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「場所」 アニー・エルノー  堀 茂樹訳  早川書房

2005年02月18日 | ’05年読書日記
これは、フランスの労働者階級の家に生まれた筆者が、その父親の生と死を、淡々とした文章で語った本です。

筆者は、学校で優秀な成績を収める事によって父親の階層から脱出し、物質的にも文化的にも優位な階級の仲間入りをします。

本書の翻訳者、堀茂樹さんのあとがきが素晴らしく分かりやすいです。
なぜ、彼女がこの本(父親の思い出、と言うよりは記録、と言った方がいいほど淡々としている文章です)を書いておこうと思ったのか、堀さんなりのお考えを示しておられ、それに納得できる部分が数多くありました。


私が驚いたのは、あとがきにありました、次の文章です。

『JPサルトルの(文学とは何か)、の中に、
「われわれ(フランスの作家)は世界の中でも最もブルジョワ的な作家なのである」
と言う有名な言葉がある。
ルイ=フェルディナン・セリーヌや、J・ジュネのような巨大な例外の存在にもかかわらず、フランス文学は知的に洗練された都会の裕福な階層による、その階級のための、その階級の文学と言う色彩が伝統的に際立っている。』

フランスは、英国よりははるかに平等社会に近いのだそうです。
にもかかわらず、文学の類は、金持ちにしか関係ないってのはちょっと…。
いかがなものかと思います。
だってそういうものなんだと言われてしまえばそれまでですけれど、
労働者階級の人が楽しめる文学があってもいいんでないの??
本を好きになる、ならないに階級なんて関係あるんでしょうか??

「読書は金持ちのインテリのもの」だなんて考え(或いは事実)、
わたしは嫌いです。



この、「場所」ですが、文章が余りに簡潔で感情をはさまない為、(散文的って言うそうですね、こういうの)
作者が父親を愛していたのか、憎んでいたのか、軽蔑していたのか、或いは尊敬していたのか、文章をさらりと読んだだけでは伝わってきません。
しかし、そういう文章で書いたからこそ、事実だけが(作者の感情、想いとは関係なく)しっかりと伝わってきます。

アニー・エルノーの小説を、他にも2、3読んでみたいと思いました。







や、やったー…。
久しぶりに感想が書けたぁ~~~~。

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