外国で鉄道を利用すると現地の人びとの暮らしを感じ、車窓から見える景観も楽しみの一つ。ただ、これまでの旅行経験で地下鉄以外の鉄道を使ったのは中国を除いてはフランスとシンガポール・マレーシア間だけ。比較的長く滞在したアメリカ・カナダも、NYなどの地下鉄以外はバス。イギリスに至っては「鉄道は危険だからやめろ」と、当時ロンドン郊外に住んでいた人に言われ、やはり郊外からはバスでの移動だった。
他国で利用しなかった理由は、いつ来るかわからず、本数が少ないから。ちなみに技術が進んでいるらしいドイツは行ったことがない。
今回事故を起こした中国の『和諧号』には昨秋乗っている。その時の話は「こちら」に詳しく書いている。日本では先日の上海-北京間の新型導入後の、まるで新型の事故のように誤解される表現をとっている報道機関もあるが、和諧号は以前から走っている。
すべてではないが、和諧号には日本の新幹線技術(今回の車両はカナダらしい)が使われている。乗り心地も車体もよく似ていた。だから私もよもや事故を起こすとは思わず安心して乗った。だから事故のニュースを聞いた時は、よけい嫌な感じがした。
しかし今回起こったのは走る技術の問題ではなさそうだ。止まっている別の車両にぶつかったのが原因だそうで、止まる技術、つまり制御技術はもちろんだが、運行管理技術と安全に対する意識の違いにも問題がある可能性が高い。
東海道新幹線に乗ると、密な運行ダイヤと時間の正確さがすばらしいと思う。一方で上海からの運行本数はもっと少なく間隔がある。ところが日本のように1本の大動脈を走っているのではなく、系統が途中で一部枝分かれしている。国土が広いので仕方ないことだが、余計複雑になり、日常的にも遅延が増える要因になっている。
速く走る技術は基本で必要。でもそれがすべてではないと、乗り合わせた人には気の毒だが、今回の事故で世界は再認識させられたと思う。安全を守る技術やサービスは、地味で平時はあまり陽が当たらない。安全は危険を知らなければあたりまえのものと考えがちだけど、その陰に高い技術と携わる人の地道な毎日がある。