オリンピック招致成功を冷ややかに見ている人も多いけれど、私は福祉や医療関係者のように、少子高齢化がさらに進行するこれからの世の中に絶対に必要な仕事をしているわけでもない。評論家でもない。だからこれは好機と思うほかない。
期待するのは、オリンピックにとどまらない国際間交流と、インバウンドを含めたグローバル化。ここ数年、日本は工場の海外移転など、財や人が外に出ていくばかりのグローバリズムに苦しんできている。日本から外に出る留学生は減少傾向にあるといっても、外国人が日本で学びたいと留学してくるケースがそれほど増えているわけではなく、むしろ近隣アジアの有能な学生はアメリカをめざす。それが少しでも日本に関心が向くことで、一時的な訪日観光客の増加だけではなく、投資や留学生、継続的な観光誘客に繋がればいい。
といっても、消極的賛成ではなく、もともと時間が許せば、観戦のために外国に行ってもいいくらいにスポーツは好き。
しかも生活圏に多くの競技会場が集積する。今後どう変わっていくのかが身近に見られる。たかがスポーツの大会が地域社会をどれほど変えるのか。もちろん良いことばかりではなく、悪いこともあると思う。些細なことでいえば、実際、今夏から花火が半分見えなくなったし、今後はもっと建物に遮られて、窓からの視界が悪くなるかもしれない。工事の騒音が気になるほどは近くはないが、地価も上がれば、交通量も増えるだろう。
ちなみに先送り、先送りで、すっかり忘れられている感があるが、築地も移転してくる。現在の築地市場は、すっかり観光客の人気スポットになっている。これを一時的なこととは思わない。もちろん新しい市場がシステマチックで魅力ないものになっては難しいことだが、特に外国人観光客が訪れた国の食文化や日常の断面を肌で感じられる場所に行きたいと思うのは自然なことだ。実際、私たち日本人も、欧米の生鮮市場やアジアの屋台街によく行くし、サンフランシスコやニューヨークのフィッシャーマンズ・ワーフは、れっきとした観光スポットである(両方ともショッピングモール感満載で、味わいがなかったけれど)。
これらをひっくるめて、EAST TOKYOがマーケティングの前線になるなら、記録をしていく価値がある。本来殺風景で、人肌のぬくもり、界隈性の希薄な地域だけに、構想力が問われる。