女性向けのリラクゼーションビジネスと言われるものは、大抵体験済み。でもリラックスなんて悠長に構えて利用できていた時代は過ぎて、肩こりが頭痛に移行する段階にきている最近は、ほとんど治療といった方がふさわしい気もする。従って、エステ、ネイルの類の利用頻度は急激に減少し、最近は整体・カイロプラクティックにも。
それはともかく、そんな中でも二の足を踏んでいた分野があった。1、2年前から急激に日本でもサービスが浸透してきた「耳かき」である。浴衣姿の女の子の膝の上でしてもらうパターンから、普通のマッサージやエステに近いものまで、今では幅広く展開している。
こういうビジネスがあることをはじめて知ったのは確か5年以上前、台北でのこと。ちょっぴり高級かつ怪しげなマッサージサロンに入ると、テレビモニターを観ながらのオイルマッサージの最中にさまざまなオプション提案をもって、女性が巡ってきて耳元でささやく(勧誘する)。「爪切り」「ネイル」「シャンプー」等などに続いてやってきたのが、「耳かき」。とにかくオプションは何もつけないと思っていたので、条件反射的にずっと「No」と言っていたのだが、「耳かき」にはちょっと驚いた。結局断ったが、何だか耳かきだけは少し名残惜しかった。
それからしばらくして日本にもできたわけだけど(確か関西が最初だったと思う)、いざとなるとどうも耳かきまでを他人の手に委ねるということに正直抵抗感があった。おそらく日本人女性の一般的な感覚として、他人の技術(ヘアサロン、医療系サービスなど)を買うことには抵抗はないが、奉仕を買うことに後ろめたさを感じるということがあるのではないか。エステやマッサージまでは技術として認識できる。でも耳かきって、どういう資格や技術を持ち、誰が行うのかまったく不透明だ。だからなのか、日本に入ってきた耳かきサロンは、マイクロスコープで耳の中を見せたりして、技術的な要素を強調している。それでもやっぱり抵抗があって、長く存在を無視していたのだが…。
最近ひょんなことから、耳かき専門店に入る機会があった。変なコンセプトのある店ではなく、日本でもっともメジャーなチェーン店。気持ちよくないわけではないけど、やっぱり何だかこそばゆいような居心地の悪い時間だった。もちろんこれは私の感性であって、耳かき専門店を否定するものではない。耳かきビジネスは郷愁を刺激するものと聞いたことがある。子どもの頃、母親にとってもらった気持ちよさの記憶を再び…ってこと。そういう意味では一般的には男性向けビジネスなのかもしれない。