなった私を
友達は外へと連れ出してくれた
月の明るい晩で
街灯もないのに
友達の顔がはっきり見えたから
私の顔もはっきり見えたと思う
外に出てやっと
息苦しさを忘れられた気がして
私たちは暗い道を歩きながら話をした
不満や愚痴や普段なら口にしない小さなこと
吐き出してしまえば容易く軽くなって
それなのに抱え続けるのはやはり難しい重さだ
私たちは何かに怒ったり
冗談を言ったりしながら
急がずに歩いた
月は木立の隙間から、
私たちをそっと見守るように
あるいは内側まで照らすように
秘密みたいに美しく鋭くて
私たちは自由で真摯だと示してくれた

人と比較することでしか
幸せになれない人がいること、
それが案外多いということ、
そこに巻き込まれたくないということ、
自由を妨げるものから離れたいこと、

本当はきっと
話さなくてもお互いに知っていて
ただ言葉にして吐き出したかっただけ

そうして私たちは
満月の日の前に
生活の小さな自由を手に入れることにした
公然と公明正大に
それはちゃんと私たちのものになる
私たちが自由に生きるための
ご褒美のような寛ぎだ