プロ野球でジャイアンツが絶好調なのは周知の事実だが、いまいちセ・リーグは盛り上がりに欠ける。視聴率復調の噂も耳にしない。パ・リーグもWBC活躍組の強豪チームの調子が上がらず、思惑外れといったところ。むしろ元気なのはスター選手を迎えたオリックスだったりして、話題の中心の移り変わりのめまぐるしさに、ある意味まだプロ野球人気は衰えていないことを確認する。
そしてここにきて話題を掻っ攫っているのは、新庄剛志選手。この人の天性のマーケティング力には敬服する。限定品マーケティング―いわゆる限定品になびく消費者心理が働き、今シーズンの日ハムは観客動員数を伸ばすだろう。今年新庄のプレイを見なければ、もう見られないっていう焦燥心理。もちろんマーケティングには継続的発展という視点も一方では必要。本来経営視点でこだわるべきはそこだろう。でも新庄は選手。あくまで人間である以上命や身体能力という限定品であることには違いがない。この2つがうまく絡み合えば、シナジーを生む。こんなことを考えて(いや、考えていないかもしれないが)立ち振る舞った選手はかつていなかった。だから新鮮に映る。それにしても、新庄にしろ、清原にしろ、選手としての成績や活躍の見込みを差し置き(もちろんないわけではないが)、スター性・話題性を優先して慰留したり、トレードで迎え入れたりする球団のスタンスにも時代性を感じる。
イメージリーダーがいかに大切か。ジャイアンツの不幸は、もはや現役監督でも選手でもない長嶋さんをいまだ引きずっていることだろう。もちろん暗黙のイメージリーダーの老獪さもアダになっているのだろうけど。軽薄イメージの新庄と長嶋さんたちを比較すること自体、往年のファンには論外なことだろうが、伝統の重みとともに「今輝くこと」「常に新鮮な話題を提供すること」が求められる。プロ野球はエンターテインメントなのだから尚更のこと。
他の企業も同様に、根っこの信頼感を形成する財務力や過去からの積み重ねとともに、今輝くこと、輝きを体現するイメージリーダーが必要。特に移ろいやすい消費者に対峙するコンシューマービジネスは大変だと思う。
*余談ですが、もうすぐFIFAワールドカップドイツ大会ですね。まだ盛り上がりに欠ける気もしますが、もう少し日が迫れば変わるかもしれません。話題沸騰には何よりも勝つことが特効薬。WBCがそうであったように…。