nursling,

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体は全部知っている  吉本ばなな  文藝春秋

2005年06月28日 | ’05年読書日記
吉本ばななさんの、短編集です。
中に入っている短編のタイトルは、

*みどりのゆび
*ボート
*西日
*黒いあげは
*田所さん
*小さな魚
*ミイラ
*明るい夕方
*本心
*花と嵐と
*おやじの味
*サウンド・オブ・サイレンス
*いいかげん

…となっています。

この方は有名な作家ですが、私は”流行っているものはなんでも避けたい”…という変なくせがあり、今まで一冊も読んだことがありませんでした。(読まず嫌い、ってやつでした)

今年に入ってからのこのブログを見れば分かるんですが、私はあまり日本の女性作家の本を読みません。(日本の男性作家、と言うのも少ないけど)

その、数少ない日本の女性作家たちの作品と比べると、(比べるのはもともと好きじゃないが…)この人は「格が違う」…みたいな感じを受けました。

人間観察が鋭い!そして深い!すごいぞ!!…と、感銘を受けました。
「あー、そうそう、そう言われればそうですよね!」と納得するところが沢山ありました。

*ボートでは、アル中で、「私」を引き取る資格がない、と言われ数日間「私」(主人公)を連れて逃亡していた母親の思い出を語っているところが、不覚にも泣きそうになる位によかったです。

また、*ミイラは、偶然出会った同世代の男性に、数日間軟禁状態に置かれた女子大学生の話ですが、実際軟禁状態にされるのはたまったもんじゃありませんが、最後に書いてあった文章がなぜか深く共感できるものでした。

***************************************
「ミイラ」…の最後の部分

ものごとはふつう、いろいろな角度から成り立っている。

+中略+

時々思う。しかし今の、いろんなことをたように含んだこの生活の方が、絶対に、正しくて幸せなのだろうか?
あの夜、目を開けたまま抱き合って布団の中で聞いた雷の音の美しさ。もしかしたら、私は、あのままあの世界から出る事が出来なくなっていたかもしれない。

想像する。たとえばあの猫のように、ミイラにされてしまった異次元の私を。たとえば私の、息が出来なくなるほどの愛情に打ち壊されて頭を割られて死んでしまった彼を。
それはそんなに悪い事にはどうしても思えなかった。

***************************************
他に、田所さん、サウンド・オブ・サイレンス、おやじの味、いいかげん…など、ああ、いいなぁ、と思った短編が他にいくつもありました。

また、この作家の他の本を読んでみようと思います。





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ピエールとクロエ   アンナ・ガヴァルダ  新潮社

2005年06月28日 | ’05年読書日記
夫から離婚を切り出され、失意の最中にある女性(クロエ)が、夫の父親(義父・ピエール)の誘いで仕事をしばらく休み、娘とともに義父の実家で過ごします。
そこで、クロエは、いままで冷酷で嫌な人のイメージしかなかった義父のいろいろな打ち明け話を聞き、今までと違った角度で夫の父親をとらえはじめます。


…という話ですが、このお義父さんにとって、自分の結婚はあまり幸せなものではなかったようです。
浮気(本気?)していますし。父親は家族の元にとどまりましたが、その息子も、同じように浮気をして、息子は家族からはなれる事を決心します。

幼い頃から心の通い合わない両親を見て育ったためなのか、父親の二の舞いにはなりたくなかったのか。

クロエは、ピエールの事を「愛情のかけらも持たない、クソ親父」…だと思っていたわけですが、ならばなぜ、ピエールの勧めに従って彼の実家などへ行こうとしたのかがちょっと疑問です。

ピエールは離婚はしなかったものの、心の通い合わない結婚生活に思いをはせ、後悔の念にさいなまれていますが、同じく結婚に失敗してこちらは離婚が決まってしまったクロエは、これからどのような人生を送っていこうとするのかが少し興味深いところです。






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「泣きたい気分」 アンナ・ガヴァルダ 新潮社

2005年06月14日 | ’05年読書日記
作者は、1970年生れの、中学校に勤務している女性だそうです。
200ページほどの本の中に、12の短篇が収められています。

原題は、

Je voudrais que quelqu’un m’attende quelque part (誰かにどこかで待っていて欲しい)

…だそうです。

原題、邦題ともに、かなりかなしい話を連想させますが、文章は口語体(話し言葉)でユーモアがあり、読みやすかったです。


すみません、つづきはのちほどpcから…

ppppppppppppppppppppppppppppppppppppppppppppppppppppppppppppppppppppp
ccccccccccccccccccccccccccccccccccccccccccccccccccccccccccccccccccccc

内容は、「悲しくてやりきれない気分」の人々が出てくるものが多かったのですが、それがくら~く感じられずに、テンポよく読めるのは、やはり作者の文章にそうさせるものがあるからではないかと思います。
この本は、1999年に出版され、フランスではベストセラーになったそうです。





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嫉妬 アニー・エルノー 早川書房

2005年06月13日 | ’05年読書日記
nasusabuさんのブログを拝見して、この本に興味を持ちました。

本の名前は「嫉妬」となっていますが、一冊の本の中に、「嫉妬」「事件」と、二つのお話が収められています。
嫉妬の方は、付き合っていた彼がもうひとり彼女を作ってしまい、その彼女の事を知りたくて知りたくてたまらなくなり、そのことに心を占拠されてしまったという内容です。
私は全然惚れっぽくない人間なので、こういう経験もない…のですが、ここまでひとつの物事に意識が集中して抜け出せないのは、やっぱりちょっとキツイだろうなぁ…。

「事件」の方は、産むつもりのない子供を妊娠してしまった女子学生が、「法を犯して」堕胎をするくだりがえがかれています。
(法を犯して…この頃のフランスでは、堕胎は禁止されていたようです)

堕胎が法で禁じられている為、誰にも大っぴらには頼れず、なんとか手術してくれる人を探す主人公。
結局失敗し、病院で処置を受けるのですが、ここでまた、「労働者階級への差別」が描かれています。
フランスでは、日本より階級意識が強いんでしょうか。
「階級意識」というものが、どうも好きではない私がもしフランスに住んでいたら…労働者階級に属していてもいなくても生活しづらいかもしれないな、などと思いました。







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蓼喰う虫  谷崎潤一郎  岩波文庫

2005年06月07日 | ’05年読書日記
妻とは「肌が合わない」からと、妻が愛人を作るのを(積極的に)容認し、円満に離婚する為に模索している主人公のお話です。

この本の中に
 
「要にとって女というものは神であるか玩具であるかのいずれかであって、妻との折り合いがうまく行かないのは、彼から見ると、妻がそれらのいずれにも属していないからであった」

…という一文があります。
「神」か「玩具」ですか。ふ~ん。ずいぶんな事いいますねぇ。(T_T)/~~~
いずれにしろ、人間扱いしてないってことですか。
でもそれがこの人(要)の本心で、正直なところなんでしょう。

「妻も自分も傷を負わず、3人(自分、妻、妻の愛人)にとって一番いい方法を取ろう」とするあたり、要は妻を人間扱いしている、とは思えます。

この主人公、いつまでもぐずぐずと結論を出さないで、「どうやって妻の親に話そうか」とか、「子供にはいつ切り出そうか」などと考えてばかりいるのですが、「誰も傷つかずに離婚する」こと自体どうやら無理そうなので、なかなか結論が出ないのでしょう。
結局子供には自分のいとこから離婚の事を切り出されたりしています。

ラストは、わざとこういう終わり方にしたのでしょうが、少々尻切れトンボな感じを受けました。




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とけい

ぽいんとぼきん