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「ぼくのともだち」 エマニュエル・ボーヴ  白水社           渋谷豊:訳

2005年12月28日 | ’05年読書日記

 
作者紹介:エマニュエル・ボーブ(本名エマニュエル・ボボヴニコフ)
1898年、パリ生まれのフランス人作家。父親はロシア生まれのユダヤ人。母親はルクセンブルク出身。
両親ともにフランス語が不得手であった。家庭内の会話は片言のドイツ語であり、子供を学校にも通わせていなかった。
父親は賭け事と女漁りにうつつを抜かすでたらめな人間であったが(訳者あと書きのそのままの表現を使いました)裕福なイギリス人女性を愛人にした。ボーヴはこの女性に可愛がられ、この女性の影響から知的刺激に満ちた幸福な少年時代を過ごす事となる。
生前は文学賞を受賞するなど人気作家であったが、’45年に他界すると、しだいに作家ボーヴの存在は忘れられていったが、1970年代後半ボーヴ作品の復刊が始まリ、その後確実に新しい読者を獲得し続けている。

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@感想@

主人公は戦争から帰ってきて、ひとり暮らしをしています。
どうしても「自分の事を分ってくれる友人」が欲しくて、いろいろな人と出会うたび「この人こそは」と思うらしいのですがなかなかうまく行きません。
しかし、彼の行動を見ていると、どうも「友人が欲しい」のか「自分をあがめてくれる自分だけの操り人形」が欲しいのか、どちらだろう?などと疑問に思います。
さまざまな階級、立場の男女と出会い、結局うまく行かなくて関係が終わってしまう主人公ですが、物語の中ほどで「今にも自殺してしまいそうな男性」と知り合います。
ここでのくだりがかなり笑えました。
「自分に興味を持たせよう」と一芝居うったのはいいのですが、危うく無理心中一歩手前のところまで行きます。
結局最後まで友達はできなかった主人公ですが、いろいろと、わたしの心に残った文章がちりばめられていて、暗いテーマながらユーモアも感じさせる、佳作だと感じました。

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「サルトル集」 ジャン・ポール・サルトル 世界文学全集64    筑摩書房

2005年12月02日 | ’05年読書日記
フランスの哲学者・文学者であるサルトルの短編集です。
最初に告白しますが、全部は読んでいません。なので、読んだところだけ感想書きたいと思います。


@この本に収録されている作品@

①壁 …「死刑」を明日に控えた主人公の内面

②部屋…進行性の精神病にかかった夫に尽くすエヴ、離婚しなさいとエヴを説得したいがうまく行かないエヴの父親 

③エロストラート… ある晩「人間どもを撃ってやろう」と決心した主人公。それを実行に移し、追われる身に。

④水いらず …不能の夫に見切りをつけて別れようとするリュリュ。リュリュをしつこく追いかける夫。

⑤出口なし…あるホテルの1室に集められた3人の男女。3人とも知らぬもの同士だったが、ある時点で3人の共通点が明かされる。3人の共通点とは…「既に亡くなっていて、地獄行きが決定している」という事。3人でいる事自体が地獄であった。

⑥恭しき娼婦 …口のうまい客(アメリカのお偉いさんの坊ちゃん)にいいようにだまされ、手玉に取られる娼婦と黒人。

⑦狂気と天才…イギリスの人気舞台俳優が、頭のいい女性とであって、これまでのうんざりするような生活から抜けだす。

⑧アルトナの幽閉者(途中までしか読んでいません)

⑨トロイアの女たち (全く読んでいません)

①~④までの作品は、小説形式で書かれています。
⑤~⑨までは、戯曲形式で書かれた作品です。
全部読みたかったんですけど、一回貸し出し期間延長しても読めなかったので諦めました。



こう、あらすじを書いてみると、けっこう重いですね。暗いというか。
この記事で書きましたが、私は学生時代哲学の授業がとっても嫌いでしたし、サルトルが唱えたという「実存主義」っていうのが一体どんな考え方なのかも全然知りませんが、哲学者であるサルトルが書いた小説は好きです。
なんで好きなのか、さあ考えてみよう!…とか思いましたが…よく分らないなぁ、何でだろう。
…小説を読んでいると、たまにですが、「この作者の、人間に対する考えかたって浅くてつまんないな」…などとクソ生意気な事を考えてしまうんですが(正直、日本の女性作家が多い)サルトルのそれは深い。深い深い深い、もう、どこまで深いの~???と不思議になるくらい深いなぁ~とか思うわけです。
人間の欲とか体裁とか、本能とか或いは愛情とか悪いものから美しい(といわれる)ものまですべてお見通しで、「こんな人と付き合っていたら、全部心の中見透かされてしまいそうで怖いな」などと思います。

8年ほどまえに新潮社文庫の「水いらず」を読んだ時に、「こんな小説書く人はきっと、いい男に違いない!」…などと勝手に想像していましたが、写真のサルトルは~少年時代はとっても可愛いですが~たいしていい男ではありませんでした。
シモーヌ・ド・ボーヴォアールとは一生恋人関係だったそうですが。
ボーヴォアールの「第二の性」とかいう論文みたいな作品を8年位前に読みましたが、その本では、「ガリガリのフェミニスト」という印象でした。

「実存主義は、戦後衰退の一途をたどる…」などと、どこかの何かで読みましたが、その実存主義を唱えたサルトルの「文学作品」の方は、戦後60年経っても、こうして田舎の一主婦の心を感動させたりするわけです。


この本の中では、「出口なし」が、意外な結末?展開?を見せていてとくに面白く思いました。





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